インドと英国がFTA締結で合意、トランプ関税への対応急ぐ
インドと英国は6日、自由貿易協定(FTA)の締結で合意した。米国の関税政策が国際貿易の枠組みを揺るがす中、世界第5位と第6位の経済大国である両国が経済関係の強化を目指す。
インド政府は声明で「バランスが取れ、公平かつ野心的なFTAの締結は二国間貿易を大幅に拡大させるともに、新たな雇用機会を創出し、両国国民の生活水準の向上と福祉増進に資する見通しだ」と指摘。「両国が協力してグローバル市場向けに製品・サービスを開発する新たな可能性も開かれる」と述べた。
英ビジネス貿易省は声明で、英国製のウイスキー、ジン、化粧品、自動車などを含む製品の関税が削減されると説明。
英経済に対する同協定の長期的な押し上げ効果は年間48億ポンド(約9160億円)と試算されており、国内総生産(GDP)比で約0.17%に相当するという。
今回の合意は、世界各国がトランプ大統領の関税政策への対応を急ぐ中で、スターマー英首相およびインドのモディ首相にとって重要な意味を持つ。インドにとっては、中国以外の新たな投資先としての地位を強化する狙いもある。英国にとっては欧州連合(EU)離脱の恩恵が実体化したと言えそうだ。
スターマー英首相は声明で「われわれは今、貿易と経済における新時代を迎えた」と述べた上で、「これは英経済を強化するため、さらに先へより迅速に進むことを意味する」と語った。
英首相府の発表によると、両首脳は6日に電話会談を行い、スターマー氏が「可能な限り早期に」インドを訪問することで一致した。
正式発表前の情報だとして匿名を条件に語った関係者によれば、インドは英国向け輸出品に関して約99%の関税品目で引き下げを勝ち取った。また情報技術(IT)を含むサービス分野での市場アクセスを確保したほか、欧州の炭素排出規制の影響を受けた場合には是正措置を求めることができる仕組みでも、英国と合意したという。
インド商工省にコメントを求めたが、現地の営業時間外で現時点で回答は得られていない。
英政府によれば、英国の対インド輸出に関して関税品目の約90%で関税が引き下げられ、そのうち85%は今後10年以内に関税が撤廃される見通し。ウイスキーやジンにかかる関税はまず75%に半減され、その後10年目には40%まで引き下げられる。また、自動車への関税は同期間に割り当て枠の下で現在の100%から10%へと段階的に引き下げられるとしている。
また今回の合意により、インドの消費者は英国製の化粧品、航空宇宙関連製品、羊肉、医療機器、サーモン、電気機械、清涼飲料、チョコレート、ビスケットなどの製品が安価に得られるようになると英政府は説明。一方、英消費者にとっては衣料品、靴、食品などの価格低下が期待できるとしている。
モディ首相はソーシャルメディア、X(旧ツイッター)への投稿で「今回の合意は、両国経済における貿易、投資、成長、雇用創出、そしてイノベーションを促進する原動力となる」と述べた。
今回の協定は、過去約10年にわたるモディ政権にとって初の大型FTAであり、現在進行している欧州連合(EU)との交渉に向けた足がかりとなる見通しだ。
原題:UK, India Agree Trade Deal Amid Fallout of Trump Tariff Wars (1)(抜粋)