ロシア産原油輸送のタンカー、中国沖合での滞留が増加-米制裁強化で
- 滞留原油は約400万バレル、タンカーの4隻は米国が制裁対象
- 状況さらに悪化の見通し、瀬取りや小規模な港の利用増えるとの見方
中国の沖合に滞留する石油タンカーが増えている。ロシア産の石油に米国がこれまでで最も厳しい制裁を科したことで、制裁の影響を恐れて商社や製油業者、海運関連企業がロシア産の石油を敬遠している。
ブルームバーグと分析会社ケプラーの船舶追跡データによれば、ロシア極東から合計約400万バレルの東シベリア・太平洋(ESPO)原油とソコル原油を積んで出航したタンカー5隻が、中国の領海で滞留している。5隻は本来、引き渡しを既に終えている予定だった。5隻のうち4隻は、米国が制裁対象に指定した。
バイデン政権は10日、180隻余りのタンカーや商社、保険会社などに制裁を科すと発表。これ以降、ロシア産石油の取引に関連する企業は、解決策を見いだそうと慌てて動いている。制裁が発効するまでの猶予期間にこれらのタンカーの原油を荷揚げすることは可能だが、独立系製油業者の拠点となっている中国・山東省の多くの港では、主要港湾運営会社の警告を受けてロシア産原油の取り扱いに慎重になった。
制裁への対応で、石油を洋上で別の船に移し替える「瀬取り」や小規模な港の利用が増える可能性があると、海運仲立業者らは指摘。ロシア極東から運ばれる原油は比較的安価で輸送時間が短いことから、中国の小規模製油業者に人気がある。
一方、中国の国有石油会社や民間の製油大手はロシアとイランに対する制裁強化を受けて短期的に原油供給が細る可能性に備え、中東産などの原油確保を急いでいる。
中国の沖合に滞留する原油の量はここ数日でほぼ倍増し、目先は増加が続く見通しだ。現時点で滞留する約400万バレルには、追跡データによってESPO原油の瀬取りを最近行ったことが確認された超大型石油タンカー「メードスター」の分は含まれていない。今後数日では、さらに3隻がESPO原油を中国で荷揚げすることが予定されている。
船名 IMO 出港地 (油種) 船積日 現在値載貨重量
(千バレル)
備考 Olia 9268112 Kozmino (ESPO) Jan. 7 中国・煙台沖 709 中国沖で滞留。タンカーは米制裁対象 Mermar 9231212 Kozmino (ESPO) Jan. 5 中国・竜口沖 755 中国沖で滞留。タンカーは米制裁対象 Altair 9413547 Kozmino (ESPO) Jan. 2 中国・恵州沖 744 中国沖で滞留 Huihai Pacific 9346732 Kozmino (ESPO) Jan. 4 中国・青島沖 770 中国沖で滞留。タンカーは米制裁対象 Viktor Titov 9301407 De-Kastri (Sokol) Jan. 4 中国・青島沖 699 中国沖で滞留。タンカーは米制裁対象 Madestar 9289726 韓国・麗水付近で瀬取り Jan. 9 青島・日照沖 N/A 別のタンカーに1月5日ごろ積み荷を移し替え。現在の目的地はインドと示唆 Nichole 9332822 Kozmino (ESPO) Jan. 11 中国・連雲港に向け航行中 741 15日入港予定 Olympus 9511387 Kozmino (ESPO) Jan. 10 中国・青島に向け航行中 762 17日入港予定。ロシア海運大手ソフコムフロート保有のタンカー Tai Shan 9405057 Kozmino (ESPO) Jan. 12 中国・青島に向け航行中 769 16日入港予定原題:Russian Crude Oil Piles Up Near Chinese Coast After US Sanctions(抜粋)