ウクライナ、ロシアの通販大手の倉庫を相次ぎ攻撃 中小企業に打撃
ソフィア・ウォリャノワ、ヤロスラヴァ・キリュヒナ、アマリア・ザタリ、タティアナ・コフトゥン(BBCニュースロシア語) ウクライナ軍は22日、ロシアのオンライン・マーケットプレイス(市場)最大手ワイルドベリーズが所有する複数の倉庫をドローンで攻撃した。これにより、ロシア国内の多数の中小企業が影響を受けている。 ウクライナはこの数カ月、ロシアの石油貯蔵施設や精油所などをドローンで攻撃してきた。ウクライナ政府は今回、ロシア人が軍事装備を購入するうえで利用されている物流拠点を標的にし、軍への物資供給を妨害していると述べている。 しかしこの攻撃は、電子市場で生計を立てている何百もの小売業者をいらだたせてもいる。戦争開始から4年半近くがたち、ロシアの人々に戦争をより身近なものとして感じさせている。 ある女性はソーシャルメディアで罵倒と共に、「私は障害のある子どもの母親で、このビジネスを一人で築き上げてきた」と不満を述べた。この投稿はたちまち拡散した。 「100万ルーブル(約200万円)を失ってしまった。(中略)私たちはすでにあらゆる方面からひどい目にあっているのに」とも、この投稿は述べている。 ウクライナは先週末、ワイルドベリーズ関連施設を最初に攻撃。モスクワ州東部エレクトロスタリと、ウクライナとの国境から約400キロ離れたタンボフ州のコトフスクにある倉庫が攻撃された。 コトフスクでは夜勤中の作業員7人が死亡、エレクトロスタリでは1人が重傷を負った。さらに数十人が負傷し、推定7億5000万ポンド(約16億円)相当の商品が破壊された。 ウクライナ政府は、ドローン製造および航行機器用の制裁対象部品を供給するために使用されていた「主要な物流施設」を攻撃したと発表した。 また、22日の夜にかけても、南部クラスノダールとスタヴロポリ地方のネヴィンノムイスクにあるワイルドベリーズの物流拠点が攻撃を受けた。 同社のオーナーであるタティアナ・キム氏は、さらなる死傷者が報告されていると述べた。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「我々は当然のことながら、戦争を元の国、つまりロシアに送り返している」と述べた。 2022年2月のウクライナ全面侵攻開始以来、ロシアはドローンやミサイルでウクライナの都市を標的にしてきた。最近では、ウクライナの倉庫や貨物ターミナルも被害を受けている。 ウクライナ最大の民間郵便事業者ノヴァ・ポシュタの仕分けターミナルのほか、小売チェーンATBや製菓グループ「ロシェン」が所有する倉庫も同様に攻撃を受けている。 戦況が膠着(こうちゃく)状態に近づく中、ウクライナは長距離ドローンで、ロシアの補給路やエネルギー施設を攻撃している。その結果、ロシアが2014年に不当に併合したクリミア半島は孤立し、ロシア全土でも燃料不足が起きている。 ロシアの小売業は倉庫への攻撃以前から混乱していたが、一部の企業は今回の攻撃で、一夜にして在庫の大部分を失った。 ワイルドベリーズと、競合のオゾンの2社は、ロシアの経済活動人口の85〜90%が利用していると推定されている。店舗へのアクセスが困難な多くの地方で、人々は衣料品から家電製品まで、買い物の大半をこれらのプラットフォームに頼っている。 ロシア大統領府(クレムリン)は、オンラインプラットフォームが軍事物資の調達に利用されていることを否定しているが、防弾チョッキなどの軍事関連品に加え、民生用やドローン製造用の製品も販売されている。 戦争支持派のブロガーらは、ボランティアが日常的にこれらのプラットフォームで物資を購入し、それを前線に送っていると主張している。 しかし、攻撃の標的となった倉庫にこうした物資が保管されていたかは、独立した確認がなされていない。 取引の場を提供するマーケットプレイス事業と並行して商品を直接販売している米アマゾンとは異なり、ワイルドベリーズとオゾンはほぼ完全にマーケットプレイスとして機能している。ロシア全土の独立販売者と購入者をつなぎ、商品の保管と配送、決済処理を行っている。 つまり、攻撃によって生じた損失の多くが、販売業者に降りかかっている。 文房具を販売しているある女性にとって、ワイルドベリーズは唯一の販売ルートだった。17日にモスクワ近郊のエレクトロスタリ倉庫に商品を納品したばかりだったが、 翌日には、この倉庫が全焼したことを知った。 女性の手元にはまだ在庫が残っているが、この時期は親や学生が秋の新学期に向けて買いだめをするため、彼女のビジネスにとって重要な時期だ。 ワイルドベリーズで10代の若者向けの衣料品を販売する別の女性は、BBCに対し、約140万ルーブル相当の在庫を失ったと語った。この女性は数週間、新規の仕入れを停止する予定だ。 「ワイルドベリーズとの取引の見通しは非常に不透明だ」 「今のところ、現状の損失を乗り切るだけの余裕資金はあるが、今後さらに攻撃されれば、おそらく立ち行かなくなる」 どちらの女性も賠償金は期待していない。攻撃の2週間足らず前の今月初め、販売業者向けの契約に条項が追加された際、ドローン攻撃はワイルドベリーズが責任を負わない「不可抗力事由」の一つとなったばかりだ。 同社オーナーのキム氏は、販売業者を「見捨てない」と約束し、一時的な割引や送料の免除を発表した。しかし、さらなる攻撃への不安を和らげるにはほとんど効果がなかった。 中小企業支援は、戦時中においてもロシアのウラジーミル・プーチン大統領が掲げた優先事項の一つであり、西側諸国の制裁に直面した際の回復力の基盤として位置づけられてきた。 しかし、ロシア政府はこの分野を戦争の影響から守ることができず、年初から企業は繰り返し打撃を受けている。 1月には付加価値税(VAT)が20%から22%に引き上げられたほか、国防費に充当される追加予算が決まった。さらに、一部の企業に対する税制優遇措置が廃止された。 企業データ会社Kontur.Fokusによると、ロシアでは2026年第1四半期に倒産した中小企業が、前年同期比9%増の約20万9000社に上った。 広範囲にわたるインターネット遮断と人気メッセージングアプリの規制も、さらなる混乱を起こしている。一部の推計によると、モスクワの企業は3月のある1週間で数千万ドルの損失を被った。 そして、ウクライナ軍による石油貯蔵施設、製油所、供給ルートへの攻撃をきっかけに、燃料危機が発生した。 スペインのポンペウ・ファブラ大学のルーベン・エニクロポフ教授(経済学)は、「(ロシアには)すでに多くのくぎが打ち込まれており、彼ら(ウクライナ)はそれを打ち込み続けている。(ワイルドベリーズの倉庫への攻撃は)棺おけに打ち込まれたもう一つのくぎなのか? もちろんそうだ」と、BBCに語った。 ロシアの中小企業はこれまで回復力を見せてきた。しかしロシアのインフレ率は高く、財政赤字は拡大し、石油・ガス収入は昨年上半期と比べて23%減少している。 ロシアは平時に蓄積された膨大な準備金を保有しているが、ウクライナでの戦争によってその資源がますます消費され、民間経済の成長が阻害されている。 追加取材:オルガ・シャミナ (英語記事 Russia's businesses under strain from Ukraine's attacks on Wildberries)
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