自治体が求めた外出容認時間などは示されず 「屋内退避」の報告書案
柏崎刈羽を含む原発での重大事故の際、5~30キロ圏内のUPZ(避難準備区域)の人々が求められる「屋内退避」の運用について、原子力規制委員会の検討チームによる報告書案が5日、示された。雪下ろしや生活物資の受け取りなど「生活の維持に最低限必要な一時的な外出」は認めるとされたが、「具体的な範囲を一律かつ網羅的に示すことは困難」として、細かな内容や容認される時間などは明示されなかった。
新潟県内には柏崎刈羽原発のUPZに約40万人の住民がいる。今回の報告書案が事故時の対応への不安の軽減につながるかは、はっきりしない。
原発事故が深刻化し、放射性物質放出の可能性が高まる「全面緊急事態」の段階に入ると、5キロ圏内のPAZ(即時避難区域)の住民には、30キロ圏外への避難が指示される。一方、UPZの住民は避難ではなく、自宅や避難所など室内にとどまる屋内退避を行うとされている。
ただ、屋内退避をいつまで続けるか、など運用上のルールが定まっていなかったため、規制委は昨年4月から有識者を交えた検討チームをつくって論議を続けていた。
これまで屋内退避は、単に「室内にとどまる」というイメージを持たれていた。昨年秋、関係する自治体に運用していく上での意見を求めたところ、複数の自治体から屋内退避中の一時的な外出や、医療・介護サービスや商業といった社会経済活動がどこまで許容されるか、などについての考えを国に求めたいとの意向が示された。
報告書案は一時的な外出について「生活の維持に最低限必要なもの」を容認する考えを示し、一緒に公表された自治体向けの「Q&A集」案で、物資の受け取りや雪下ろしを代表例として示した。自治体からは「外出をするタイミングや被曝(ひばく)対策、外出時間の基準などを整理してほしい」との意見も出されていたが、具体的な数値などは示されなかった。
また、屋内退避中の社会経済活動に関して、自治体からは「食料や生活必需品などを提供する店舗(スーパー、コンビニエンスストアなど)」「タクシー、バスなど公共交通機関」の営業の継続が必要との意見も寄せられていた。検討チームは屋内退避を支えるライフラインや医療などを担う事業者の活動は「外出を伴うものでも継続が期待される」との考えを示した。「代表例」では医療機関や調剤薬局の営業などが例示されたが、スーパーやコンビニ、タクシー、バスは含まれなかった。
検討チームは今後、再び自治体から意見を募り、最終案をまとめる予定だ。柏崎市の担当者は「屋内退避とはどのようなものか、住民の皆さんに自分事として考えてもらうことが重要。さらに理解してもらうために、どのようなことが必要かを考えて意見を出したい」。別の市の担当者も「報告書案とQ&A案を詳しく見たうえで検討したい」と語った。
◇
検討チームが示した「一時的な外出」の代表例
・生活に必要な物資の調達のための外出
(国や自治体から供給される物資を受け取るため、避難所など指定された場所に行く)
・生命に関わるような緊急性の高い医療を受けるための外出
(透析治療や重篤な病気のための外来受診。その際に処方された医薬品の購入)
・屋内退避を継続できる状態を維持するための外出
(積雪で家屋倒壊のおそれがある場合の雪下ろしや、出入り口周辺の除雪作業)
◇
検討チームが示した「屋内退避中でも継続が期待される活動」の代表例
・食料品などの生活物資や燃料の輸送
・避難道路の啓開、復旧作業や除雪作業
・ライフライン(電気、ガス、上下水道、通信など)の復旧作業
・医療施設での入院患者の診療、救急や透析治療、緊急時の往診、訪問看護、調剤薬局の営業
・介護施設や社会福祉施設の運営や訪問介護