ドイツの歳出計画、周辺国債務への不安再燃させる-債券自警団始動も
ドイツの新たな大型支出時代が欧州全域の借り入れコストを押し上げ、欧州周辺国の財政安定性に対する懸念を再燃させている。
イタリア、ギリシャ、スペイン、ポルトガルの10年物国債の利回りは、今月初めと比較して30ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)以上上昇している。欧州ソブリン債危機に苦しんだ4カ国は、今でも高い負債を抱えており金利上昇の影響を受けやすい。
ドイツは長年にわたり、欧州連合(EU)における財政規律の代弁者であり、イタリアやスペインなどの国々に対して緊縮財政を迫り、共同債務の発行に反対してきた。
支出に対するより寛容なアプローチへの転換は、欧州で多くの債務を抱える諸国に負の影響を及ぼす可能性がある。
M&Gインベストメンツのポートフォリオマネジャー、ロバート・バロウズ氏は「ドイツが赤字支出を受け入れれば、他の国々も追随し、欧州全体で債務に対するより緩やかな姿勢につながる可能性がある。これは欧州諸国の国債に対する信頼を弱め、多額の債務を抱える国々の借り入れコストを上昇させる恐れがある」と指摘した。
同氏は周辺国国債の保有を減らしたという。
ドイツ債の利回りも急上昇しているが、市場では欧州最大の経済であるドイツは防衛とインフラに巨額の資金を費やす余裕があるとみられている。
リスクは、この動きがドイツ国外にも広がることだ。欧州の指導者たちが、他の国々にも防衛費を増やすことを認めるために予算規則を緩和する計画を支持しているためその可能性は高い。
エーゴン・アセット・マネジメントのファンドマネジャー、コリン・フィンレイソン氏は「ドイツは世界で最高級の信用力を持つ国の一つであり、財政的な余裕も十分にある」が、「他の欧州諸国がドイツのやり方をまねようとした場合、広く受け入れられるとは思えない」と話した。
リスクにさらされているのは周辺国だけではない。フランスとベルギーの債務水準は近年急上昇しており、両国の債務残高の対国内総生産(GDP)比はスペインやポルトガルを上回っている。
昨年、フランス国債が急落したことは、多額の債務を抱える国が支出を増やそうとすれば、債券市場の「自警団」が素早く復活することを示した。
ユリゾンSLJキャピタルのスティーブン・ジェン最高経営責任者(CEO)最高経営責任者(CEO)の最近の分析によると、EU加盟国のうち財政支出を大幅に増やす余地があるのはドイツ、オランダ、スウェーデン、アイルランドのみ。
フランス、スペイン、ギリシャが最も脆弱(ぜいじゃく)な立場に置かれる可能性があるという。
「ドイツがアクセルを踏み込めば、欧州全体の金利水準が上昇するだろう。債券自警団に何ができるかをわれわれは既に目撃している」と同氏はインタビューで語った。
原題:Germany’s Spending Plan Reignites Jitters Over Periphery Debt(抜粋)