市販薬ネット販売、10年越しの全面解禁 改革の停滞映す

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厚生労働省は26日、医薬品医療機器法(薬機法)改正に向けたとりまとめ案を示した。対面販売の義務が残る一部の薬もオンラインでの服薬指導を認め、ほぼすべての市販薬のインターネットでの販売を解禁する。利便性向上や医療費の抑制などの効果が期待できる。約10年越しの全面解禁は日本の規制改革の遅れを映す。

同日に開いた厚生科学審議会(厚労相の諮問機関)の医薬品医療機器制度部会で提示した。早ければ2025年の通常国会への改正案の提出を目指す。

現行では対面販売が必要な要指導医薬品でオンラインによる服薬指導を認める。要指導医薬品には、第一三共の「ロキソニン総合かぜ薬」をはじめとしたかぜ薬などが含まれる。

市販薬のネット販売を全面解禁するまでの経緯は、13年の最高裁判決にまで遡る。09年に厚労省が一部を除いて市販薬のネット販売を禁止したことが違法とされた。

厚労省は14年の改正薬事法で、市販薬のネット販売を原則として認めた。一方で、医師の処方箋が必要な処方薬から市販薬に転用されたばかりの薬を「要指導医薬品」に新たに分類し、薬剤師による対面販売を義務とした。一部のネット通販事業者が行政訴訟を起こすなど、全面解禁を求める声は根強くあった。

事態が動いたきっかけは新型コロナウイルスの感染拡大だった。20年以降にオンライン診療・服薬指導が認められ、処方薬を自宅で受け取れるようになった。よりリスクが高い処方薬を遠隔で入手できるにもかかわらず、処方箋がいらない要指導医薬品は対面販売が必要という「規制のねじれ」が生じ、政府の規制改革推進会議も解禁を求めた。

厚労省の検討会では関係団体から否定的な意見も出た。日本保険薬局協会は「対面でないと非言語的なものが伝わりにくい」と指摘し、日本チェーンドラッグストア協会は「オンライン服薬指導を行うのは難しい」と説明した。

今回の改正でようやく全面解禁にカジを切った。対面での情報提供が必要とされる一部の薬は除く。

厚労省のとりまとめ案では、薬剤師らがいないコンビニエンスストアなどの店舗でも、薬剤師や登録販売者とのネット上でのやり取りを条件に市販薬を買えるようにする。対象は第1〜3類の一般用医薬品で、薬剤師による販売を義務付けている解熱鎮痛剤のロキソニンなども含まれる。

現在は薬剤師や登録販売者がいない店舗で一般用医薬品を扱うことはできない。コンビニで買えるようになれば夜間の発熱時にもかぜ薬や解熱剤を手に入れられるようになる。

部会で議論されてきた一般用医薬品の販売区分は見直さず、現行のまま維持する。医療用医薬品の規制も見直し、処方箋なしでの販売を原則禁止とする。

厚労省は市販薬を手に入れやすくして、軽度の体調不良は市販薬で対応する「セルフメディケーション」を後押しする。医療機関に行くことが減れば、医療費の抑制につながる。22年度の国民医療費は46.6兆円に達する。

薬剤師の業務効率化や薬の安定供給も促す。複数の薬を一つにまとめる「一包化」と呼ぶ業務を外部委託できるようにするほか、製薬会社に医療用医薬品の供給に関する業務を統括する「安定供給体制管理責任者(仮称)」の設置を義務付ける。

安定供給が特に必要な薬を指定し、製薬会社に対して増産などを要請する仕組みも法制化する。従わない場合には企業名を公表するといった罰則を想定する。

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