イラン最高指導者“暗殺”に「Claude」投入の衝撃…軍事AIが迎えた、ヤバすぎる新時代(ビジネス+IT)
2月28日、米軍とイスラエル軍はハメネイ師を軍事行動によって殺害した。 軍事行動による特定人物の殺害は、通常の軍事行動にはない困難さを持っている。攻撃目標がいつどこにいるのかを正確に特定するのが極めて難しいからだ。戦場で攻撃対象を目視できたり、所在地がわかっている特定の軍事施設を攻撃するのとは本質的に違う。 今回、特定人物を殺害できたのは、事前に情報機関がハメネイ師や高官らの動きについて情報を収集していたからだ。通信網や携帯電話システムに侵入し、個人の移動を把握していたと報じられている。さらに、主要当局者を担当するボディーガードの追跡も行われていたとされる。 こうした方法によって、長い時間をかけて「生活パターン」を把握し、活動を予測できるようになった。さらに、攻撃に弱い時間帯を探ることも可能になった。
一方、イラン側は、ハメネイ師が軍事行動の標的にされていることを認識していた。それにもかかわらず、これまで数カ月間、そのような脆弱性に対処することができなかった。 イランの治安・防諜機関が重大な失敗を犯したか、あるいはイスラエルと米国が追跡方法を絶えず更新して新しい追跡方法を採用していたことが考えられる。また、日中の攻撃の可能性は低いと、イランが見ていた可能性もあると報道されている。 計画は、単に指導者1人を暗殺するのではなく、その攻撃を合図に、より広範な作戦を開始するというものだった。そして、好機を捉えて前倒しで実行された。 攻撃実行の決定を受けて、イスラエル軍機は現地時間午前9時40分ごろ、標的の施設を攻撃したとされる。標的に確実にダメージを与えるに、十分な深さまで掘り進む複数の兵器が必要だった可能性がある。 襲撃は、真夜中に行われると想像しがちだ。しかし、実際には、朝に実施された。それは、米国とイスラエルがその数時間前に重要な情報を手に入れ、それを活用することにしたからだ。 米国・イスラエル両国は、何カ月もかけて、イランの高官らが集まる好機をうかがっていた。そして、ハメネイ師が2月28日の朝に首都テヘラン中心部の施設に滞在する予定だと知った。両国はまた、同じ時間に開かれる軍や情報機関の幹部会合の位置も特定していた。
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AIの軍事利用に関しては、これまで、「自律型致死兵器システム(LAWS)」の問題として、国際的に議論が行われてきた。LAWSとは、一度起動すれば、操作者の介入なしに標的を識別し、選択し、交戦することができる兵器システムだ。 たとえば、ドローンが自律的に編隊を組んで空母を攻撃するといったものだ。あるいは、ロボット兵士が武器を携行して自律的に進軍するようなものだ。 LAWSにおいては、自動車の自動運転の場合と同じように、AIと言っても主としてパターン認識機能を用いる。 それに対して、本稿でこれまで述べてきた問題は、これとは性格が違う。ここで用いるのは生成AIなので、データ分析が中心になる。 データ分析の利用にとどまるという意味では、AIが直接的に破壊や殺人を行うのではない。だから、自律的な兵器の範囲には入らないだろう。ただし、広い意味での軍事的利用であることは間違いない。 AIの軍事利用は、新しい段階に入ったと考えることができる。
執筆:野口 悠紀雄