【山田祥平のRe:config.sys】バッテリは消耗品というやるせないモヤモヤ
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電子デバイスを駆動するために必要なバッテリは、多くの場合、デバイス内部に実装され、そう簡単には取り出せないし、交換も難しい。だからバッテリの寿命はデバイスの寿命に等しい。それが今の当たり前だ。
VAIOがバッテリ保証サービスを最新PC全ラインアップに展開するそうだ。個人向けは3年以内に80%以下の場合、法人向けで4年以内に60%以下の場合に、バッテリを無償交換する。
対象となるのは今年2026年2月1日以降に販売された法人/個人向けPC全ラインアップだ。購入から指定年数以内に満充電容量が規定値以下の場合に、バッテリを無償交換するという。
同社によれば、この取り組みは、2025年暮れからノジマ店舗限定で実施してきたもので、それが多くの顧客に好評だったことから、そのサービスを全国に拡大することになった経緯がある。1年を超えるバッテリの経年劣化までを対象とするメーカー標準保証は日本初の施策であり、VAIO独自の設計技術によって実現されている。
個人向けの場合、最新のVAIOの設定アプリを使ってバッテリ状態を判別し、該当することが確認できた場合、保証対象のPC本体と、購入時のレシートなど購入日が確認できるものを用意し、購入日から3年以内にVAIOサイトのサポートページからフォームで申し込む。PC本体を預け、VAIOの修理拠点での交換修理が必要だ。
バッテリを容易に交換できる機構を頑固に守り続けるPCとしては、やはりレッツノートが有名だ。現行の全製品でバッテリパックの取り外しができる。バッテリは直販サイトや家電量販店などで、消耗品として入手が可能だ。これによってサービスに預けることなくエンドユーザーが交換可能であると同時に、複数のバッテリを用意しておき、予備として使うようなスタイルでの利用もできる。
そして、このことは数年使ったPCでも、バッテリさえ交換すれば新品同様ということになり、レッツノートのリセールバリューの高さにも貢献している。もっとも、以前は、底面のラッチを操作するだけで、工具なしでの交換ができたが、現行機種ではドライバが必要になったりもしている。
VAIOが「VAIO独自の設計技術によって実現されている」というように、こうしたサービスを提供できるのは、保守性を考慮した設計によるところが大きい。修理拠点での工数を極限まで減らす工夫は、内部設計が重要だ。
かつてのモバイルノートPCは、バッテリを強力な両面テープや接着剤で筐体に固定していることも少なくなかった。バッテリの交換時には溶剤を使ったり、物理的に剥がす手間がかかる。これがネジ固定であればボトムカバーを開ければ数本のネジを外すだけでバッテリユニットを外せる。組み立てやすさとバラしやすさを両立させる設計思想によって、低コストで充実した保証サービスを提供できるというわけだ。
また、重層構造を持つ設計では、バッテリの交換に、フレキシブルケーブル、場合によってはマザーボード基板そのものを外さなければならないケースもある。最近の各社の製品を観察すると、ボトムカバーを開くとバッテリ全体が露出し、ほかのパーツがバッテリ交換の邪魔をしないようにレイアウトが整理されていることが多いのに気がつく。バッテリ交換の工程は熟練した専門家であれば数分で完了できるレベルになっているようだ。
こうした見えない部分でのメンテナンス性の高さは、その製品の手厚い保証サービスをビジネスとして成立させるための重要な要件と考えられている。
レッツノートは薄型化、軽量化の邪魔になることは分かっていても、物理的な交換機構を残すという思想で作られてきた。修理の必要もなくエンドユーザーが交換できればダウンタイムもない。ビジネスPCとしてはそこが重要だ。セキュリティ確保のために、修理に出す際、いったんストレージをまっさらにするといった手間はかけていられない。だが、VAIOは内蔵を選んで保証サービスでカバーする思想だ。どちらがいいのかは、使い方や価値観によって答えが変わるだろう。
もっともレッツノートも最新のSCやFCシリーズではラッチによる着脱機構を廃止して、ネジ固定式に変更されている。それでもエンドユーザーはプラスドライバ1本で簡単にバッテリパックを交換できる。ラッチ機構では部品点数が多くなってしまい、筐体内部のスペースと重量をそれなりに占有していたが、これをネジ固定という単純な構造に切り替えることで、筐体のさらなる薄型化、軽量化にチャレンジした結果だ。それでもパナソニックとしてはバッテリをユーザー交換可能部品として扱い、予備バッテリの単体販売も継続し、工具は必要だが修理に出す必要はない。
バッテリ交換についてはDynabookやFCCLのFMVなどにおいても近年のモデルで、エンドユーザーによるバッテリ交換を公式にサポートする動きがある。
たとえばDynabookはセルフ交換式で、内蔵バッテリをドライバ1本で交換できる。また、FMVも一部のモデルでセルフ交換バッテリを提供している。底面パネルにあるラッチをずらすだけでカバーが開き、手前を持ち上げるだけで簡単にバッテリパックを取り外すことができる。もちろんPCを預けて修理扱いにする必要はない。
これらの方法でバッテリを交換できれば、たとえば、エンドユーザーの使い方スタイルに応じて大容量バッテリと軽量バッテリを選択し、使い分けるといったこともできる。
その一方で、こうした方法ではなく、ユーザーが交換しても保証が継続する部品としてバッテリを位置付け、メーカーがユーザー自身による分解/交換を公式にサポートし、マニュアルと部品を提供するThinkPadのような製品もある。純正バッテリ単体を誰でも公式ルートで購入できるのは量販店在庫のパーツを簡単に入手できるレッツノートほどではないにせよ交換のハードルは低い。
もっとも薄軽とメンテナンス性はトレードオフだともいえる。どこかで妥協しなければその恩恵は手に入らないということか。
こうした問題は、PCだけに限った話ではない。ノートPCのように20万円を超えることも珍しくないデバイスは、満充電にしても数分でバッテリがダウンするといった段階まで使い続けるエンドユーザーもいるようだ。これが価格レンジで数万円になる完全ワイヤレスイヤフォンなどのデバイスはどうだろう。数万円という価格帯は微妙なラインだ。修理するとしても往復の送料と工賃、部品としてのバッテリ代などを考えると新品を購入した方が手っ取り早いという面もある。
一部のメーカーでは、ユーザー自身が工具なしでバッテリ交換可能なイヤフォンもあるようだが、防水防塵のことやデバイス構造と軽量化的な側面からは、イヤフォンのバッテリをエンドユーザーが交換可能という製品はほぼ見当たらない。つまり、バッテリの寿命はイヤフォンの寿命と同じなのだ。お気に入りのサウンドを奏でられるように時間をかけて鳴らして慣れたのに、バッテリの寿命とともにお別れとなる。
このテーマに対してサービス的な合理性を提供するメーカーもある。
たとえばAppleでは、AppleCare+ for Headphonesが提供されている。有料のサービスだが、それに加入していれば、保証期間内に本来の80%未満に低下した場合無償交換サービスを受けることができる。
ただし交換されるのはイヤフォン本体(左右ユニット)や充電ケースなどのユニット丸ごとだ。高度に密閉された設計で分解して再度組み立てることが難しいゆえの対応だともいえるが、せっかく慣らしが終わり快適なサウンドに成長したユニットが新品に戻ってしまうというのもモヤモヤする。少なくとも使い手にしてみれば、慣れ親しんだ音が失われたように感じてしまう。
購入から数年で数万円のイヤフォンのバッテリがへたるわけだが、完全ワイヤレスイヤフォンの進化もすさまじく、数年なら買い替えても満足できる結果が得られるかもしれない。電源のいらない有線イヤフォンに戻れるかといえば、それも難しいだろう。
我々は、同様のことをスマホでも経験してきた。スマホもかつてはバッテリ交換が簡単だったが、今では、エンドユーザーではとてもできそうにない内蔵式に変わっている。ただ、修理体制とバッテリユニットの価格はかつてよりもリーズナブルになりつつある。スマホの買い換えサイクルが長くなってきている今、業界としても対応しなければならない課題だったといえそうだ。
それでもやっぱりモヤモヤする。サステナビリティって何だろうという疑問につきあたりもする。イヤフォンの内蔵バッテリを交換可能にしても、いったん開けてまた閉じれば、防水防塵機能などに影響が出るかもしれない。それはスマホも同様だ。PCなどとは利用シーンも異なるだけに難しい問題だ。
バッテリは消耗品。この当たり前はいつまで続くんだろうか。