量子コンピューティング革命が間近に迫っている…準備を始めていないCEOは「手遅れになる」(海外)(BUSINESS INSIDER JAPAN)

企業に準備ができていようといまいと、量子コンピューティング革命は間近に迫っている。テクノロジーの変化に対応できない企業は競合に遅れを取るリスクがある。IBM、マイクロソフト、イオンキュー、サイクオンタム、D-Waveの経営者たちは、企業のリーダーは量子コンピュータの準備を今すぐ始めるべきだと語っている。 現在、AI(人工知能(AI)を使わない企業を探すのは難しい。そして数年のうちに、同じように量子コンピューターも一般化するとテクノロジー業界のリーダーたちは予測している。 「今AIや従来のコンピューティングで起きた変化と同じようなことが、量子コンピューティングでも起きるということだ。ただし、はるかに大きな規模で起きることになる」と、IBMで量子コンピューティングのプロジェクトを統括しているバイスプレジデントのジェイ・ガンベッタ(Jay Gambetta)はBusiness Insiderに語っている。 量子物理学と量子力学を活用し、従来のコンピューターでは不可能だった速度で複雑な問題を解決できるとされる量子コンピューティングという分野において、近い将来に大きな進展があると研究者たちは期待を寄せている。 最終的な技術的課題が解決され、量産や実用化が進めば、量子技術は医療やデータのプライバシー保護など、さまざまな分野に大きな変革をもたらすと見られる。 業界関係者によると、量子コンピューターがAIと同じくらいテクノロジーの世界を大きく変えるのは、もはや時間の問題だという。したがって、企業の経営者たちは今からその準備を始めておくべきだろう。 「もし量子コンピューティングに注目しておらず、専任の人材も割いていないのなら、おそらくもう手遅れだと思う」とガンベッタは話している。

AIと量子コンピュータは、互いに代わりがきくツールではない。それぞれがまったく異なる強みを持っている。AIは特に過去のデータをもとに未来を予測するのが得意であり、画像を見分けたり、ネットショッピングでおすすめの商品を提案したり、不正行為を見つけたりするのに役立つ。 「大規模な量子コンピューティングは、過去のデータを使って予測するわけではない」と、サイクオンタム(PsiQuantum)のCBO(最高事業責任者)のストラットン・スクラヴォス(Stratton Sclavos)はBusiness Insiderに語っている。 そうではなく、根本的な原理からゼロベースで正確な答えを計算し、「従来のコンピュータやAIでは決して解けない問題を解決する」とスクラヴォスは言う。 「もし現在、AIを使っているか、利用を拡大しているなら、そのまま続けるべきだ」とスクラヴォスは述べた。 しかし彼は、企業の経営者は「量子コンピューティングがどのように自社の事業運営を変えるのか、その備えを今すぐ始めるべきだ」と言う。 マイクロソフト(Microsoft)の製品イノベーション、戦略ミッション、技術担当のバイスプレジデントのアシーム・ダター(Aseem Datar)は、急速な技術革新の流れを考えると、「組織は量子時代に成功するために、早急にアプリケーションロードマップの調査、特定、構築を開始することが極めて重要だ」と話す。 例えば、マイクロソフトは最近、クラウドサービスのアジュール(Azur)上に科学研究と開発向けのエージェント型AIプラットフォーム「ディスカバリー(Discovery)」をリリースした。このテクノロジーは、将来にわたって使い続けられるように設計されており、量子コンピューティングが進歩した際には既存のテクノロジーにスムーズに組み込まれ、利用者はプラットフォームの基盤として「量子の恩恵を受けられる」とダターは話している。 マイクロソフトのディスカバリーは科学分野向けのテクノロジーだが、ダターによると、将来的にさまざまな業界の先進的なテクノロジーも同じような特徴を持つという。彼によると、従来のコンピューターの強みと量子システムの強みを組み合わせるハイブリッドコンピューティングが特に重要だという。そうすることで、量子のテクノロジーが本格的に普及しても、企業のリーダーたちは既存のシステムを一から作り直す必要がないからだ。 D-Waveの量子技術推進担当バイスプレジデント、マレー・トム(Murray Thom)はこれに同意してこう語った。 「量子コンピューターと従来型コンピューターのハイブリッドな組み合わせこそが、企業が求める事業の強さをもたらすだろう」 トムはさらに、量子技術が拡大するにつれて技術の世界が急速に変化することを組織は理解し、準備しておく必要があると話す。 「そうすれば、新しい技術の利点を活かせるし、最新の能力を見逃して競争で不利になることも避けられる」 「新しいテクノロジーを評価するときは、今わかっている情報と、『不確実性の円錐』という将来に向けて予測の幅が広がる状態を考えなければならない」とトムは言う。 「重要なのは、この不確実性の円錐を狭めるための情報を得て、将来のために今何をすべきかをより正確に判断できるようになることだ。特に、どんな未来が来ても対応できる柔軟さを持った決断を下すことが大切だ」

Katherine Tangalakis-Lippert

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