日本生命、25年度は9年ぶりに国債残高を削減-入れ替えを積極化
日本生命保険は2025年度に日本国債の残高を削減する。削減は16年度以来9年ぶり。前年度に続き低利回り債の入れ替えを積極的に行う。
執行役員財務企画部長の都築彰氏が24日の運用説明会で明らかにした。「国内債券等」は24年度に9000億円削減したのに続き25年度も削減する。通貨スワップを用いて円金利化した外国社債などを除いた「日本国債」の残高は24年度は増加したが、25年度は減少の計画。24年度に2兆円規模で行った低利回り債の入れ替えを継続し、入れ替えの規模が24年度を上回ることも「可能性としてはある」と言う。
4月の債券相場は、トランプ米大統領の関税政策や財政拡張懸念から値動きが激しく、買い手不在で流動性が低下している。国内金利の上昇を受けて一部の生保が外債から円債シフトを表明したが、日本生命と明治安田生命保険の大手2社は円債を削減し、外債を積み増す。大手では第一生命保険と住友生命保険がこれから計画を発表する予定。安定的な買い手とされる生保の出動は期待外れとなる可能性もある。
日本生命によると、24年度の国内債券の売却簿価は約1兆9900億円、売却損は約3200億円に達した。都築氏は25年度の国債投資について「入れ替えを時価で行っているため、売却により簿価が減少するが、時価ベースでは残高は増加する」と説明した。
投資対象は30年債が中心。「金利水準は魅力があるものの、市場は非常に不安定で投資家の目線が定まっていない」と都築氏は指摘。4月前半は「割と多めに買っている」とした上で、基本は平準ペースで買い入れ、市場動向次第で機動的にペースを調整していくと言う。
運用計画を公表した生保7社のうち、T&Dホールディングス傘下の太陽生命保険と大同生命保険は外国債券と内外株式を売却して3000億円規模で円債を積み増す。かんぽ生命保険は償還が多いため円債の残高は減るが、外債からのシフトで最大1兆円規模の買い入れを表明。富国生命保険も3000億-4000億円買い入れる。
日本銀行の利上げ継続による金利先高観から24年度は生保にとって待ちの状態が続いた。日本証券業協会によると、国内の保険会社は3月に超長期債を過去最高となる6458億円売り越した。対照的に海外投資家の買越額は過去最高を記録した。
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SMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジストは、新年度が始まったばかりでボラティリティーが高いため生保は投資を先送りしているものの、金利水準に妙味を感じており、「市場が落ち着けば買いに入ってくるのではないか」と語る。生保の需要を測る上で5月13日の30年債入札が試金石になり、「需要が確認されれば相場全体に安心感が出る」とみる。