欧州ガス先物が大幅上昇、ロシア産ガスのウクライナ通過契約は失効へ
欧州の天然ガス先物価格が1年2カ月ぶりにメガワット時当たり50ユーロを超えた。ロシアがウクライナと結んでいたガス通過契約が31日で失効し、ウクライナを経由したロシア産ガスの欧州向け供給が途絶えるとの見通しが背景にある。
ウクライナのガス輸送網運営会社が発表したデータによると、ウクライナを通過するロシア産ガスの拠点となっているスジャでは、1月1日のガス輸送注文がゼロとなっている。注文状況はまだ更新される可能性もある。
ウクライナ経由は、数十年にわたってロシアがガスを欧州に輸出する主要ルートであり続けたが、両国が結んでいた5年間の契約が切れる中部欧州標準時間(CET)1月1日午前6時に、パイプラインの稼働は停止する。この契約を巡る政治論争は数カ月続いていたが代替措置はとられず、輸送停止が目に見える形で価格に表れている。
目下の問題は、この停止が永続的なものになるかどうかだ。世界のガス市場の需給はひっ迫しており、輸送停止が恒久的なら欧州はその影響を被る。今回失われるロシア産ガスはEUのガス需要全体の約5%に過ぎないが、ロシアのウクライナ全面侵攻がもたらしたエネルギー危機の衝撃を欧州はまだ引きずっており、欧州の今年のガス在庫の取り崩しペースは例年よりも速い。
欧州の指標ガス価格は2024年に入り55%上昇し、21年以降で最大の上昇率。アムステルダム時間31日午後5時過ぎの時点で2月限先物は4.5%高のメガワット時当たり50.04ユーロと、23年10月以来の高値に達した。
EU当局者はこれまでに、ロシアのガス通過契約が失効しても欧州のエネルギー安全保障にリスクはなく、ロシア産化石燃料への依存から脱却する政治的な意思があると強調していた。EUは22年以降、エネルギー供給を多様化させ、米国産を中心に液化天然ガスの輸入を増やしている。
欧州委員会の報道官は発表文で、「1月1日のウクライナ経由のガス輸送停止は予想された事態で、EUはそれに備えている」と述べた。
ただ、スロバキアなど中欧諸国の一部は割安なロシア産ガスの供給が受けられる間はそれを望んでいる。ロシア産ガスを失っても対処は可能だとスロバキアは表明しているものの、同国にとって代替の供給は割高となる可能性が高い。
ウクライナを経由するガスパイプラインはスロバキアに入り、オーストリア、チェコに至るが、スロバキア以外の2国はロシアの国営ガス会社ガスプロムからのガス直接購入を既にやめている。
Sources: The Institute for the Study of War assessed areas of control as of Sept. 5; The Oxford Institute for Energy Studies
原題:Russian Gas to Europe Via Ukraine Set to Halt as Deal Lapses (1)(抜粋)