「一夜にしてポスター張り替えた」学会3万票の行方が焦点 創価大抱える東京24区
衆院選東京24区(八王子市の一部)では新人4人が自民党の前職、萩生田光一幹事長代行(62)に挑む。令和6年10月の前回選の候補、有田芳生前衆院議員は今回、立憲民主党と公明党が結成した「中道改革連合(中道)」の比例東北ブロックに転出。代わりに立民出身の前都議、細貝悠氏(32)が中道候補として同区に擁立された。同区は創価大学を抱え、3万~4万票弱とされる公明の支持母体・創価学会票の行方が焦点となる。
毎回異なる対抗馬「選挙だけ駅前で騒ぐ」
「日本で初めての女性リーダーのもと、働いて働いて働かされているが、さらに働く。まさにこれからの数年間は集大成だ」
公示された27日午前11時過ぎ。JR八王子駅前の寒風吹きすさぶ中、萩生田氏は文科行政や地域振興の取り組みを振り返った上で、高市早苗首相を支えていく姿勢を強調した。
萩生田氏は、派閥パーティー収入不記載事件に関与し「党の役職停止1年」処分を受けた。さらに前回選は党の公認も見送られた。無所属で当選した後は「裏方で謙虚にやってきた」(萩生田氏)といい、選挙後の「8期目」は「前面に出て仕事する」構えだ。
自民党の有村治子総務会長(右)は前回選に続いて萩生田光一幹事長代行の第一声に駆け付け、「高市早苗さんの右腕の萩生田さんを失うわけにはいかない」と呼びかけた=1月27日午前、八王子市平成26年以降4回の衆院選で、萩生田氏の次点となった対抗馬は毎回異なっている。萩生田氏は他党のスタンスに苦言を呈しつつ、こう意気込んだ。
「前回の候補者は八王子にもういないじゃないですか。その前の人も、その前の前の人もいない。選挙の時だけここに来て、駅前で騒ぐだけじゃないですか。私はそうはいかない」
24区は公明党が強い土地柄で知られる。公明は前回選の比例代表で都内の市区町村別で最多となる3万1千票を24区で獲得した。中道結成後、24区内の公明ポスターの多くが、すぐに中道ポスターに張り替えられたという。ある候補は「一夜にして変わった。立民のポスターは変わっていない。公明は力を見せつけた」と漏らす。
萩生田氏も、前回選を除けば、公明の推薦を得て選挙戦を有利に展開してきた。中道の結成により学会票は細貝氏に投じられる公算だ。ただ、市議会で自民は市長を支える与党会派を公明党と組んでいるため、「学会は自主投票だろう」(市議会幹部)「細貝氏に投じる学会票は半分では」(24区関係者)といった、やや楽観的な見方もある。
「生活」と「平和」を強調
「公明正大に皆さまに政治を生活を暮らしを取り戻す」「私がいる限り、日本で戦争だけは起こさせないと誓う」
細貝氏の「第一声」は27日午後7時、JR八王子駅前で中道の西田実仁共同幹事長(公明出身)を招いて始まった。公明の地元市議も顔をそろえたという。
細貝氏は八王子市生まれ。令和5年の目黒区議選で初当選し、7年6月の都議選は八王子市選挙区で初当選し、今回国政を志した。
聴衆のもとに駆け寄る中道改革連合の細貝悠氏=27日午後、八王子市第一声では何度か言葉に詰まる場面があったが、聴衆からは「頑張れー」「大丈夫!」と温かな歓声がわく。
細貝氏は「きょうこの場で街頭演説することを緊張していた。温かく受け入れてもらい、皆さまが応援してくれると思えば、この緊張は怖くない。ただただ、この国この町のため走っていく」と訴えた。
400人規模の支援者が駆け付けたといい、立民市議は「想定外でびっくりした。熱気があった」と手応えを示し、地元出身の都議も「うねりになっていくだろう」と語った。
学会員を名乗る親子連れの女性は、この場には学会内の連絡を受けてではなく、自ら調べて訪れたという。細貝氏について「細貝君を応援しようと思う。とても若い。ちょっとイケメン」と家族で笑い合った。
第一声で細貝氏は8分間、西田氏は13分を費やしたが、不記載問題を巡る萩生田氏批判にあてることはなかった。
西田氏は記者団に「触れようと思ったがもう時間がなく、寒いので…」と語ったが、選挙戦を個人批判に用いることに違和感を抱く候補は他にもいる。
前回選は「政策置き去りで市民が分断」
「一部の業界団体の意見に左右され過ぎている町作りを変えていく。日本の税収は過去最高。国民民主が訴える社会保険料も住民税引き下げも取り過ぎたものを戻そうとしているだけだ」
国民民主党の新人、細屋椋氏(30)は28日午前8時過ぎ、同市大和田町の交差点でこう訴えた。
国民民主党の新人細屋椋氏=28日午前、八王子市相手候補に対する批判の言葉は聞かれない。細屋氏は、産経新聞の取材に、前回選について「有田氏は後一歩(7533票差)まで追い詰めたが、個人攻撃に特化し過ぎた。政策置き去りで政治スタンスの追及のみ。実りある議論ができていない。ついていけない市民もいて、市民が分断された形になった」と指摘する。
その上で、周辺地域の交通インフラが不便な状況などを挙げて「地域の課題を国に届け、どの地域に住んでも住みよい街を作っていくべきだ」と強調した。
テレビ局「なぜ政治とカネ追及しないか」
参政党の新人、與倉さゆり氏(41)も同様だ。
與倉氏は27日、JR八王子駅前での街頭演説後、記者団の取材に応じていた。
與倉氏は、中長期的に「移民」政策の見直しや子育て政策に力を入れ、当面の必要な政策として消費税廃止と、税と社会保険料を含めた国民負担率の約46%から35%への引き下げを挙げた。
参政党の新人與倉さゆり氏=27日午後、八王子市内テレビ局の記者が與倉氏の演説を振り返り、「なぜ政治とカネについて追及しなかったのか」と尋ねると、與倉氏は不記載事件を問題視しつつ「それが論点になってはならない。市民の今の生活が大事だ。そこに焦点を当てたい」と語った。「そこは深田さんが追及してくれる」とも語った。
駅前で「日本を劣化させた悪徳政治家」
同駅前ではITビジネスアナリストで新人、深田萌絵氏(47)の街宣車から絶えず、メッセージが流れていた。
「日本の情報産業を衰退させた張本人が萩生田氏。日本を劣化させた悪徳政治家を許さない。裏金増税反対」
街頭演説する無所属新人の深田萌絵氏=27日午後、八王子市内ここ数年、深田氏は萩生田氏を急進的に批判しており、今回無所属での出馬に至ったという。街頭演説ではこう訴えた。
「憲法改正すれば、選挙は無くなる。高市さんが永久にこの国の皇帝に君臨するための法改正が憲法改正なんです」。聴衆からは「そうだ!」との声があがった。(奥原慎平)