エコノミストの7割超が追加利上げ予想、来週の日銀会合-サーベイ
日本銀行が追加利上げを決めるタイミングについて、7割超のエコノミストが23、24日の金融政策決定会合と予想している。良好な賃上げが見込まれることや正副総裁の発言を受けて利上げ期待が高まっている。
ブルームバーグが9-15日にエコノミスト53人を対象に実施した調査によると、現在0.25%程度の政策金利を日銀が引き上げる時期は今月が74%に達し、3月の23%を大きく引き離している。昨年12月の前回会合前に実施した調査では、最多の1月が52%、昨年12月が44%とほぼ拮抗(きっこう)していた。
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日銀の金融政策運営を巡っては、氷見野良三副総裁が14日に今回会合で利上げの是非を議論して判断すると表明。植田和男総裁も15日と16日に同様の見解を繰り返し、利上げ判断では米国の経済政策と春闘に向けたモメンタムが重要なポイントだと指摘した。金利スワップ市場では1月利上げの織り込みが足元で8割台まで進んだ。
SBI新生銀行の森翔太郎シニアエコノミストは、20日のトランプ氏の米大統領就任演説で大きな波乱がなければ、来週の会合で利上げが実施されると見込んでいる。労働需給、企業収益、物価動向といった賃金決定要因や、大企業を中心とする賃上げに前向きな動き、支店長会議での報告を踏まえ、「1月会合時点で、今年も昨年に匹敵する賃上げが続くとの見方は十分可能だろう」との見方だ。
複数の関係者によると、トランプ米次期大統領の就任時の発言を受けて金融市場にショックを与える大きな波乱や世界経済見通しを覆すようなことがなければ、日銀は1月会合で追加利上げを決める公算が大きい。今年の賃上げは33年ぶりの高水準だった昨年に続く良好な内容が期待でき、持続的な賃上げ機運の高まりから賃金コストの価格転嫁も想定通り強まっているという。
1月会合を前にトランプ氏が世界経済の見通しを大きく悪化させたり、世界の金融市場を不安定にさせたりして利上げが困難になる可能性については、ほぼ半数のエコノミストが「低い」あるいは「非常に低い」と答えた。「高い」あるいは「非常に高い」、「判断し難い」がそれぞれ4分の1となった。
トランプ対策進む
デロイトトーマツ ファイナンシャルアドバイザリーの増島雄樹マネージングディレクターは、トランプ政策に対する企業の準備も前回就任時に比べて進んでいると指摘。その上で、「よほどのサプライズがある新政策で金融市場の混乱を生じなければ、日本の経済成長・インフレの基調を変えるものではないと日銀は判断する」とみている。
日銀は、経済・物価情勢が見通しに沿って推移すれば、政策金利を引き上げて金融緩和度合いを調整するとの方針を示している。日本の経済・物価情勢は1月の利上げを正当化すると思うかとの質問には、90%が「はい」と回答。賃金上昇のモメンタムは1月利上げをサポートするものかとの問いには、78%が「はい」と答えた。
今回の会合では、新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)について議論し、最新の見通しを示す。関係者によると、コメを中心とした食料品価格高や円安の進行、原油価格の上昇などを背景に、消費者物価見通しの上方修正が見込まれている。見通し期間の2026年度にかけて、物価は2%程度で推移する姿が維持される可能性が大きい。
大和総研の熊谷亮丸副理事長は、人件費の増加が物価を押し上げる状況が今後も続き、消費者物価の上昇率は日銀の見通しとおおむね整合的な形で推移するだろうと指摘。今会合で0.5%への政策金利引き上げを予想し、その後は「半年に一度程度の緩やかなペースで0.25%ポイントの追加利上げを行う」と想定している。