高市氏の首相指名へ、自民が維新ときょう連立視野に政策協議を開始
自民党と日本維新の会は16日午後、政策協議を行った。維新は自民との連立について臨時国会召集前日の20日までに判断する方針で、17日も両党で詰めの協議を進める。
国会内で開いた政策協議で、維新側は実現を求める政策を列挙した文書を提出。食料品への消費税率を2年間ゼロ%や企業・団体献金の廃止など直ちに合意できない項目もあったため、17日に再度協議する。維新の支持を得られれば、自民の高市早苗総裁が首相指名選挙で勝利する公算が大きくなる。
維新の藤田文武共同代表は協議後の記者会見で、自民とは政策の一致点が多く危機認識も近いと指摘。維新の要望には、「相当真剣に向き合っていただいている」と語った。連立協議の結論は「20日までに判断する」とも述べた。
自民の小林鷹之政調会長は、維新からはさまざまな論点が示され、丁寧に詰めて行く必要があるものの、「お互い共通の理解を得られるところは多かった」と説明。「必ず合意に至るかはなんとも言えない状況」だが、国会召集までに時間が限られる中で、党として真摯(しんし)に向き合っていくと語った。
協議には自民から高市氏と鈴木俊一幹事長、維新から中司宏幹事長、斎藤アレックス政調会長が参加した。維新は16日午前に両院議員総会を開き、藤田共同代表が経過を報告した。藤田氏によると、自民との連立に関して大きな反対論はなく、判断を執行部に一任した。
公明党の連立離脱を受け、臨時国会での首相指名選挙に向けた各党の駆け引きが活発化している。衆院会派で35議席の維新が高市氏に投票すれば自民と計231議席と過半数の233に近づく。自民、維新の政策協議の行方が政局の焦点となっている。
維新の吉村洋文代表は16日午後、維新が実現を求める政策を「自民党、高市総裁がどこまで共有できるか」について協議を通じて詰めていくとフジテレビ系列の番組で語った。「高市総裁の判断、胆力も問われるし、私自身の判断、胆力も問われる。でもそれは日本をよくするためにやる。そこが軸だ」とも述べた。
元自民党職員で政治評論家の田村重信氏は、自民と維新の政策について憲法改正への考え方や安全保障で自公間よりも近いと指摘する。首相指名選挙で維新と無所属議員の一部が投票すれば、衆院では1回の投票で高市氏が過半数を得て選出され、政権基盤が石破茂首相よりも安定する可能性もあるとの見方を示した。
共同通信によると、高市氏は16日、衆院で3議席ある参政党の神谷宗幣代表と国会内で会談し、首相指名選挙での協力を要請した。神谷氏は持ち帰ったという。
野党
立憲民主党は維新、国民民主党による統一候補擁立をなお模索するが、3党の調整は進んでいない。自民、維新の政策協議に先立ち、立憲民主、維新、国民民主の3党幹事長らが16日午後、国会内で会談。立民の安住淳幹事長によると、会談で維新側は自民との協議について説明。17日までには見通しを立てたいとの発言があった。
一方、国民民主の玉木雄一郎代表は15日夜、自民との関係について「維新が加わるのであれば、そもそもわれわれが連立に加わる必要もなくなった」とYouTube動画で述べた。玉木氏は16日、公明党の斉藤鉄夫代表と党首会談を行い、今後の政策面などでの連携について協議した。立民と公明も17日、党首会談を実施する。
市場の反応
16日の東京株式相場は続伸し、日経平均株価は一時4万8300円台に上昇した。債券相場は中期債や先物が下落。自民、維新が政策協議開始で一致したことを受け、政局安定が日本銀行の利上げ判断を後押しするとの見方が出ている。
SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、「自民党と維新の会の連立の可能性が高まり、政治的に安定して日銀が利上げしやすいとの見方から中期債が売られ、国民民主党よりは財政拡張的でないことから超長期ゾーンがフラット(平たん)化している」と述べた。
外国為替市場の円相場は午後6時35分現在、円相場は対ドルで151円台前半で推移している。
社会保障改革、副首都構想
15日に行った維新との党首会談で高市氏は、連立政権樹立を含めた首相指名選挙での協力を要請。吉村氏が政策協議の開始を受け入れた。
吉村氏は、高市氏からは維新が重視する社会保障制度改革に賛意を得たほか、副首都構想にも同じ考えだとの表明があったことから、「政策協議を開始する土台はあると判断した」と説明した。
これに対し、高市氏は維新について「基本政策はほぼ一致している」と記者団に語った。外交やエネルギー政策は自民と「あまり変わらない」とし、他の政策での詰めに時間を割くことになるとの見通しも示していた。
両党間の調整が難航する可能性があるのは、公明が自民との連立を離脱する契機となった「政治とカネ」を巡る問題への対応だ。
公明は企業・団体献金の受け皿を政党本部と都道府県組織に限定する案の受け入れを迫ったが、自民が回答を留保した。維新は16日に自民に提示した要求に「企業団体献金の廃止」を盛り込んだ。自民は一定額を超える献金は企業・団体の名称や寄付額を公表するなど透明性の向上を訴えている。
自民党の鈴木俊一幹事長は14日、同献金廃止までは踏み込んでいない公明案についても「自民党のまさに財政面からの成り立ちを全く否定するものだから、丸のみすることはできない」との見解を記者団に明らかにしていた。
維新の藤田氏によると、同党が16日開いた両院議員総会では、多くの出席者から「政治とカネ」を巡る問題について自民に妥協しないよう求める意見も出たという。
— 取材協力 Hidenori Yamanaka, Yoshiaki Nohara, Sakura Murakami, Masahiro Hidaka, Kentaro Tsutsumi, Masaru Aoki and Hiroyuki Sekine