『カオスゼロナイトメア』は絶望に抗う姿が痛ましくも美しい。『エピックセブン』開発元が手掛ける新作は、闇も奥も深いデッキ構築ローグライトRPG【先行プレイ】

 『カオスゼロナイトメア
』――。これは、すべての絶望(カオス)をゼロにするための計画“カオスゼロプロジェクト”に身を投じる者たちの物語である。 このゲーム、眉目秀麗、かっこいい・かわいいキャラクターたちがたくさん出てくる……のだが、なんだか様子がおかしい。
※この記事は『カオスゼロナイトメア』の提供でお送りします。
 本稿では先行プレイの様子をお届けするが、先にはっきりと書いておこう。制作スタッフは間違いなく拗らせた変態だ(褒め言葉)。

 システムのひとつにキャラクターが極度のストレスに晒されると、

過去のトラウマが蘇り精神が“崩壊”状態になってしまう
という要素がある。これはゲーム中のバトルにおける弱体化でもあり、ストーリーの演出としても登場する。戦いの場である“カオス”と呼ばれる空間は、精神への影響が甚大らしい。 この“崩壊”状態、キャラクターごとに背景となるトラウマが異なる。そして、取り乱しかたも違う。敵を前に“現実逃避”を始めたり、“衝動”に突き動かされたり、“ぼんやり”として気力をなくしてしまったり、“罪悪感”に押しつぶされてしまいそうになったり……
強大な敵と対峙し、「勝て、ない……」と絶望に染まってしまうことも。
 脅威に立ち向かう限り、彼・彼女たちはぎりぎりの精神状態に追いつめられる。その追い詰めかたに、並々ならぬ情熱を感じる
のだ。

 『カオスゼロナイトメア』は“選択が導くカオスループRPG”と銘打たれた、ローグライトデッキビルディングRPG。開発は『

エピックセブン
』で知られるSUPER CREATIVE、運営をSmilegateが手掛ける。対応機種はiOS 、Android、PC (STOVE)で、サービス開始時期は2025年内を予定。 スペースミステリーを基盤としたダークファンタジー風世界で、物語を包み込むのは“絶望” 。超常の災害によって窮地に陥った人類は、皆トラウマを抱えながらも懸命に戦っているという状況だ。 そんな本作には、闇の深い描写やデッキ構築型ローグライト、それからTRPG(CoC)などに見られる探索やダイスロール的ランダム要素など、けっこうコアなゲーマーが喜ぶ要素が込められている。
登場する敵キャラもおぞましく、精神をゆさぶるようなデザインが秀逸。
 一方でカジュアルに楽しめるキャラクターの育成要素、放置&箱庭要素もあるため、幅広い層が楽しめそう。とにかく、インパクト絶大なビジュアルに少しでもビビっときたら、ぜひ触れてみてほしい。なお、テストバージョンでのプレイとなるため、今後の正式リリース版と仕様が異なる可能性があるのは留意してほしい。
 バトルはデッキ構築型のRPG。まず重要なのは以下の4点。バトルはカードを選択して行動を決定していくスタイルだ。
  1. HPゲージ:緑色のゲージ。ゼロになると失敗に
  2. ストレスゲージ:紫色のゲージ。最大になると“崩壊”状態になる
  3. 選択中のカード:画面下部に表示されたカードをタップorクリックで詳細を確認できる。対象にフリックorドラッグで発動。左上の数字がコスト。
  4. アクションポイント:カードを使用できるポイント。
 加えて、エゴスキル(必殺技)や敵の行動カウント(カードを使用する度に減り、0になると攻撃してくる)などを確認しながら戦い、敵の体力をすべてなくすと勝利。カードの使用順が重要な戦略的バトルを楽しめる。 そのなかで、かなり印象的だったが“崩壊”と呼ばれる精神異常状態。“崩壊”状態のキャラクターは使える手札が“崩壊カード”だけになり、一時的に戦力外となる。
 この“崩壊”時には、キャラクターがふだん見せない内面や、隠された過去が明らかになる演出が用意されている。

 キャラクターの悲痛な叫びや茫然自失した姿は心にくるものがある。それと同時に、

“見てはいけないものを見てしまった感”もあり、「あの子がこんな表情を……」みたいなギャップを魅せることへの強いこだわりを感じる。隠されたものがあらわになるとどうなるのか、つい気になってしまうのだ。
勤勉な優等生・ミカ。いつもしっかり者の彼女が力なく笑いはじめる姿は、かなり痛ましい。
 もちろん、ただ露悪的というわけでは断じてない。トラウマを乗り越える(バトルでは“崩壊カード”を使い切る)ことで戦線に復帰し、メリットを得られる。曇らせ要素はあっても最後に晴れるからいいのだろう。
“崩壊”から立ち直ると、スキルコストが減るといったメリットも。表情も晴れやかになり、ひと安心。
 そしてなんといっても、いちキャラクターの差分が多い。いわく、SUPER CREATIVEが開発を手掛けたなかでも“アセットボリュームが最大級”になっているという。 細部まで作り込まれたビジュアルは魅力的で、2DイラストやSDキャラ、アニメーションがシームレスに演出として連携。全体的にキャラの魅せかたはとくに力が入っているように感じた。
アニメーションも多彩でよく動き、カットインとSDキャラのつなぎがイイ。
 ゲームシステムは、カジュアルにプレイできるローグライトRPGに、戦略性の高いデッキビルディング要素を融合したものである。
  • ガチャでキャラを引き、育成素材で強化
  • くり返しプレイするカオス領域(ダンジョン)でキャラクター固有のデッキを構築していく
 キャラクターは“救出”(ガチャ)から入手でき、パーティに編成する“戦闘員”と装備アイテム的な“パートナー”の2種類が排出される仕様だ。 80回以内に最高レアリティが排出され、ピックアップキャラクターが獲得できなかった場合(いわゆる“すり抜け”)、次回排出でピックアップキャラクターが確定する仕組みとなっている。
スマホRPG的な育成要素はレベルアップ、昇格(レベル上限解放)、潜在力(追加能力の獲得)、限界突破(同一キャラクターの重ね)といったおなじみの要素。
 一方、ダンジョンに挑戦して手に入ったアイテムおよび汎用のカードを、キャラクターごとに保存しておく“セーブデータ”機能は本作ならではの要素。デッキ構築を取り入れ、基本ステータス以外にも強さを盛れる仕組みだ。 ダンジョンでは、枝分かれするエリアを進んでいき、深層のボス撃破を目指す。道中でキャラクターが獲得したものは“セーブデータ”として持ち帰り、次回の出撃に持ち越せるようになるため、徐々にキャラクターが強化されていく……という流れだ。
 キャラクター固有のカードは、最初から持っている“開始カード”のほか、ダンジョンでのバトル中に“ヒラメキ”が起きるなど、プレイ中に獲得できる“固有カード”が各4種ほど存在する。キャラクターによってさまざまな相乗効果が存在するため、装備アイテムや汎用カードとの兼ね合いも考えると、理想的なデッキを構築するのはかなりやり込み甲斐がありそうだ。
キャラクターの頭上に電球マークが付いているとき、光っているカードを選択することで“ヒラメキ”が発生。
道中では汎用カードも入手でき、キャラクターのデッキに入れることができる。
 先行プレイでお世話になったキャラクターのひとり、トレサは“苦痛”という、ターン終了時に追加ダメージを与えるデバフを付与しながら戦うキャラクターだった。“苦痛”の付与数を、トリガーに発動する追加能力などを駆使してダメージを出していくアタッカーだ。 短剣を投てきして戦うトレサは、不運に苦しむ少女。いつも表情が暗いがその後ろ姿はかっこいい。こういう子は幸せになってほしい……!
 ダンジョンの中では、ダイスロールによるランダム要素や、カードなどを対価として支払うことで何かしらのメリットを得られることも。インディーゲームなどでも大切にされている、“ちょっとしたアナログ感”のある雰囲気がいい。
 この世界における背景を説明しよう。 人類が住んでいた地球は、突然発生した黒い霧“カオス”によって壊滅の危機に陥り、わずか36時間で脱出を余儀なくされる。 そして、地球を皮切りに宇宙全域で連鎖的に発生したこの事態により、大部分の惑星は生命が住めない不毛の地に。 各惑星で生存した者たちはそれぞれの箱舟で文明を築き、カオスの危険と隣り合わせの生活を送っている……という流れだ。 さまざまな惑星をルーツに持つ多種族が、宇宙で謎の超常現象と向き合う。そういったシリアスな状況で物語が展開される。
 先述の“崩壊”演出があるように、登場人物はみんな癒えぬ傷――トラウマを抱えて生きており、世界は絶望で満ちている。 ただし、暗い要素ばかりかというと、そうでもない。たしかにたいへんな状況下だが、この世界で生きる者たちは、脆くもたくましい。ストーリーではコミカルなやりとりもあるし、キャラクターに愛着がわくようなサイドコンテンツも枝分かれするように多数用意されている。
 プレイヤーは、カオスに立ち向かうための非常に重要な存在として関わっていくことになる。そのなかでも、知的生命体の精神を崩壊させてしまう“カオス”への耐性を活かして、実際に前線に立つ戦闘員たちのケアをすることが、重要な役割のひとつである。 ゲーム中では、ダンジョンでの戦闘に敗北した場合など、やられてしまったキャラクターが“ディープトラウマモード”という状態になってしまうことがある。
この状態では大きく弱体化し、編成に入れて活躍させることが困難に。
 そこで、プレイヤーが取れる手段が“カウンセリング”だ。精神的不調を訴える仲間と話して、適した会話選択肢を選んでいくミニゲームである。不安を取り除いてあげることで弱体化が解除されるほか、より強い信頼関係を築くことができる。 “カウンセリング”を始めると最初は不安そうにしているものの、プレイヤーとの会話で解きほぐされ、本来の調子を取り戻していく。この役割は“ファースト(プレイヤーのこと)”ただひとりにしか担えないもの、とされている。 傷を抱えながらもがんばるキャラたちを支えられるのは自分(あなた)だけ、ということなのだ。プレイしていて「ぜったい幸せにしてやるからな」と使命感がわいてくる。
信頼度自体はアイテムをプレゼントすることでも上げられる。
 この要素は、信頼度が上昇するという数値的なメリット以上に、“失敗することが悪いことばかりでない”という、本作ならではのトラウマ克服システムだ。 困難をいっしょに乗り越えていく感覚がプレイ体験として得られるようになっていて、筆者にはそれが非常に刺さった。だからなのか、短い期間の試遊であっても彼女たちキャラクターにはかなり愛着が湧いていた。 自分は、ダンジョンへの挑戦でレイを酷い目にあわせてしまった負い目があったのだが、それでも懸命にがんばる彼女を見ていると好きになってしまっていた。 レイはいつも朗らかな少女だ。まだ学生の身でありながらも、暗黒物質を操る異能力“暗黒凝集”を活かしてみんなを守りたいと願うやさしさを持っている。
明るく積極的なレイ。独特な感性の持ち主で、不思議なマスコット“ココ”をいつも身に着けているようだ。
 自信たっぷりの表情をしている彼女だが、過去のトラウマから一度“崩壊”状態になるとパニックに陥ってしまう一面も。膝から崩れ落ち、目を回す彼女の姿にふだんの明朗さは微塵もない。“崩壊”時には「来ないで…!」とつぶやく彼女の抱えるトラウマはなんなのか……知りたいと思ってしまうと同時に、なんとしても支えてあげたいと思うのだった。
 本作には美麗な2Dイラストが目を惹く、多彩なキャラクターたちがまだまだいる。男女、さまざまな種族が登場する。資料を見ていてとくに印象に残ったのはこの3人だろうか。今後どのように関わるのか気になるところだ。
なんでも引き受ける解決事務所の無骨な獣人・ヒューゴ。
謎多き男・カイロン。『エピックセブン』の同名キャラクターとの関連性は……?
 紋切り型の育成要素だけでなく、徐々に強くなっていくやり込み甲斐バツグンのデッキ構築ローグライトがあわさった『カオスゼロナイトメア』。膨大なアセット数が実現させるリッチな演出も相まって、新作タイトルでもしっかりのめり込ませる手ごたえを感じた。 なにより、綺麗なところだけを描かないキャラクター造形が、ひとりひとりの魅力を引き立たせている。“トラウマを克服する”という要素がゲームシステムに違和感なく落とし込まれているおかげで、愛着がわきやすいのがうれしいところだ。 2025年9月2日からは、いわゆるクローズドベータテストである“特別先行テスト”の募集もスタート。東京ゲームショウ2025にも出展予定なので、ダーク系の作風や、キャラクターの二面性のギャップに惹かれる人はぜひ触れてみてほしい。
■【カオスゼロナイトメア】アニメーションPV

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