LUNA SEA・真矢さん「脳腫瘍」を公表 前兆となる4つの初期症状を医師が解説

9月8日、人気ロックバンド「LUNA SEA」のドラマーである真矢さん(55)が、「脳腫瘍」と診断されたことを公式サイトで公表しました。また、2020年から大腸がんのステージ4の治療をしていたことを併せて公表しています。 脳腫瘍は進行するまで自覚しにくい一方で、頭痛や吐き気、視覚や言語の異常など、体が発する小さなサインがあります。こうした前兆を見逃さず、早期に医療機関を受診することが、治療の選択肢や予後を大きく左右します。日本脳神経外科学会専門医の村上先生に詳しく伺いました。

脳腫瘍と聞くと、怖い病気であるというイメージをお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。しかし、日々診断治療技術も進歩しており、適切な治療によって社会復帰される方もいらっしゃいます。 脳腫瘍は、頭蓋内(つまり頭蓋骨の内側)に発生する腫瘍の総称です。そのため、脳の細胞・組織だけでなく、脳を包む膜(髄膜・硬膜)や脳に出入りする神経など、頭蓋内のさまざまな部分に発生する腫瘍はすべて含めて脳腫瘍に含まれます。 脳腫瘍は、毎年約10万人に10人の割合で発生すると言われています。 ひと口に脳腫瘍と言っても非常に多くの種類があるので、総論的な説明になってしまいますが、今回は脳腫瘍の症状を中心に説明いたします。

脳腫瘍は大まかに原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍とに分けられます。 原発性脳腫瘍とは脳の細胞や神経・脳を包む膜などから発生する腫瘍のことで、転移性腫瘍とは肺がんや乳がんなど身体の他の部分でできた腫瘍細胞が脳に転移した腫瘍のことを指します。 脳腫瘍は多くの種類があることが特徴で、150種類程度に分類されます。これらの腫瘍には細胞の悪性度によって良性脳腫瘍と悪性脳腫瘍に分かれます。 一般的に、良性脳腫瘍はゆっくりと大きくなる腫瘍で、正常な脳組織と境界がわかりやすいことが特徴ですが、悪性脳腫瘍は急速に大きくなり周りの正常な組織との境界が不明瞭です。また、悪性脳腫瘍の場合には腫瘍が大きくなることに伴って周りの正常な脳組織にダメージを与えて症状の悪化をもたらすこともあります。転移性脳腫瘍は悪性脳腫瘍の一つに分類されますが、原発性脳腫瘍には良性のものも悪性のものもあります。なお、細胞の悪性度によって良性と悪性とを分類していますが、治療を行う上では、腫瘍が発生した場所によっては、良性の脳腫瘍であっても治療することが難しいというケースもあります。 脳腫瘍は脳神経外科が専門診療科になるので、脳腫瘍を指摘された場合には脳神経外科を受診し、病気に関する疑問点を確認するようにしましょう。 ・原発性脳腫瘍 原発性脳腫瘍は、脳の細胞や神経、脳を包む膜などから発生した腫瘍のことです。 脳の細胞から発生するものは脳実質内腫瘍といい、脳神経や脳を包む膜から発生するものを脳実質外腫瘍といわれます。 脳実質内腫瘍には、グリオーマ(神経膠腫)や脳悪性リンパ腫などがあります。 脳実質外腫瘍には、脳を包む膜(髄膜)にできる髄膜腫や、脳から出る神経にできる神経鞘腫、下垂体というホルモン分泌臓器にできる下垂体腺腫などがあります。 発生頻度の高いものから、神経膠腫、髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫があり、これらの4種類の腫瘍で脳腫瘍全体の80%程度を占めます。 15歳未満の小児期でも原発性脳腫瘍は発生します。成人例と異なり、星細胞腫、胚細胞性ら腫瘍、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫などの腫瘍の発生頻度が高いという特徴があります。 ・転移性脳腫瘍 転移性脳腫瘍は、体内の他臓器のがんが脳に転移した腫瘍で、脳腫瘍の17%程度を占めます。進行がんの10~40%に合併し、肺がんや乳がん、消化器がんからの転移性の腫瘍が多く見られます。 何らかのがん治療を行なっていた際に脳腫瘍の症状が出現し脳転移が見つかることもあれば、まず脳腫瘍が見つかり手術で摘出したのちに病理検査によってそれが身体の他の臓器のがんであることが判明することもあります。


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脳腫瘍は初期段階の小さな病変であるうちは、何かの症状が現れることはほとんどありません。ある程度の大きさまで成長して初めてさまざまな症状がみられます。 腫瘍が大きくなると周囲の正常な脳組織を圧迫して脳浮腫(むくみ)を引き起こしている場合が多く、多彩な症状が現れます。 主な脳腫瘍の症状は頭蓋内圧亢進症状と脳局所症状、けいれん発作です。 これらの症状が進行するスピードは発生した腫瘍の悪性度と関連することが多く、特に悪性腫瘍の場合には症状が現れるとその後急激に悪化することもあります。 気になる症状があったら、まずは早めに脳神経外科や脳神経内科を受診し、頭部MRI検査を受けることが勧められます。 ・頭痛・嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状 脳は頭蓋骨や髄膜・硬膜によって密閉された状態が保たれているために、腫瘍自体の体積が増大することで頭蓋内圧が強まります。 頭蓋内圧が徐々に高まっていくと頭痛や嘔吐、眼底が腫れること(うっ血乳頭)による視力低下などが現れます。 頭痛は起床時に起こることが多く、急な嘔吐などが多く見られることが特徴です。視力障害は初期段階ではほとんど自覚はありませんが、一時的な視力障害を繰り返すことで見つかることがあります。頭蓋内圧が高まった状態が続くと失明することもあります。 ・麻痺症状などの脳局所症状 脳局所症状とは、腫瘍の発生した場所や、腫瘍によって圧迫された場所の脳組織がダメージを受けることで発症する症状です。手足の筋力低下(麻痺)、しびれなどの感覚障害、喋りづらい(言語障害)、記憶力・認知機能の低下、めまいやふらつきなど、さまざまな症状が現れる可能性があります。 ・ホルモン分泌異常や視力・視野障害 これも脳局所症状に含まれますが、脳内にあるホルモン臓器に脳腫瘍が発生するとホルモン分泌異常や視力・視野障害が起こります。 例えば、脳下垂体部の腫瘍では、腫瘍が大きくなることで視神経を圧迫して視力の低下や視野が狭くなる症状が起こったり、ホルモン分泌異常による全身へのさまざまな症状が見られたりすることがあります。 視力や視野の症状は放置すると失明する可能性があるため、早めに治療をしなければいけません。ホルモン分泌異常は、成長ホルモン産生腫瘍、プロラクチン産生腫瘍、副腎皮質刺激ホルモン産生腫瘍などによって引き起こされます。成長ホルモン産生腫瘍では、額、顎、唇、舌、手足などが大きくなる先端巨大症を発症し、高血圧や高血糖を引き起こすことから放置すると寿命が短くなると言われています。プロラクチン産生腫瘍では、月経異常、乳汁分泌不全、性機能低下などの症状が現れます。副腎皮質刺激ホルモン産生腫瘍は、顔が丸くなる満月様顔貌、胸や腹部が太くなる中心性肥満などを特徴とするクッシング病を発症します。 また、頻度は少ないのですが、松果体部の腫瘍では、上を見ることができない症状(上方注視麻痺)やダブって見える症状(複視)が見られます。 ・てんかん・けいれん発作 脳内に腫瘍が発生すると、けいれん発作を起こすことがあります。特に、脳浮腫が強く頭蓋内圧がとても高まり、意識を失ったりけいれんが出現したりする場合は治療を急ぐ必要があります。 けいれんは、手足のガクガクブルブルといった震える症状だけをさすものではありません。急にことばが出なくなること、急に笑ったり舌を動かしたりするような顔の動き、意識を失うことなど、さまざまな症状も見られます。けいれん発作を繰り返すものをてんかんと言いますが、脳腫瘍が発生した部位に関係なく起こる可能性のある特徴的な症状といえます。 大人になってから初めてけいれん発作があれば、脳腫瘍を疑って頭部画像検査を行うことが勧められます。

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