[社説]米中に翻弄されぬ多国間外交導け
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2026年の世界情勢は混沌が深まるのか、新たな国際秩序づくりの起点になるのか、不確実性に満ちている。待ちの姿勢では奔流にのみこまれてしまう。日本は自ら主体的に考え判断し、先んじて動く戦略性に富んだ外交・安全保障政策を磨いていきたい。
トランプ米政権は高関税政策で世界を振り回し、戦後の自由貿易体制を壊した。新たな国家安全保障戦略も「米国第一」を貫く立場を鮮明にしている。
開かれた国際秩序への関心がみられない。内向き志向は今年も変わらないと覚悟すべきである。
それを好機とみるのが中国だ。「グローバル・ガバナンス・イニシアチブ」を国家指針に掲げ、米国に代わって国連重視や自由貿易の担い手になる姿勢をアピールする。途上国や非西側諸国に働きかけて国際秩序を作り替えようとする動きを強めるだろう。
今年の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は米国で開かれ、トランプ大統領が仕切り役となる。主要7カ国(G7)の議長国は中国との距離を詰めるフランスだ。国際協調は正念場を迎える。
最大の変数が米中関係だ。トランプ氏は4月にも訪中する。習近平国家主席の年内訪米でも合意したと話す。世界の安定につながれば望ましいが、台湾問題などで米中に都合のよいディール(取引)に走らないとも限らない。
一部の大国が当事国を置き去りに世界の大きな動きを決める第2次世界大戦末期のヤルタ会談の再現に警戒しなければならない。
トランプ氏の1期目は安倍晋三元首相の助言に耳を傾けたが、2期目は外交にも自信をもち、気ままな振る舞いが際立つ。そんな米国をアジアにつなぎ留めるのが肝要だ。高市早苗首相の早期訪米などを通じてトランプ氏との信頼関係を深め、日米同盟を揺るぎない水準に引き上げる必要がある。
既存の秩序が崩れると、「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国の存在感が高まる。国際協調を唱える中国の主張が米国よりもまっとうに聞こえれば中国主導の新秩序になびきかねない。
米国はインド、ブラジルにそれぞれ50%関税を課し、両国は不満を募らせる。有力新興国でつくるBRICSで民主主義を標榜する国家をあえて中ロ側に押しやりかねないトランプ政権のやり方は、日本としても看過できない。
東南アジア諸国連合(ASEAN)はインドネシア、タイ、マレーシア、ベトナムが中ロに接近する。一方で、インドネシアとタイは経済協力開発機構(OECD)にも加盟申請し、インドネシアとフィリピンは包括的・先進的環太平洋経済連携協定(CPTPP)加盟に名乗りをあげた。
日本は仲間を増やすため、リベラルデモクラシー(自由民主主義)や市場経済の守り手だと世界に訴え、主導的な役割を果たすべきだ。グローバルサウスやASEANをひき付け、米中対立のなかでミドルパワーの連携をつむぐ取り組みをもっと加速できないか。
中国の軍事的・経済的威圧のほか、ウクライナを侵略したロシアが北朝鮮と軍事協力を強めるなど日本周辺の安保環境の悪化は著しい。昨年末は中国軍が台湾を包囲した軍事演習に踏み切った。
政府は年内に安保関連3文書を改定する。日本の守りに最適な解を見いだす大事な作業になる。
日米韓に豪州やフィリピンなどを交えたマルチラテラリズム(多国間主義)が地域安保で重要になっている。日本は多国間外交を積極的に展開し、同志国の裾野を広げていくことが期待される。
地域の安定へ中国との関係修復は不可欠だ。脅威への抑止力を高めながら、あらゆるパイプを駆使して対話も重ねるしたたかさを求めたい。日本人拉致問題を抱える北朝鮮に対しても同じことが言える。対米、対中、対北朝鮮で韓国と協力する重みが増している。
世界全体を広い視野でとらえた外交戦略こそが問われる。安倍氏の後継者を自任する首相は「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を実践するときだ。高い支持率を背に指導力をみせてほしい。
首相が国会審議に長く拘束され、外交活動の妨げとなっている国会の慣習を今の時代に合わせて変える必要がある。国政全体で難局にあたる態勢づくりは急務だ。
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