インドネシア、議員に対する高額手当を廃止-抗議デモの収束目指す
インドネシアのプラボウォ大統領は、国内各地に広がる抗議デモの沈静化を図るため、国民の怒りを買っていた議員の高額手当を国会が廃止することを明らかにした。一方、暴力的なデモ参加者には厳しい対応を取ると警告した。
プラボウォ氏は31日、大統領府で演説。政党指導者らも同席する中、「政府は国民の懸念に耳を傾け、行動する」と発言。国会は議員による海外視察も一時停止し、各政党も不祥事を起こした所属議員に厳しい処分を下すと述べた。
生活費の高騰や格差への不満を背景とした抗議デモは週末に激化。政府機関の建物が放火され、財務相や議員の自宅が略奪者の標的になったとも報じられた。プラボウォ氏は30日、予定していた中国での上海協力機構(SCO)首脳会議への出席を取りやめた。1週間に及ぶ抗議デモに対する懸念が強まっていることが浮き彫りとなった。
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デモの発端となったのは、国会議員に支給される住宅手当だ。最低賃金の10倍近い額が支給されており、これが国民の怒りを買った。さらに増税や大量解雇、インフレが低所得層を直撃し、事態を悪化させた。抗議活動中にバイクタクシーの運転手が警察の装甲車にはねられて死亡したことも、緊張を一段と高める要因となった。
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プラボウォ氏は「政府を信頼し、冷静さを保つよう国民全員に呼び掛けたい」とし、「私の政権は、社会的に最も弱い立場にある人々も含め、常に国民の利益のために闘う決意だ」と語った。
31日には暴徒がジャカルタ近郊のムルヤニ財務相の住居に侵入したが、武装した部隊によって撃退された。またデティック・ドット・コムが報じたところによれば、国会議員を含む3人の自宅から物品が持ち去られた。財務省にはコメントを求めて連絡を取ったが、これまで返答を得られていない。
米国や日本、オーストラリア、シンガポールなどの在インドネシア大使館は自国民に対し、群衆や抗議デモのエリアを避けるよう呼び掛けている。
警察の報道官は31日、無秩序な行為には通常の手続きに基づき「断固かつ慎重」に対応するとしつつ、それはあくまで「最後の手段」であり、可能な限り回避したいと述べた。ジャカルタ警察は市内警備に300人余りを配備するとしている。
ガマ・アセット・マネジメントのグローバル・マクロ・ポートフォリオマネジャー、ラジーブ・デメロ氏は、「極めて憂慮すべき」状況だと指摘。「この混乱は通貨ルピアやインドネシア資産全般のボラティリティー上昇につながるだろう。市場は政治リスクと政策の継続性の両方を改めて精査している」と述べた。
原題:Indonesia Revokes Lawmaker Perks as Prabowo Tries to End Unrest(抜粋)