金急落で浮上した疑問 「中央銀行の金(ゴールド)買いは終わったのか?」

金が世界金融の主役に返り咲いている。株でも債券でもなく、何千年も前から人類が価値を託してきた金属が、21世紀の市場を再び揺さぶっている。 金価格は史上最高値を更新し、1オンス5000ドル(約75万円)に到達した。背景にあるのは、地政学の緊張、米国政治への不安、そしてドル体制の揺らぎだ。 実際、ロシアによるウクライナ侵攻以降、各国の中央銀行による金購入が急増したと英「フィナンシャル・タイムズ」紙は伝える。米欧がロシアの外貨準備を凍結したことで、「ドル資産は政治的に封鎖され得る」という現実が突きつけられた。 著名投資家レイ・ダリオは世界経済フォーラムでこう語った。「中央銀行が金にシフトしているのは、大きな対立が生まれるときに起こる動きだ。これは通貨システムの終わりの始まりだ」 ドルだけではない。ユーロも円も英ポンドも、そして中国人民元も各国で債務問題を抱え、法定通貨への信認が薄れている。だからこそ中央銀行が金を選ぶ──この議論は市場で強い説得力を持ち始めていると英紙「ガーディアン」は指摘する。 金は制裁で凍結されない。国家が最後に頼れる資産だ。 ガーディアンは、セルビア中央銀行が金塊を急いで空輸したエピソードを紹介している。セルビア中銀が急いだあまり、数百万ドル分の金がスイスの空港の滑走路に積み残されたという話は、各国がどれほど「現物の金」を求めているかを象徴するという。 だがここで問うべきは単純な疑問だ。中央銀行は現在も金を買い続けているのか。そこに、今後も金価格が上昇するか、ヒントがあるだろう。

フィナンシャル・タイムズが提示するのは、この金ブームへの冷静な懐疑である。 市場で取引される金の投資信託であれば、資金流入をリアルタイムで追跡できる。しかし、中央銀行が金を買っているかどうかは見えにくい。各国はIMFに準備資産を報告するが、データは最大で半年遅れる。 そこで市場関係者が注目するのが英国の貿易統計だ。ロンドンは世界最大の金取引のハブであり、英国からの金輸出は中央銀行需要の代理指標になり得るとフィナンシャル・タイムズは分析する。 2022年以降、中央銀行の金購入が倍増し、年間1000トンを超えたのは統計上も確認できる。しかし問題は現在も買っているのか、である。 価格調整後で見ると、英国の金輸出はこの1年ほど「減少傾向」にある。2025年11月の金輸出量は前年比で80%以上減少したとフィナンシャル・タイムズは報じる。 もし中央銀行が現在も猛烈に金を買っているなら、この数字は説明が難しい。

COURRiER Japon

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