NATO集団防衛義務、トランプ氏が疑問呈す発言-サミット前に波紋

トランプ米大統領は24日、北大西洋条約機構(NATO)の集団防衛の原則を定めた第5条への米国の関与について疑問を呈する発言を行った。同日から始まるNATO首脳会議(サミット)が混乱に陥るのを防ごうと、ルッテ事務総長は対応に追われている。

  ルッテ氏はNATOサミットに向かうトランプ氏に対して、イスラエルとイランの紛争を抑制した手腕や欧州の国防費増額を実現させた功績を称える私的なメッセージを送っていた。だが、トランプ氏はこのメッセージのスクリーンショットを撮り、ソーシャルメディアに投稿した。

  ルッテ氏はその中で「あなたは過去数十年のどの歴代米大統領も成し得なかったことを達成するだろう」とし、「欧州は当然のことながら多額の支出を行うことになる。それはあなたの勝利だ」と記していた。NATO報道室が内容を確認した。

  ルッテ氏は今回のサミットで、相互防衛義務を定めた第5条に対するトランプ氏のコミットメントを引き出すことを最大の焦点に置いていた。そのため、加盟国に対しては国内総生産(GDP)比5%への国防予算引き上げというトランプ氏の要求に応じるよう要請。2日間の会議日程を通じてトランプ氏の不興を買わぬよう慎重に準備を進めてきた。

  ところが、会議直前の最終調整段階で、トランプ氏がNATO加盟国の防衛義務に対する米国の関与に疑問を呈する発言を行ったことで、ルッテ氏の目算は狂った。

  トランプ氏は大統領専用機(エアフォースワン)上で第5条へのコミットメントを記者団に問われ、「定義による」と述べた。

  「第5条の解釈にはいろいろある」とし、「だが私は、彼らの友人であることに注力している。これら指導者の多くと友人になった。彼らを支援することに注力している」と述べた。

  第5条は第2次世界大戦後のNATO同盟の中核を成す原則だ。冷戦時代には旧ソ連から西欧を守る役割を果たし、それ以降も米国主導の安全保障体制を支えてきた。

  だが、トランプ氏にとっては長らく不満の源でもあった。同盟国が米国の防衛費に過度に依存していると批判。各国は拠出を増やすべきだとの考えを示してきた。  

  1期目にはNATO脱退も辞さない構えをみせたほか、昨年には国防費を十分に増額していない加盟国に対し、「ロシアに好きなようにさせておく」と発言して物議を醸した。

NATOサミットに向けて出発する前に記者団に話すトランプ米大統領

原題:Trump Sparks Fear for NATO’s Future With Doubts on US Commitment(抜粋)

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