トランプ大統領の政策、戦後のアルゼンチンと類似-サマーズ氏が警鐘
サマーズ元米財務長官はトランプ大統領の政策について、かつて先進国とみられていたアルゼンチンが戦後に発展途上国へと転落した道を米国にもたらす恐れがあると警告した。
サマーズ氏はブルームバーグテレビジョンで「アルゼンチンは民主的に選出された指導者が民主主義を尊重せず、むしろ独裁的な統治を目指した数年間の政策決定によって、完全に軌道から外れてしまった」と指摘。「これは経済界や政治に関わる全ての人にとって、教訓となるべき事例だ」と語った。
アルゼンチンがカナダやオーストラリア、ニュージーランドなどとともに、天然資源に恵まれた先進国として一部で評価されていた1946年、フアン・ペロンがポピュリスト運動を始めた。ペロン主義は輸入代替と高関税を掲げ、国内産業の振興を図った。シンクタンクの公的通貨金融機関フォーラム(OMFIF)は2023年の分析で、こうした保護主義こそがアルゼンチン経済崩壊の「主要な政策」と指摘している。
ハーバード大学教授であり、ブルームバーグテレビジョンへの寄稿者でもあるサマーズ氏は「時間の経過とともにナショナリズムが浸透し、経済的成功が良質な製品を作って外国と競争することよりも、経済的成功が政府との近さによって左右されるようになり、アルゼンチン経済は破滅的な結果を迎えた」と述べた。「考えてみれば、われわれが今やっていることに恐ろしいほど似たモデルだ」と語った。
サマーズ氏は、米国には「極めて強靭(きょうじん)な制度」が存在し、ペロン時代のアルゼンチンにはなかった強みだと強調した。しかし、アルゼンチンの独裁的な過去との類似点として、保護主義や指導者への「個人崇拝」、メディアや大学、法律事務所など市民社会の一部に対する攻撃を挙げた。
戦後のアルゼンチンの独裁体制や第1次世界大戦後の欧州諸国の事例は「米国民がもっと注意を払う必要のある警戒すべき教訓であり、率直に言って、もっと広く議論されるべきものだ」とサマーズは述べた。
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トランプ大統領と閣僚は、巨額の関税によって貿易相手国に対する影響力を強め、いくつかの合意が米国の輸出拡大に大きなチャンスをもたらすと主張している。多くの国や企業から総額数兆ドルに上る大規模な投資プロジェクトの約束も歓迎している。
中国が勝者
サマーズ氏はそれらの約束の一部に懐疑的な見方を示し、「何を意味しているのかが曖昧なのは、基準点が不明確だからだ」と述べた。
「多くの投資が流出するだろう。全ての投入品の価格を引き上げ、米国は生産拠点としての競争力を損なっている」と指摘した。
トランプ氏は、鉄鋼やアルミニウム、半導体、銅など、多くの製造資材に関税を課すか、課す計画を立てている。
サマーズ氏は「これらの措置の一部により、製造業は量・質ともに低下する可能性が高い」と語った。
より大きな視点からは、「米国は保護主義と自国第一主義的な政策で世界から孤立している」と指摘。「原材料の高騰、不確実性の増大、顧客の離反は正しい戦略ではない」と話した。
最後に「この戦略には勝者がいる。その名は習近平だ」と述べ、中国の国家主席を名指しした。
原題:Summers Says Trump Policies Are ‘Scarily’ Like Argentina’s Peron(抜粋)