超巨大ブラックホールから高エネルギー粒子が噴出、謎の天体と衝突する様子を観測衛星が捉えた
これらのふたつの流れのうち、下のほうの流れはジェットとほぼ平行に存在しているが、上のほうの流れはジェットとは大きく角度がある。このため研究チームは、この上のほうの流れを説明することは難しく、何がこの流れを引き起こしているのかよくわからないとしている。
またジェットが衝突している天体そのものについても、正体がよくわからないという。現時点で最も強力な望遠鏡を使って得られた画像であっても、その詳細を確認することは難しいからだ。
したがって推測するしかないわけだが、この天体の正体は「巨大な恒星または連星を構成している巨大な恒星」ではないかと、研究チームは推測している。ジェットの高エネルギー粒子が巨大な恒星から吹く恒星風と衝突することで、X線が発生している可能性があるという。
今回のようにケンタウルス座Aの中心に潜む超大型ブラックホールから噴出するジェットが他の天体と衝突している様子が観測されたことは、実はこれが初めてではない。これまでにも、ケンタウルス座Aの中心に潜む超大型ブラックホールから噴出するジェットが、おそらく巨大な恒星あるいはガス雲と衝突しているとみられる例はいくつか見つかっている。
ただ、今回の例がユニークなのは、Vの字型のふたつの流れがつくられていることだ。他の例では“楕円形の滴”がつくられているにすぎなかった。
何がこのような違いを生み出しているのか──。研究チームは、ジェットが衝突している天体のタイプの違いか、ジェットが天体とどれくらい直接的に衝突しているかに関係しているのではないかと考えている。
銀河の中心に潜む超大型ブラックホールから噴出したジェットが、近くに存在する伴銀河(より大きな銀河の周りを公転する小さな銀河)と衝突している様子を捉えた画像。左下に見えている銀河の中心に潜む超大型ブラックホールから噴出したジェットが、右上に見えている伴銀河の端に衝突していることがわかる。なお、この画像はチャンドラのX線観測データ、ハッブル宇宙望遠鏡の光学及び紫外線観測データ、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡(VLT)などの電波観測データを合成して作成された。
(Edited by Daisuke Takimoto)
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