路上喫煙禁止の大阪市で目立つポイ捨て 格闘家・朝倉未来氏が喫煙所の増設検討も限界寸前

喫煙者の姿が絶えないアメリカ村の三角公園=6月18日午後、大阪市中央区(一部画像処理しています)

大阪市で路上喫煙が全面禁止されて約5カ月が経過したが、喫煙マナーの改善が進まない。4月からは飲食店内の禁煙も厳格化されたことで店先での喫煙が絶えず、繁華街では吸い殻のポイ捨ても目立つ。市には清掃や喫煙客への対応に追われる地元関係者から多くの陳情が寄せられている。路上喫煙対策に前向きな格闘家の朝倉未来氏が市に支援を申し出ているが、民間頼みの対策には限界がありそうだ。

喫煙者であふれる三角公園

大阪・関西万博の開催もあり、国内観光客や訪日客の姿が目出つ大阪市中央区の道頓堀橋。橋上を南北に走る目抜き通りの御堂筋は歩道の拡張や自転車レーンの整備で環境美化が進む一方、北西に徒歩10分ほどの場所にある繁華街のアメリカ村では様相が変わる。

アメリカ村の中心近くにあり、三角公園の愛称で親しまれる御津(みつ)公園を6月中旬の午後に訪れると、喫煙する若者や訪日客の姿が見られた。

市条例では公園内も路上と同様に禁煙とされているが、周囲に条例を周知したり、指定喫煙所を案内したりするような看板はない。公園内には灰皿もなく、たばこの吸い殻や空き箱があちこちに捨てられていた。

喫煙者の姿が絶えないアメリカ村の「三角公園」=6月18日午後、大阪市中央区(一部画像処理しています)

公園そばの路上で喫煙していた大阪府和泉市の20代の男性会社員は「公園近くはよく通るが、いつも喫煙者がいる。近くに喫煙所があることも知らない」と話していた。

民間敷地内で喫煙するケースも

地域の商業施設や商店でつくる任意団体「アメリカ村の会」の四月朔日(わたぬき)幸平会長は「御堂筋は行政が整備を進めて景観が良くなったが、周辺のエリアに路上喫煙者が流れている」と嘆く。

四月朔日氏によると、1月27日の市条例施行で市内全域の路上喫煙が禁止された後、コンビニや飲食店の店先から灰皿を撤去する動きが拡大。4月には府条例で飲食店内の禁煙も厳格化され、喫煙者の行き場は減った。近くの商業施設「ビッグステップ」など禁煙の民間敷地内でも喫煙するケースが多発している。

四月朔日氏は「指定喫煙所の整備を補助する市の制度では地価が高騰するアメリカ村では新設が難しい。市には地域の実情に沿った対応をお願いしたい」と訴える。

市議会議長に22件の陳情書

こうした状況が起きているのはアメリカ村だけではない。市は路上喫煙禁止に伴い、公設や民間への補助で市内に指定喫煙所を整備しており、6月1日時点で合計307地点に383カ所を設置。ただ人通りの多い繁華街や主要駅前ほど、地価や賃料が高いことから設置できる場所が少なく不足を訴える声は多い。

市民からは4月以降、市議会議長宛てに喫煙所不足を訴える陳情書が計22件寄せられ、市民や商店街組合などの団体が公設喫煙所の増設や補助の拡充を要望。5月の市議会建設港湾委員会では、各会派の議員が市に対応を求めた。

賃料の補助は実現するか

こうした地元の声を受け、4月に同市北区の繁華街で公衆喫煙所を開設した格闘家の朝倉未来氏が6月25日、動画共有サイト「ユーチューブ」に横山英幸市長との対談動画を公開。自身が代表を務めるネット配信映像制作会社「MA」(東京)を通して新たに喫煙所3カ所分の設備を市に寄贈することを明らかにした。

大阪市指定喫煙所の賃料補助について議論する横山英幸市長(左)と朝倉未来氏(ユーチューブより)

朝倉氏は対談の中で、自身が開設した喫煙所の運営費用が賃料を含めて1カ月あたり約50万円に上ることを明かし、民間の指定喫煙所に対する市の補助について「賃料補助をしていただけるとありがたい」と要望。横山氏は東京都千代田区が賃料を補助していることから「考えないといけない選択肢」と答えた。

市は今年度、路上喫煙の状況を検証しており、夏にも中間とりまとめを実施。対策の優先度が高いエリアでは、民間への補助による喫煙所の増設や民間喫煙所の一般開放などを進めるが、公設の予定はない。

市議会では市役所や区役所での喫煙所設置を求める声も上がっている。民間任せにするのではなく、路上喫煙を禁じる市自らのさらなる努力が求められている。(山本考志)

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