吉田豊彦氏、38戦連続無失点の阪神・石井大智に「さらに上を目指して」 四国IL高知で指導
(セ・リーグ、阪神6ー2ヤクルト、18回戦、阪神11勝7敗、9日、京セラ)阪神・石井大智投手(28)がセ・リーグタイ記録の38試合連続無失点を達成。四国IL高知時代の恩師で、現役時代は南海や阪神などで通算81勝を挙げた吉田豊彦氏(58)=現楽天副寮長=がサンケイスポーツの取材に応じ、教え子の快挙を喜んだ。
吉田氏は、石井の偉業達成を仙台の自宅からネット観戦で見届けた。
「最初に会ったときは身長も小さいし、直球も140キロ前後。正直、ここまでできると思わなかった」
高知時代、投手コーチ&監督として石井を3年間、指導。「シンカーはよかったが、秋田高専なら就職でも引く手あまた。こっちは手取りで月10万円なのに」。野球への思いが捨てきれず、2017年に秋田高専から入団した当時を振り返った。
「野球に取り組む姿勢は他の選手とは全然違っていた。彼がすごいのはブレないところ。吸収力は高いし、いろんなアドバイスに耳を傾けるが、自分なりにかみ砕いて試行錯誤していく。頭の回転がすごく速い子でしたね」
石井の転機は1年目のオフ、宮崎で開催されているフェニックス・リーグに独立リーグのチームとして参加したときだった。
「彼はボコボコにやられた。それが悔しかったのか、高知に戻ってきてからはウエートトレーニングもただやるだけでなく、研究熱心で初動負荷とか、どうすればパフォーマンスにつながるか、トレーナーと相談しながらやっていた」
それから3カ月。「ひと冬を越えて、最高球速が10キロアップするなんて話は聞いたことがない。驚きでした」。急成長を遂げると、阪神を含むNPBのスカウトが高知を訪れるようになった。
そして、20年のドラフト会議で阪神から8位指名。支配下で74番目は最下位だった。「彼は目標をクリアしたら、また次の目標を設定し、努力をしていくタイプ。心配しなかった」。吉田氏は今も石井とメールで連絡を取り合っている。入団5年目で初めて球宴に出場が決まった今年7月には「おめでとう」と送信。石井からは感謝の言葉をもらったという。
吉田氏は投手コーチとして、16年には米球界から帰国して高知に入団した藤川監督も指導。そして、石井が藤川監督に肩を並べた。「2人は高知で過ごした。いろんな意味で縁があったんでしょう」と笑った。
「石井は小さい子に夢を与えたと思う。さらに上を目指して、僕を驚かせてほしい」
教え子のさらなる活躍を願っている。(三木建次)
■吉田 豊彦(よしだ・とよひこ) 1966(昭和41)年9月4日生まれ、58歳。大分県出身。国東高から本田技研鈴鹿を経て、88年D1位で南海入団。98年、阪神に移籍し、2002年に近鉄へ。05年から楽天に在籍し、06年限りで現役引退。通算619試合登板、81勝102敗、17セーブ、防御率4・38。2桁勝利を3度記録し、球宴出場3度。引退後、楽天2軍投手コーチなどを歴任し、12年に四国IL高知の投手コーチに就任。20年、同監督に。24年からは楽天の副寮長。左投げ左打ち。現役時代は174センチ、78キロ。