「AIを使えばアプリが作れる」ってホント?文系が10ヶ月やってみた
AIを使えばプログラミングがわからなくてもアプリが作れる。
生成AIが登場してそう言われるようになり、2026年の今もその流れは続いているかなーと思います。
プログラマーやエンジニアじゃなくてもアプリが作れる。
それってホントなんでしょうか?
というわけで、10ヶ月ほどAIを使ってAIアプリを作り続けてみました。自分の仕事は編集者。テクノロジーを扱ってはいますが技術職ではなく、企画を考えたり文章を書いたりと文系的なお仕事をしています。学生時代にやってたのも哲学や文学です。
「非エンジニアでもアプリが作れる」はまぁホント
「AIアプリを作ってみたいけど、勉強はしたくないなぁ」
自分がAIを使ったアプリ制作に手を出したのは、そんな思いがあったから。
勉強にはとにかく時間がかかります。マジでしたくなかった。
というわけで、一切勉強せずにいきなり作りたいものを作ったんですが…思った以上に「使えるもの」ができて驚きました。
始めてすぐにできた「ちゃんと使えるAIアプリ」
AIコーディングツール「Cursor」頼みで作ったAI翻訳RSSリーダー(画面左)。ブラウザで記事を開く→読んで理解するというワークフローからブラウザを排除し、ツール上で日本語訳するところまでを行う。中身はPythonで作り、UIをSwiftでつけたMac用アプリ。画面右側は推論を担当するLM StudioVideo: かみやまたくみ上掲の動画はその頃、3個目に作ったAIアプリを動かしているところを撮影したものです。
チェックしているサイトの新着記事(英語)を取得して、タイトルと要約を日本語で表示します。気になった記事を翻訳することもできます。
仕事柄、海外のテクノロジー関連の情報を追わないといけないのですが、全部日本語のほうがさすがに速い…ということで作りました。仕事を補助するツールですね。
タイトルの翻訳と要約の生成はコストカットしたくてローカルLLMで行っています。
「AIコーディングツール」を使うのが成功の鍵
テクノロジーについて仕事で書いていますが、知識はハードウェア方面に偏っていてプログラミングはさっぱりという状態でした。
そこで頼ることにしたのが「Cursor」というプログラミングのためのAIツールです。思いっきり形から入りましたし、今はさらにそれが有効です。
AIコーディングツール「Cursor」を使っているところImage: かみやまたくみCursorはアプリケーションをすべてAI生成するように設計されています。希望を伝えると一瞬で「こうすればアプリになる!」を考え、そのまま生成してくれるんです。
自分で一から作るのが未踏の大地を自力で切り拓くような体験なのに対し、AIコーディングツールはトラベルツアーに参加するような感じです。AIが常にガイド役をやってくれます。
ChatGPTのような会話を目的としたチャットボットとは仕様・挙動が異なっています。チャットボットでもプログラミングは可能ですが、作れるのは基本的にブラウザアプリまで。PCやスマホで動くアプリは厳しい。AIが生成したコードを新しいファイルに保存するのは自分でやらないといけなかったりもします。
対するAIコーディングツールは、使っているPCのストレージに直接、プログラム(コード)を生成します。アプリは複数のプログラムを連結して実現されていることがほとんどでなため、AIコーディングツールも1回で複数のファイルを生成します。
指示がうまければ、いきなりお望みのアプリが完成します。慣れないうちはうまくいかないこともありますが、そういったときはプロンプトを変えてみます。エラーが出たときも、エラーログをAIに共有すればすぐ直してくれます。
作るものにもよりますが、2〜3ターンの会話で動くアプリが完成するのは今は当たり前です。上掲のAIアプリを作った際は、もっと多くの会話が必要でしたが、今は自分が始めたときよりAIが圧倒的に高性能になっています。ずっと楽に実用的なものを作れると思います。
非エンジニアほど、AIコーディングに特化したツールを選ぶのが重要だと思います。今だとCodex・Claude Code・Antigravityのどれかがいいでしょう。
限界が訪れるのも一瞬だった
ところが、いろんなアプリを作って1ヶ月くらい経ったあたりで、作る手が止まりました。立ち上がりは良かったのですが、停滞が訪れるのもあっという間でした。
・アイデアの枯渇
・AIを望ましい方向に向かわせるための「言葉」がない
・AIが何をやっているのかが根本的には理解できていない
新しく作れなくなったのは、突き詰めるとこの3つが原因です。自分は諦めずに続け、今も続けているのですが、もしやめるならこのタイミングが良かったと思います。この停滞を解消するのはかなり大変です。
アイデアの枯渇はわかりやすいと思います。素人が思いつけるものなどたかが知れている。
新しいアイデアを得ようとしてAIとブレストをしても、同じようなアイデアに収束してしまう。いいアイデアを思いついても、適切にAIに伝えられない。
思いついてもAI頼みで実現できないケースも増えていきました。AIのミスにも気づけず、開発が破綻するようなことも経験しました。
本当に八方塞がりでした。
当時取り組んでいたプロジェクト。たくさんのコードを連結させて多機能を実現しようとしたが、複雑化していて適切にアップデートできなくなってしまった。未完成のまま放棄することに。AIを使ったコーディングは、放棄を避けるように取り組むのが大事です(AIへの課金や試行錯誤した時間が無駄になるので)Image: かみやまたくみこれらが問題になるのは「デザインや機能が複雑なもの」を作りたくなったり、「一度完成したもの」を改良しようとするときでした。AIを使ったアプリ作りに慣れて、もっといいものを作りたい──自分のニーズの高度化に、当時のAIだけでは対応できなかったのです。
うんうんうなりながら自分の言葉で頭の中のイメージを紡ぎ出しても、AIに誤解されてしまう。思ったのとはちがうところに新機能が追加されたり、ぜんぜん望んでいないデザインで上がってきたりしました。この時期、何度AIにキレたかわかりません。
でも、後からログを見て「当然かな」となりました。そもそも何を解決したいかを人間の側が適切に認識できておらず、表現も適切とは言いがたかった。AIは混乱していたのだと思います。
かなり早い段階でノー勉戦略は限界を迎えました。
2つの対応策とそのコスト
これらの問題は現在ではある程度解消しています。できることは2つあったのですが、どちらもしっかりと「コスト」がかかります。先に「1ヶ月目がやめどきだった」と述べたのは、これが理由です。
1. 「高性能なAI」はノー勉を救える
当初はCursorを使って作っていたのですが、転機が訪れます。それがコーディングに特化した当時の最新AI「OpenAI Codex」の登場です。
OpenAIの現行最新モデル「gpt-5.4」をコーディング専用の長考モード「xhigh」で使い、複数の部下AIを駆使してメインAIの負荷を下げる機能「サブエージェント」も併用。数ターンでAIアプリを完成させています。着想から30分ちょいでできあがりました。ちなみに、AIの作業中は散歩してたと思いますVideo: かみやまたくみこのタイミングで制作環境を「Codex CLI」に乗り換えたのですが、最新の特化モデルの推論性能はすさまじく、これまでと大差ないレベルの指示でもバシバシと動くものを作ってくれるように。多くのプロジェクトを完成させることができました。
Claude Codeの生みの親も「コードを書かせるなら高性能なAIを使ったほうがいいよ」って言ってましたが、自分も同じ意見です。AIの性能は本当に正義で、ブレストで得られるアイデアの幅は広がり、自分の意向も今までよりも遙かに高精度で実現してくれるようになりました。
「自分専用アプリ」は思った以上に効果アリ
ここで少し、「自分でわざわざアプリを作ること」にどんな価値・意味があるかを述べておきます。これがないと、次の項目が理解しにくいと思うので。
適切に作られたアプリは、ある種の定型作業をより楽にこなせるようにしてくれます。日課や仕事の負荷を、AIで作ったアプリでかなり軽減できます。
たとえば、先に紹介した自作AIアプリは「ブラウザでいつも見るサイトにアクセスする」「記事を探す」「日本語にする」という定型作業から「ブラウザ」を抜かすことを狙ったものです。加えて、「日本語にする」もやってくれます。
「AIの処理中」は完全フリーになるのが非常に大きい。AIが翻訳している間に、他の仕事をしてもいいし、家事をしてもいい。万人が必要とするアプリではないでしょうが、自分にとっては非常に便利なのです。
こういった自分専用アプリを複数作れると、相乗効果でかなり生活が変わります。
自分の場合は、ネット離れが進みました。PCやスマホで分散して行っていたことを集約的に実現するAIアプリを作っていったので、「リアルワールドで人間しか行えないこと」が自然と残り、それらと向き合うようになりました。
作ってよかったと思います。お金も時間もかかりましたが。
最新AIの料金設定がエグすぎる
作ったアプリの一部。完成したものは40個くらい、ローカル含めてさまざまなAIを自由に切り替えて使うためのツールや、Webの情報をデータベースに取得して特定の形式の文書を自動生成するようなツールが多い。そのほとんどは最新のAIサービスに課金しなければ、完成しなかったImage: かみやまたくみコーディングに優れたAIを使うには、ChatGPT PlusやClaude Proなどへの課金が必要で、専用ツール(CodexやClaude Code)を利用する必要もあります。
サービスとしてはかなりエグいと思います。
ちゃんとしたアプリを作るとなると、月額3,000円のプランではわりとすぐに利用上限に達してしまう。高性能なAIを長時間フル回転させることで、高度なニーズに対応する出力を生成しているからです。
次のランクは月額1万円、その上は月額3万円。本当に高いけど、効果も高いから導入を検討してしまう。
感覚としてはガチャのあるスマホゲーをやってるときが似てます。ゲームだと強いキャラとか武器が手に入りますが、コーディング特化AIで手に入るのは、生活のゆとりとか仕事の快適性とか。無限に「生活改善」したくなる魔力があります。
自分はこのコストを賄うために「趣味の整理」を行いました。いくつかの趣味をやめ、それらに回していた予算をAIに回しました。AIがおもしろくなっていたというのはあるのですが、「趣味にする方向で割り切った」という側面も明確にあります。
高性能なAIサービスの価格感が家計バランスに影響しうる水準である点には本当に注意が必要です。
2. 結局、「プログラミングの勉強」が有効。それもかなり
プログラミング関係の本をどんどん買って読むように。普通に趣味の一つになっていますPhoto: かみやまたくみもう1つ効いたのが「勉強」です。いろんな本を買い、書かれているコードを実際に打ち込んで動かしました。真正面からプログラミングを勉強しました。
効果が実感できてきたのは、取り組み始めて8ヶ月目くらいから。けっこう勉強しないといけなかったのは、自分の作りたいようなAIアプリはいくつかの既存技術を併用しないといけなかったからです。
AIを自分が望む方向に誘導できるようになったのは、使うプログラミング言語の基礎を押さえ、関連技術についても理解ができてきたところでやっと、という感じでした。入門書だけではぜんぜん通用しないようなものを、自分は作ろうとしていたのです。
高性能なモデルを使うのと同じくらい効果的
勉強によってもっとも改善されたのは、AIとのコミュニケーションの問題です。
プログラミングやエンジニアリングの概念や用語を使えるようになったことで、今までは言葉を尽くして表現していたことを一言で言い表せるようになりました。しかも、専門用語のほうが我流の表現よりも誤解なく伝わります。さまざまな分野を知っているAI的には、そういう言葉を使ってくれたほうがいいのでしょう。
また、基礎から学ぶ中で「アプリの設計」を考えることができるようになってきたのも大きく影響しました。
設計はAIが苦手とするタスクで、最新のAIコーディングエージェントには「プランモード」という設計を煮詰める機能が用意されているほど。人間主導で行うべき部分なのです。
人間側でアプリの設計を具体的に考えられるようになったことで、望んだAIアプリを完成させられる確率は飛躍的に向上しました。
この記事の例として掲載するために作ったAIアプリ。機能自体は上掲のAIアプリとほぼ同じで、チェックしているサイトの記事を取得し、日本語で要約を行い、選択した記事を翻訳することもできる。要約・翻訳はローカルLLMで行う点も同じ。ターミナル上で動作するアプリで、Texutualというライブラリを使ってTUIを実現しているImage: かみやまたくみ今はこの記事の作例として出すためだけに1個アプリを作るくらいは余裕になりました。まぁ人に見せられるかな…というデザインにもできるようになってきています。
コーディングは現時点でAIがもっとも得意な分野ですが、そういった領域でさえ人間側の知識・経験には明確な意味があるように思います。勉強をして自分でコードを書けるようになればなるほど、AIに望んだものを作ってもらうのも容易になりました。
「お試し」を超えるとお金も時間もかかる。「どこまでやるか」は大事
「AIを使えば非エンジニアでもアプリは作れるか?」
回答は「どの程度やるつもりなのか?」で変わってくる、というのが自分の結論です。
「お試し」までを言うなら、そうだと思います。
しっかり使えるAIアプリを作りまくりたい!は勉強なしでは厳しいと思います。
とりあえず、継続的に取り組んでみる価値が高いのは「生成AI技術やAIエンジニアリングに本気で関わりたい人」になってくるでしょう。
いきなり「思い描いたものが動く形で出てくる」のはすごいことです。生成AIのすさまじさや、アプリを作ることの価値や意味をいきなり実感できます。成功体験スタートできる。自分自身、最初から相応のAIアプリを作れたのは大きく、その後どう続けていくかを判断する大きな材料となりました。
AIを自分の関心領域でどう活かすかを具体的に考えるきっかけや、勉強を始める原動力を求めているなら、本腰を入れてトライしてみてもいいかもしれません。