教員盗撮「名乗り出て」異例の呼びかけ→SNSは冷ややか…応じたら罪は軽くなる?
名古屋市と横浜市の小学校教員が女子児童を盗撮し、その画像をSNSのグループチャットで共有していた事件が社会問題となっている。
阿部俊子文科相は7月1日、閣議後の記者会見で「一刻も早く名乗り出てほしい」と加担した他の教員たちに呼びかけた。
報道によると、チャットには小中学校の教員ら約10人が参加していたとされるが、SNS上では「名乗り出るわけがない」といった冷ややかな声が多い。
では、文科相の呼びかけに応じて警察に出頭した場合、刑事処分にはどのような影響があるのだろうか。澤井康生弁護士に聞いた。
●呼びかけに応じれば「自首」が認められる可能性も
──呼びかけに応じて警察に行く場合、「自首」と「出頭」の違いはなんでしょうか。
自首とは、刑法上の制度で、罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自ら犯罪事実を申告することで、刑の減軽が認められます(刑法42条)。また、捜査機関が犯罪の発生を把握していても、犯人が特定されていない段階であれば自首は成立します。
一方、出頭は犯罪が捜査機関に発覚した後に自ら出向いて犯行を申告することです。自首と異なり、刑の減軽が受けられるわけではありません。ただし、出頭した事実は有利な情状として考慮されて、結果的に刑が軽くなる可能性はあります。
──今回のケースだと、どちらにあたるでしょうか。
チャット内の教員約10人について、捜査機関がまだ氏名や住所を特定していない段階で警察に出向けば、自首と認められる可能性があります。
●自首が認められれば、刑は最大で「半分」に
──今回の事件ではどのような罪に問われますか。
2023年に施行された性的姿態撮影等処罰法(いわゆる撮影罪)が適用されると考えます。これは、正当な理由なく性的姿態を撮影する行為を処罰するもので、法定刑は3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金です(同法2条)。
なお、撮影以外でも処罰の対象になる行為があります。(法定刑は各罪ごとに異なります)。たとえば、盗撮画像を第三者に提供した場合には、性的影像記録提供罪(同法3条)が成立します。
また、第三者に提供する目的で盗撮画像を保管していた場合には、性的影像記録保管罪(同法4条)が成立します。
──自首が認められた場合、どの程度、罪が軽くなりますか。
自首が認められると、裁判官の裁量で刑期を半分まで減らすことができます(刑法68条)。罰金額も半分まで減らせます。
撮影罪であれば、1年6カ月以下の拘禁刑または150万円以下の罰金まで刑を減らすことが可能です。
●教員の私物管理の課題
──教員の盗撮事件が相次ぐ背景にどのような問題がありますか。
これまで「教員が盗撮することはありえない」という性善説に基づいて、教員の私物管理が十分におこなわれてこなかった面があると考えられます。
今後は、教員であっても私物のスマホやカメラの持ち込みを禁止したり、勤務時間中は校長が一括保管するなどの対応を検討する必要があります。
また、公務用カメラを用いた盗撮のリスクもあるため、撮影後に管理職がデータを確認する体制なども求められるかもしれません。
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