「アンソロピックは邪悪」と呼んだマスクが、22万基ものGPUを貸し出す──AI業界「計算資源不足」の象徴(Forbes JAPAN)

神田敏晶さんが推薦中

これは2026年のAI業界が生み出した発表だが、2024年であればSFとしか思えなかっただろう。 米国時間2026年5月6日、Anthropic(アンソロピック)とスペースXは提携契約に署名し、AnthropicはColossus 1への完全かつ独占的なアクセスを得た。 Colossus 1は、xAIが2024年にGrokの学習のためにテネシー州メンフィスに建設したデータセンターである。この契約によりAnthropicは、300メガワット超の計算能力と、H100・H200、そして最新のGB200など22万基超のエヌビディア製GPUへのアクセスを得る。新たな容量は今月中に稼働する。両社はまた「複数ギガワット規模の軌道上AI計算能力の開発で提携することに関心を表明した」とも述べた。 このイーロン・マスクとは、今年2月にXで「Anthropicは西洋文明を憎んでいる」と書いたあのマスクである。Anthropicを「woke(意識高い系)」「人間嫌い」「邪悪」と何度も呼んできたあのマスクである。そして、あらゆる重要な次元でAnthropicと真っ向から競合するxAIを率いるあのマスクである。 そのマスクが、自社のAI研究所と競合するAIラボに資金を提供している企業に、自身にとって2番目に大きいAIデータセンターを貸し出したのだ。 彼の公式な説明は、いつもの簡潔さで伝えられた。「その後、SpaceXAIがすでにColossus 2での学習に移行していたので、Colossus 1をAnthropicに貸すことに問題はなかった」。あるいは別の報道では、「Anthropicの誰も私の邪悪センサーを作動させなかった」とも述べている。 両社は互いから、緊急に必要としていたものを手に入れた。この契約を成立させるために公の対立姿勢を脇に置かなければならなかったという事実は、どの四半期決算の数字よりも、2026年5月のAI計算資源をめぐる状況を雄弁に物語っている。 ■AnthropicとスペースX双方は何を得たのか 契約の構造は単純だ。Anthropicは、他の計算資源のコミットメントが今後6〜12カ月は容量を生み出さない局面で、世界最大級のAI計算クラスターへ即時アクセスを得る。スペースXは、今年初めに1兆2500億ドルの合併でxAIを吸収した後、xAIの学習運用がもはや必要としないデータセンターを収益化できる。 数字が重要だ。Anthropicの従来の計算資源に関する発表には、以下が含まれる。 ・アマゾンとの5ギガワット契約(2026年末までに新規容量が約1ギガワット) ・グーグルおよびBroadcomとの5ギガワット契約(容量稼働は2027年) ・マイクロソフトおよびエヌビディアとの戦略的提携(300億ドルのAzure容量を含む) ・Fluidstackと米国のAIインフラに500億ドル投資 これらはそれぞれ単独でも巨大だ。積み上げれば、AI企業の歴史において最大の将来計算資源コミットメントを構成する。しかし、これらの契約はいずれも、提供時期が早くても2026年後半から2027年に及ぶ。容量は確保されている。ただし、まだ実現していない。 そのギャップこそ、スペースXとの契約が解決する問題である。Anthropicが必要としているのは18カ月後ではなく、今だ。Claude(クロード)の利用はAnthropicの予想を上回るペースで伸びており、CEOのダリオ・アモデイは5月上旬、同社は売上高が10倍になると予測していたが実際には80倍だったと公に述べている。有料会員はレート制限に達し始めていた。Claude Codeのヘビーユーザーは、ピーク時間帯の制限に不満を募らせていた。同社には、現在から5ギガワットの容量契約が稼働するまでをつなぐ「計算資源の橋渡し」が必要だった。スペースXには、テネシー州に、部分的に遊休状態の22万GPUという橋があった。 最初の実質的な変化は、発表から数時間以内に目に見える形で現れた。AnthropicはClaude Codeの5時間あたりのレート上限を、Pro、Max、Team、そして座席ベースのEnterpriseプランで2倍にした。ProおよびMaxユーザーに対するピーク時間帯の制限を撤廃した。Claude OpusモデルのAPIレート制限を「大幅に」引き上げた。計算資源は約束されただけではない。今週、すでに稼働している。 スペースXにとって、この契約は同社が本格的なAIインフラ提供者になりつつあることを示す、これまでで最も明確なシグナルだ。The Informationの報道によれば、xAIはColossus 1で約11%の演算稼働率で運用しており、競合するAIクラスターが達成している約40%を大きく下回る。xAIは自社の学習をColossus 2に移した。Colossus 1の容量は十分に活用されていなかった。これをAnthropicに貸し出すことで、企業価値を毀損していた資産を、AI業界最大の将来計算需要に対して収益化できる資産へと変える。 また、スペースXのより広範なAIインフラ事業への野望に対する看板顧客の実績にもなる。スペースXが600億ドルでの買収交渉を進めているAIコーディング企業Cursorは、すでにColossusの容量を利用していると報じられている。Anthropicとの契約により、スペースXは事実上、xAIの枠組みの中でサードパーティ向けAI計算ビジネスを立ち上げた格好だ。スペースXのIPOストーリーへの含意は直接的である。同社はロケットや衛星を作るだけではない。米国における最大級の、ハイパースケーラーではない計算資源提供者の1社を構築しているのだ。その戦略的タイムラインは、今夏後半を目標とするIPOと整合している。

Forbes JAPAN
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