セブン&アイから分離のヨークHD、総合スーパー再生への試金石「ヨークパーク」オープン

 セブン&アイ・ホールディングス(HD)の中間持ち株会社「ヨークHD」は14日、福島県郡山市に新商業施設をオープンした。食品スーパーをはじめヨークHDグループの専門業態を集めた象徴的な店舗で、セブン&アイから事実上切り離される同グループの今後を占う試金石となる。(貝塚麟太郎)

売上高倍増

全国から魚を仕入れている「ヨークパーク」内の鮮魚売り場(13日、福島県郡山市で)

 新商業施設「ヨークパーク」は、昨年5月までイトーヨーカドーだった5階建ての郊外店を改装した。北関東や東北地方などで営業する食品スーパー「ヨークベニマル」が中心テナントで、全国から鮮魚を仕入れるなど、生鮮食品売り場を充実させ、専用の石窯で焼き上げたピザなども販売する。

 ヨークHD傘下の雑貨店「ロフト」や、ベビー用品販売の「赤ちゃん本舗」が出店。グループ外のカジュアル衣料品店「ユニクロ」や100円ショップ「ダイソー」などを含め、多様な業態の30店舗以上を集めた。

 ヨークHDの石橋誠一郎社長は13日、報道陣に対して「(多くの店舗が入ることで)集客力が上がり、成長を確実に実現できる」と力を込めた。施設内のヨークベニマルは、通常店舗の約2倍に当たる売上高42億円を見込んでいるという。

積極的戦略

ヨークHDは多様な事業を展開している

 ヨークHDは、イトーヨーカ堂などのスーパーや専門店、外食などセブン&アイHDの子会社29社をまとめた中間持ち株会社だ。

 セブン&アイの井阪隆一社長は、これらの子会社について「(コンビニと)同じ屋根の下で成長投資をしにくい状況が続いてきた」と話す。同社はカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けたのを機に、コンビニ事業に集中することを決断。昨年10月にヨークHDを設立し、買い手を探してきた。

 住友商事なども関心を示したが、最終的に米投資ファンド「ベインキャピタル」がヨークHDの株式60%を取得して買収することで合意した。セブン&アイと創業家の保有株式比率は40%に薄まる。

 独自路線を歩むことになったヨークHDは、2026年2月期に33店の新規出店を計画する。将来の株式上場も視野に入れるなど、より積極的な成長戦略を描こうとしている。

ファミリー層を取り込み

 ヨークHDの売上高の約4割を占めるヨーカ堂は、24年2月期まで4期連続で最終赤字に陥り、不採算店の大規模閉店を余儀なくされた。

 主婦層をメイン顧客と位置づけ、食品と衣料品を主軸にした総合スーパーは、ユニクロなどの専門業態に押されている。共働き世帯が増加した客層の変化にも対応しきれていなかった。

 事業環境の変化に対応するため、ヨーカ堂は自社で手がける衣料品事業から撤退し、体験型の玩具売り場を設けるなど、ファミリー層の取り込みを進めている。様々な客のニーズに合わせた店舗を集めることで、集客力を高める狙いで、ヨークパークの取り組みとも一致する。

 人口減で市場縮小が懸念される中、「総合スーパーを再生する」(石橋氏)との目的を果たせるか、今後の取り組みが注目される。

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