【米国市況】円一時4カ月ぶり高値、株4日続落-消費者信頼感が悪化

外国為替市場では円が上昇し、約4カ月ぶりの高値水準となった。世界的なリスクオフの動きや、日本銀行の追加利上げ観測を背景に買われた。

  円は対ドルで一時0.8%高の1ドル=148円57銭と、昨年10月11日以来の高値。米消費者信頼感が低下したほか、トランプ米政権が半導体規制の厳格化を計画していることが明らかになり、逃避先資産の需要が強まった。ドル指数は低下した。

為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1284.68 -2.59 -0.20% ドル/円 ¥149.02 -¥0.70 -0.47% ユーロ/ドル $1.0514 $0.0046 0.44%     米東部時間 16時52分

  日銀の追加利上げ観測を背景に、トレーダーは円に対して一段と強気になっている。オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場は、日銀による9月までの利上げを完全に織り込んでいる。早ければ6月にも行動するとの確率は50%とみている。

  日本の最近の経済指標は利上げの論拠を裏付ける内容で、市場は今週公表される2月の東京都区部消費者物価指数(CPI)に注目している。

  マネックスのストラテジストは「ドルはレンジを切り下げている。関税は予定通り実施されるとホワイトハウスが表明し、市場に悲観的なムードが広がったことが主因だ」と指摘。「他の逃避先資産が上昇している」と述べた。

  バークレイズは、2月に欧州株が米国株より好調だったことや円が上昇したことは、月末にかけてドルがやや買われることを示唆すると指摘。グローバルな投資家が為替ヘッジを維持するためにポートフォリオを調整するためという。

  2月の消費者信頼感指数は2021年8月以来の大幅な落ち込みを記録した。ここ最近は小売りやサービス、住宅関連で失望を招くデータが相次いでおり、インフレ圧力が強まりつつあるように見受けられる中でも、利下げ観測が高まっている。

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株式

  S&P500種株価指数は4営業日続落し、終値で5週間ぶりの安値となった。2月の米消費者信頼感指数が大幅低下となり、米経済の健全性を巡る懸念が強まった。

株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 5955.25 -28.00 -0.47% ダウ工業株30種平均 43621.16 159.95 0.37% ナスダック総合指数 19026.39 -260.54 -1.35%

  ナスダック100指数も4日続落。4日間の下げ幅は約5%に拡大した。ハイテク大手7社「マグニフィセント・セブン」の指数は昨年12月に付けた高値からの下落率が10%に達し、調整局面入りした。26日に決算発表を控えるエヌビディアは2.8%安。

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  ストラテガスのクリス・ベロン氏は「市場は依然としてインフレよりも成長を懸念しているようだ」と述べた。

  トゥルイスト・アドバイザリー・サービシズのキース・ラーナー氏は、株式相場の上昇トレンドは続いており、リセッション(景気後退)リスクは比較的低いままだが、短期的なリスクリターンは一段とまちまちになっているようだと指摘。「企業業績やテクニカル指標、景気トレンドで緩やかな悪化が見られている。株式に対して中立的な姿勢を強め、現金をやや多めにすることが正当化される」と話した。

  LPLファイナンシャルのジェフ・ローチ氏は、消費者は起こり得る関税による未知の影響にますます神経質になっている。近い将来の輸入物価上昇を見越して、消費需要が前倒しされる可能性があると指摘。

  その上で、消費者調査に基づく統計は小売売上高といったハードデータよりもはるかに変動性が高いとローチ氏は注意を促し、米金融当局が今後の数会合で政策スタンスを変える可能性は低いとの見方を示した。

  eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は「消費者信頼感は、選挙をきっかけとした昨年11月の高揚感からの低下が続いている」と指摘。「関税問題であれ、インフレや小売売上高などの米国データを巡るものであれ、景気の不透明感は依然として高い」と述べた。

  米金融当局がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)コア価格指数は1月、前年同月比2.6%上昇と昨年6月以来の低い伸びが予想されている。PCE総合価格指数も前年比で伸び鈍化の見込み。統計は28日に発表される。

  「投資家は今週のPCE統計に注目するべきだ」とケンウェル氏。「同統計は消費者が自らの購買力についてどう感じているのか、新たな手掛かりを提供するだろう。予想通りか予想を下回る数字となれば、消費者にとっても投資家にとっても安心材料になるかもしれない」と話した。

国債

  米国債は上昇。10年債利回りは年初来の最低水準となった。消費者信頼感指数を受けて、年内利下げの必要性があらためて裏付けられたとの見方が広がった。この日実施された5年債入札での需要も旺盛だった。

国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.56% -9.9 -2.13% 米10年債利回り 4.30% -10.4 -2.36% 米2年債利回り 4.09% -8.3 -1.98%     米東部時間 16時52分

  消費者信頼感指数の発表前から、短期金融市場では年内に2回の0.25ポイント利下げが完全に織り込まれた。

  S&P500種が最高値を先週に更新して以降、下げていることも景気不安をあおっている。トランプ米大統領が主要貿易相手国に関税を課すと警告していることや、連邦職員の削減なども影響している。

  アメリベット・セキュリティーズの米金利トレーディング・ストラテジー責任者、グレゴリー・ファラネロ氏は「10年債はデータに敏感に反応し、景気がやや減速するとの見方が続くようであれば、利回りはじりじり低下する可能性がある」と指摘。「米政権が歳出を削減し、財政赤字を減らそうとする取り組みに注力するなら、緊縮財政や景気減速の要素が生じる」と述べた。

  その上で、10年債利回りは200日移動平均線である4.25%に低下し得ると続けた。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は大幅安。弱い米消費者信頼感データを受けてリスク回避の姿勢が強まり、米国株とともに原油相場も大きく売られた。トランプ米大統領の政策が経済成長を妨げ、エネルギー需要の低下につながるとの懸念が強まった。

  25日のアジア時間には、トランプ政権が中国の半導体産業への規制強化を主要同盟国に迫っているとブルームバーグ・ニュースが報道。トランプ大統領の関税に続く不安材料で、世界最大の石油消費国である中国のエネルギー需要見通しがさらに悪化した。

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  バッファロー・バイユー・コモディティーズのマクロトレーディング部門責任者、フランク・モンカム氏は「経済指標の下振れが続いていることで、原油相場に対する弱気な圧力が高まっている」と指摘。こうした動きは「原油需要にとって不吉な予兆だ」と述べた。

  米国は今週に入り、イラン産原油の違法輸出に使われる「影の船団」への制裁を強化した。だが、洋上で別のタンカーに積み替える「瀬取り」や船舶の位置情報信号を長期間オフにするといった手口で、イランは新たな規制をかいくぐるとの見方から、市場の反応はこれまで限定的だ。

  ラボバンクのグローバルエネルギー担当ストラテジスト、ジョー・デローラ氏は「海軍がタンカーの位置特定と阻止に乗り出すなど、前例のないレベルまでエスカレートしない限り、見込まれているような強気要因に制裁措置がなることはない」との見方を示した。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物4月限は、前日比1.77ドル(2.5%)安の1バレル=68.93ドルと、年初来安値で終えた。ロンドンICEの北海ブレント4月限は2.4%下げて73.02ドル。

  金スポット価格は反落。このところ最高値更新が相次いでいたこともあり、利益確定の動きが出た。だが、米利下げ観測の高まりや安全資産としての需要が引き続き相場を支えている。

  金スポット価格は一時2.1%下落した。前日には1オンス=2956.19ドルまで買われ、最高値を更新していた。

  米消費者信頼感データの発表後、利益確定の動きが出た。同データは、トランプ政権の政策を巡る不透明感が家計の足かせとなっていることを改めて裏付けた。

  金利スワップ市場は現在、7月の0.25ポイント利下げを織り込んでいる。金利が下がれば、利子を生まない金にとっては追い風となる。トランプ大統領の通商政策や地政学上の課題を巡って不透明感がくすぶっていることも、安全資産としての金への需要を押し上げている。

  市場は米金融政策の方向性に関する手掛かりを求め、28日に公表される個人消費支出(PCE)コア価格指数データに注目している。

  金スポット相場はニューヨーク時間午後1時46分現在、前日比41.82ドル安の1オンス=2909.91ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物4月限は前日比44.40ドル(1.5%)安の2918.80ドル。

原題:Stocks Get Hit as Economic Jitters Spur Bond Rally: Markets Wrap(抜粋)

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