「社会のバグを直したい」参院選で初議席獲得の『チームみらい』結成2か月で”当選”のウラにIT技術を駆使した選挙戦 目指すのは「テクノロジーの力で誰も取り残さない日本を作る」

 7月20日に行われた参議院選挙で、結成からわずか2か月で議席を獲得したのが「チームみらい」。“テクノロジーで政治を変える”をスローガンに掲げた政治団体によるAIやデジタル技術を駆使した選挙戦に密着しました。

「社会におけるさまざまなバグをより良くしたい」

 7月20日の参院選で当選した政治団体「チームみらい」党首の安野貴博さん(34)。「テクノロジーで政治を変える」を掲げて初の国政選挙に臨み、1議席を獲得しました。

 (チームみらい・安野貴博さん)「われわれにとって、当選はゴールではなくスタート。その中でしっかりわれわれが訴えていきたいこと、ポリシーを持って活動していきたいと思っています」

 安野さんはAI=人工知能のエンジニアで、政治経験なしで初めて出馬した去年の東京都知事選では、デジタル技術を駆使した画期的な選挙戦を展開。15万を超える得票で5位となり注目されました。

 国政への挑戦のため、今年5月に「チームみらい」を立ち上げ、参院選で比例代表のほか、大阪や兵庫を含め12都道府県に計15人の候補者を擁立しました。

 目下の目標は得票率2%超えを達成し、公職選挙法上の政党要件を満たすこと。実現すれば政党交付金で永田町に「エンジニアチーム」を作り、政治の効率化などを実現させたいと考えています。  (チームみらい・安野貴博さん)「システムの欠陥・バグを見つけたら直したいっていう、そういう(エンジニアの)本能的な欲求があるんだと思う。社会におけるさまざまなバグ、欠陥はいろいろある。これを制度的にしっかりとより良くしていきたい、これができるのはやっぱり政治家なのではないかと思っています」

選挙ポスターを効率よく貼るシステムを開発

 「チームみらい」は結成されてまだ2か月。まずは“一人でも多くの有権者に知ってもらうこと”が大切です。  候補者や政策が載ったビラには、シール状の「証紙」を1枚ずつ貼り付けなければいけません。テクノロジーとは対照的な作業に苦笑がもれます。

 選挙ポスターは、効率よく貼ることができるよう「チームみらい」のエンジニアがシステムを開発しました。画面上でエリアごとに貼るべきポスターの数とその達成率を確認することができ、足りていないエリアが一目で分かります。

 支援者がこれからポスターを貼る箇所を予約するとポイントがオレンジ色になります。そして、貼り終えたことをシステム上で報告するとポイントが緑色に変わります。

 (支援者)「自分で完了に変えていく作業とか、どんどんマップが埋まっていく様子を見るのが、ゲーム感覚でできておもしろいなと思って、やってみたいなとなった。(Q緑色(完了)が増えていくのはどう?)初日は既存の大きい政党は午前中のうちから貼られている状況を見てきた。(チームみらいは)市内でも貼られてないところが最初はいっぱいあったので、こうやってみると結構うれしい」

『一方向ではなく双方向』が政治のあるべき姿

 選挙期間中、党首の安野さんは全国の候補者の応援に飛び回ります。街頭演説ができない夜間などは、SNSでの動画投稿やライブ配信の予定を詰め込み、さまざまな手段で幅広い層に政策を訴えます。さらに…

 (チームみらい・安野貴博さん)「こちらの画面(に映っているのは)、いま絶賛Youtubeでライブ配信しているAIの私=『AIあんの』です」  Youtubeで自らのアバター=分身が24時間いつでも視聴者の質問に答える「AIあんの」。都知事選では有権者に主張を伝えることに大いに役立ちました。

 記者が参院選当選後に実現したいことを聞くと…

 (AIあんの)「チームみらいが参議院選挙で一番実現したいことは、テクノロジーの力を活用して『誰も取り残さない日本』を作ることだと考えております。具体的には、一人ひとりが多くの選択肢を持てる社会、つまり自分の未来を自分で切り拓ける社会を実現したいということです」

 「AIあんの」には安野さんのインタビュー動画などを学習させていますが、答えられなかった質問は手動で回答することで、どんどんアップデートしていきます。

 (チームみらい・安野貴博さん)「一方的に人に自分たちの考えを伝えるだけではなく、有権者の皆さんが何を考えているのかを逆に教えてもらうという、双方向の情報の流れ方を作り出したい。まさにこの『一方向ではなく双方向』ということが政治のあるべき姿」

チャットでAIと議論 ”一緒に作れる”マニフェスト

 有権者の要望を知って政策に反映する。こうした考え方をもとに今回の選挙戦で初めて導入したのが、”一緒に作れる”マニフェストです。ウェブ上に公開されているマニフェストにはチャット機能がついていて、内容についてAIと議論を交わすことができます。

 (チームみらい・安野貴博さん)「いま5909個提案が届いている。例えばこの提案ならこういうふうなことを変更すればいいんじゃないか、変更前と後の差を見て、入れるべきものは反映させていく」  有権者の意見を広く集めてAIで分析し、最終的に安野さんらが妥当だと判断すれば、マニフェストの内容を修正したり、追加したりするといいます。

 (チームみらい・安野貴博さん)「いまの社会は複雑だし、人によって見えているものがばらばら。そうなったときに、自分たちが見えてないところから、いろんな指摘受けたほうがいい政策をつくれる。そのハードルもできるだけ低くするということをしている。そうするとおもしろいことに顔も名前も知らなかった専門家が専門家の知恵を突然持ち込んでくれたりする。そういうことしながらマニフェストはバージョンアップを積み重ねている」

「有権者の声を反映させたツールをつくりたい」

 投票日まであと2日に迫った7月18日。

 (チームみらい・安野貴博さん)「新しい、私たちの声が届く政治を一緒に始めましょう!」

 大阪・梅田で行われた街頭演説には、これまでで最も大きな人だかりが。安野さんはデジタル技術を駆使した選挙戦で、「チームみらい」が浸透してきたことを実感していました。

 (チームみらい・安野貴博さん)「手応えあると思う。東京だと前回、都知事選もやっていたので、知っている方の数も多いが、関西圏でもこれだけの方に来ていただけるのはすごいいいと思っています」

 そして迎えた投開票日。擁立した15人のうち比例代表の安野さんが当選。得票率は2%を超え、政党要件を満たすという今回の目標を達成しました。  (チームみらい・安野貴博さん)「われわれの訴えが多くの方に届いて支持していただいたことが本当にうれしい。マニフェストで訴えていたことはいろんな政党と連携しながら進めたいし、政治とカネを見える化するツールであるとか、有権者の声をダイレクトに反映させて政策や法案作りに生かすようなツールをつくっていきたい」

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