苦境ニコン、成長投資5年で3500億円 半導体装置は最先端で勝負せず

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ニコンは8日、2031年3月期までの中期経営計画を発表した。半導体製造装置や宇宙・防衛分野、カメラ事業に成長領域を絞って3500億円程度を投じる。26年3月期に過去最大の赤字となったニコンは4月就任の新社長のもとで再成長の青写真を描く。

ニコンの26年3月期の連結最終損益(国際会計基準)は860億円の赤字(前の期は61億円の黒字)だった。売上高にあたる売上収益は5%減の6771億円だった。23年に買収した独金属3Dプリンター大手の業績不振で、のれんなどの減損損失を計上した。

26年3月期までの中期経営計画で掲げた「売上収益7000億円、営業利益率10%以上」は未達に終わった。今回発表の中計ではまず経営の健全化を軸に据えつつ、戦略分野の絞り込みと投資規律の見直しを掲げる。

31年3月期の売上収益の目標を1兆円、自己資本利益率(ROE)を10%とした。4月に就任した大村泰弘社長最高経営責任者(CEO)は、同日の記者会見で「選んだ事業を大きく伸ばす経営へと明確にかじを切る」と話した。

成長の柱とするのは、大村氏の出身母体でもある半導体製造装置だ。28年をめどに2機種の露光装置を投入するほか、半導体好況期の今、既存製品の受注拡大にも注力する。

新機種では26年内に半導体の組み立てを担う「後工程」向けの露光装置を展開する。28年度をめどに回路形成を担う「前工程」向けに先端品生産に使う「ArF(フッ化アルゴン)液浸露光装置」も投入する。

主力顧客の米インテルの不振や、露光装置最大手のオランダASMLホールディングとの競争で同部門の業績は伸び悩んでいる。26年3月期の液晶向け装置を含めた「精機」部門の営業損益は45億円の赤字(前の期は15億円の黒字)だった。

赤字に陥った同部門の営業利益を31年3月期に330億円に引き上げる。カメラなどの「映像」部門の営業利益370億円に次ぐ規模で、収益の2本柱に育てる考えだ。

ニコンはASMLと最先端での競争を回避し、「準先端」と位置づけるArFで勝負をかける。この「落ち穂拾い」戦略は、かつてのキヤノンの戦略に重なる。同社は09年ごろに前工程の先端装置の開発から撤退し、後工程向けの旧世代装置に活路を見いだした。

最先端装置で先行するASMLと、旧世代機を生かした後工程で顧客を獲得するキヤノン。競合に挟まれてニコンは周回遅れに見える。

大村社長は「ArF露光装置でつくる半導体も増えており、(ASMLだけの)1社依存のリスクもある。大手メーカーの期待に応えられれば拡販も可能だ」と強気姿勢を崩さない。

26年3月期に大規模な減損を出した金属3Dプリンター事業にも投資する。800億円強を投じて買収した独社で、防衛・宇宙分野での顧客獲得を探る。28年3月期に事業を黒字化し、31年3月期の売上収益を27年3月期計画から倍増させるという。

業績不振にあえぐニコンには外圧も強まっている。「レイバン」などを手掛けるフランスの眼鏡大手エシロール・ルックスオティカがニコンの株式を買い増しているのだ。

エシロールの保有比率は4月公表時点で19.61%となった。同社は保有目的を「長期純投資」としているが、さらなる買い増しや買収の意図があるかなどは不明なままだ。

岩井コスモ証券の斎藤和嘉シニアアナリストは今回発表の中計について「大胆な戦略を期待したが、従来から大きな変化はない。やや楽観的にも感じる」と話す。新社長に注がれる株式市場の視線は厳しい。

(鈴木大洋)

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