三菱電社長、パワー半導体の国内再編は必要-複数社と協議も
パワー半導体で国内トップの三菱電機の漆間啓社長は、乱立する日本勢がシェアで海外勢に大きく後れをとる現状について、グローバル競争に勝つためには業界再編が必要になるとの認識を示した。
危機感の背景にあるのはすでに大きく広がった海外勢との差だ。英調査会社オムディアによると、2023年の売上高シェアで三菱電が5.5%なのに対して、独インフィニオンテクノロジーズは22.8%、米オン・セミコンダクターは11.2%と、水をあけられている。
漆間氏はまだまだ「日本の中に競合他社が多すぎる」ため、シェア拡大が望めるいまのうちに合従連衡をするのが理にかなうと、4日のインタビューで語った。パワー半導体には絶え間ない技術革新も不可欠だ。「われわれは各社と戦うのではなく、一体となることを志向してはどうかと思っている」と持論を展開した。
電気自動車(EV)などに使われるパワー半導体は、シリコンカーバイド(SiC)を使った次世代品の生産が広がりつつあり、各社が開発にしのぎを削る。政府が原則事業規模2000億円以上の投資に補助金を交付する制度を整備したこともあり、企業ごとの提携が進み始めた。昨年12月に東芝とロームが共同生産(事業総額3883億円)を決めたのに続き、11月にはデンソーと富士電機も製造連携(同2116億円)を発表した。
漆間氏はすでに複数社の経営陣とそうした考えを話し賛同を得られているものの、事務レベルの議論になると「なかなか前に進まないのが現状」だという。共同での開発や販売まで踏み込む必要性を問うと「実際そうしていかないと勝てないと思う」と述べた。
パワー半導体は三菱電が掲げる重点成長事業の一つで、セミコンダクター・デバイス事業の今期営業利益計画は前期比2割増の360億円を見込む。熊本県内に8インチSiCウエハーの生産工場を前倒しで稼働すべく建設しているほか、SiC基板メーカーの米コヒレントに出資し、高付加価値品の共同開発にも取り組む。
DX人材
同社は5月、空調機器やFA機器、電力機器など多様なハードウエアから得られるデータを横断的に分析、連携することで新たなソリューションを提供する事業を強化すると共に、30年度のDX人材を23年度比3倍超となる2万人に増やす計画を明らかにした。
人材拡充には、教育や中途採用などさまざまな施策を打つが「それだけでは追いつかない」ため買収も視野に入れる。16年に約900億円でイタリアの空調メーカーを買収したのが同社にとって過去最大案件だ。漆間氏は「1兆円も2兆円も出して買うつもりはない」が、必要であれば数千億円規模でも検討すると話した。