アジア通貨に落ち着き戻る、中国が安定役に-ドル離れは継続との声も

中国が人民元を対ドルで急激に上昇させる用意がないことを明確にしたことで、数日にわたり激しく変動していたアジア通貨に安定が戻った。

  中国人民銀行(中央銀行)は連休明けの6日、人民元の中心レート(基準値)を1ドル=7.2008元に設定。連休前の水準からほぼ変わらずとした。これにより、最近のオフショア市場での元高の動きを抑制するとともに、アジア市場で進んでいたドル安の一方的な流れをけん制した。中国政府は、金融当局が現地時間7日午前9時から「市場と期待を安定させる金融政策パッケージ」について発表すると明らかにした。

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  5日には台湾ドルが1988年以来の大幅上昇を記録するなど、対アジア通貨で米ドル売りが加速し、市場に動揺が広がっていた。

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  人民元の安定を維持しようとする中国の姿勢は、米ドルに対するアジア通貨の上昇が今後どこまで続くかを見極めようとする市場参加者に重要な手掛かりを提供する。中国経済の影響力の大きさから、人民元はアジア通貨の基軸と見なされており、人民元の安定は他のアジア通貨の急変動リスクを低減させる役割があるとされる。

  オーストラリア・ニュージーランド銀行のアジア調査責任者、クーン・ゴー氏は「中国は実現するか不透明で、少なくとも当面は合意の見込みが薄い通商協定を見越して人民元の上昇を容認する意図は全くない」とリポートで指摘。中国が元の中心レートを安定維持することで、「足元のアジア通貨の上昇に歯止めをかけるはずだ」と記している。

  アジア通貨の中でも最も荒い値動きを見せていた台湾ドルは6日の取引で、7営業日ぶりに米ドルに対して反落した。足元の上昇基調の背景には、台湾が対米貿易交渉で合意に達するために、通貨高を容認するとの思惑があった。

  米財務省は昨年11月、中国、日本、韓国、シンガポール、台湾、ベトナムの通貨政策を監視リストに指定したと発表。これらの国・地域が対米ドルで通貨高を容認すれば、今後の通商協議で交渉材料となる可能性がある。

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  一方、INGのストラテジスト、フランチェスコ・ペソレ氏は、ヘッジのフロー拡大から、アジア通貨が米ドルに対して上昇を続けるリスクがあると指摘する。

  アジアの投資家は現在、米ドルに対するヘッジを強化するだけでなく、米国から投資先の分散に着手したと同氏はリポートで指摘。「これはドルに対する弱気なシナリオと整合しており、アジア諸国・地域との貿易合意が米ドルに有利な展開をもたらすはずが、米ドル資産を豊富に抱えるアジア諸国・地域が保有を減らす機会となる恐れがある」と述べた。

原題:China’s Firm Hand Restores Calm After Asia’s Wild Currency Moves(抜粋)

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