世界エイズデー 「U=U」知って偏見解消へ <じぶんごとで考えよう HIV/エイズ>30

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 もうすぐ12月1日、「World AIDS Day(世界エイズデー)」を迎えます。世界レベルでのエイズまん延防止と患者・感染者に対する差別・偏見の解消を目的に、世界保健機関(WHO)が、1988年に制定しました。毎年エイズデーの前後には世界各国でエイズに関する啓発活動が行われます。

 日本もその趣旨に賛同し、全国各地でさまざまな世界エイズデーイベントが実施されます。その取り組みの1つに、厚生労働省とエイズ予防財団が主催する世界エイズデーキャンペーンテーマの策定があります。

 2024年度のテーマは「U=U 知ることから、もう一度。12月1日は世界エイズデー」です。

 本テーマには「U=U」(Undetectable 検出限界値未満=Untransmittable 感染しない)という言葉を知ることを契機に、「もう一度HIV/エイズのことを皆で考えてみましょう」というメッセージが込められています。

 またひとりでも多くの人がHIV/エイズのことを「じぶんごと」として捉え、検査や治療、支援などの知識を身につける契機とし、最新の知識の普及を通じて、HIV検査の受検促進や差別・偏見の解消につなげたいという意味もあります。

 現在、HIVに感染すると体内から完全にウイルスを除去することはできません。ですが、治療法は進歩し、健康で長生きができるようになりました。

 抗HIV薬を飲み続けることで、血液中のウイルス量を検査で検出できないほどに抑えることができます。また、この状態を最低6カ月以上持続できていれば、性行為によって相手にHIVを感染させるリスクはゼロとなります。このような状態をU=Uと言い、コンドームや、内服薬でHIVを予防する曝露(ばくろ)前予防内服(PrEP=プレップ)等の予防なしの性行為においてもHIVは感染しません。

 しかし、こうした治療・予防法の進歩などを含め、HIV/エイズに関する正確な情報が社会全体に十分に伝わっているとは言えません。そのことがHIV感染を心配する人たちを検査や治療から遠ざけ、新たな偏見・差別を生み、HIVとともに生きる方々の選択肢を狭めている要因の一つになっています。

 「U=U」はHIVとともに生きる方だけではなく、社会でともに生きる皆さんにも知ってほしい重要なメッセージの1つです。来る12月1日、知ることから始めませんか。

 (新里尚美、琉球大学病院第一内科・県感染症診療ネットワークコーディネーター)

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