ベッセント米財務長官、日本の資金提案が決め手-EUとの協議控え語る

トランプ政権の貿易交渉を担当する閣僚2人が、日本との合意にこぎ着けた自らの交渉アプローチを自賛した。8月1日の期限を前に交渉が続く欧州連合(EU)にとって、好例になるかもしれないとの認識を示した。

  ラトニック米商務長官は23日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、米国に数千億ドルの投資を約束して合意を成立させた日本は、EUにとってモデルに「なり得る」と語った。

  ラトニック氏は「欧州が米国に1兆ドルの投資を行うことはないだろう」との見方を示しつつ、日本のように米国の自動車基準を欧州が受け入れ、米国製品の購入を増やせば、より好意的な合意を確保する助けになるだろうと主張。

  「欧州がそれを受け入れるなら」、「米国には数千億の輸出機会が生じ、トランプ大統領を動かすだろう」と語った。

  ベッセント財務長官も同日、ラトニック氏の前にブルームバーグテレビジョンのインタビューに応じ、EUが日本と同様の貿易合意をトランプ大統領と結べるかについて明言を避けた。日本の合意は、革新的な資金供給スキームによって実現したものだと強調した。

  「日本が15%の関税率を獲得できたのは、同国が革新的な資金供給スキームを提供する意思を示したからだ」とベッセント氏は語った。

  日本は当初、25%の関税を課される見通しだったが、自動車など本来25%の製品関連関税が適用される品目を含め、15%の税率で合意にこぎつけた。

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  合意には、米国への投資を目的とした5500億ドル(約80兆4000億円)規模のファンド設立も盛り込まれている。

  「日本側は、日本と米国のパートナーシップという構想を持ち込んできた。米国内の大型プロジェクトに対して、出資や信用保証、資金提供を行うという内容だ」と、ベッセント氏は語った。

  また、今回約束された対米直接投資は「全て新規の資本」だとも述べた。

動画:ベッセント米財務長官が日本との貿易合意について語る

  ベッセント氏はEUが約1000億ユーロ(約17兆2000億円)相当の米国製品に対して30%の報復関税を準備しているとの報道に言及し、過度に懸念すべきではないとの見方を示した。

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  「交渉戦術だと思う。もし自分がEUの立場だったとしても、同じことをするだろう」と語った。

  米国との協議の中でEU側が何か革新的な提案を出してきたかとの問いには「まだないが、交渉は以前より順調に進んでいる」と答えた。

自分の発案

  ラトニック氏は、日本が打ち出した投資スキームは自身が1月に考え出したものだと主張。「トランプ氏が望む形で日本が市場を開放することはあり得ない」ため、その代替案としてファンド形式の投資が浮上したという。

  石破茂首相が投資の一部は融資保証の形を取ると述べたことに対し、ラトニック氏は「出資と融資、融資保証だ」と説明。投資は日本企業が行うプロジェクトを特に対象にするわけではないと語った。

  「これはまさに、米国が後発医薬品の工場を建てたい」、あるいは半導体、重要鉱物の施設を建てたいという際に、日本が資金を提供するということだと、ラトニック氏は語った。

  日本は「銀行家(バンカー)であり、運営事業者ではない」との認識を示し、プロジェクトからの「利益は米国の納税者に90%、日本側に10%が分配される」とも述べた。

EUには問題

  EUとの交渉について、ベッセント氏は「かなりの前進を遂げている」としつつ、27カ国から成るEUには意思決定の難しさがあるとの見解をあらためて示した。これに対し、1990年以降に52回訪れたという日本は、「一つの実体として動いている」と表現した。

  また、欧州が対米貿易で黒字を抱えていることから、「貿易摩擦が激化した場合に、打撃が大きいのは常に欧州の側だ」と述べた。

  中国との協議については「中国に関する状況は現在、非常に良好で、より大きな議題へと移行を開始できる段階にある」と発言。米中の次回協議は28、29両日にストックホルムで行われる。

  関税引き上げ措置を一時停止している現行の休戦合意は、8月12日に期限を迎えるが、ベッセント氏は「90日単位で延長する可能性があると思う」とし、「双方が姿勢を軟化させた。米国は中国と定期的に会合を開く非常に良い流れに入れると思う」と語った。

原題:Bessent, Lutnick Hail Japan Finance Pledge as EU Talks Loom (1)、Japan to Finance Projects in US as Part of Deal, Lutnick Says(抜粋)

(ラトニック商務長官のインタビュー内容など、全体的に情報を加えます)

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