焦点:広がるドローンやミサイルの脅威、旅客機パイロットに大きな負荷

[ロンドン/コペンハーゲン/ベイルート 7日 ロイター] - 旅客機のパイロットは近年、ドローン(無人機)の侵入から紛争による飛行ルートの制限まで、エスカレートするリスクに直面している。中東での戦争勃発で空の危険はさらに高まり、パイロットへの圧力は増大しつつある。

現在、複数の世界最大級の空港の真上を、数百発の弾道ミサイルや攻撃型ドローンが飛び交う事態となっている。米国とその同盟国に対するイランの報復措置​には空港への攻撃も含まれており、ドバイからアブダビに至るまで多くの便が欠航を余儀なくされた。取り残された乗客数千人を運ぶ、わずかな救援便がようやく運航している状‌態だ。

パイロット8人、航空・セキュリティー専門家6人以上への取材から、ウクライナからアフガニスタン、イスラエルに至るまで、度重なる紛争がパイロットの負担を増大させている実態が浮かび上がった。自身と乗客の安全を守ろうと格闘するパイロットのメンタルヘルス(心の健康)には、かつてない負荷がかかっている。

中東での飛行経験を持つ、欧州パイロット協会のタニヤ・ハーター会長は「私たちは軍のパイロットではない。空中でのこのような脅威に対処する訓練は受けていない」と語る。

ハーター氏は、セキュリティー​上の脅威はパイロットに「恐怖と不安」を引き起こす恐れがあると指摘。現在、航空各社はパイロットを支援するためのピア・サポート(仲間による相談)プログラムを用意していることが多いが、​自身は「ミサイルと同じ空域を共有したくはない」と漏らした。

業界の専門家によると、過去2年半で空域の安全性は悪化している。紛争の拡大に加え、機体に誤っ⁠た位置情報を認識させる「GPSスプーフィング(なりすまし)」や、ミサイルおよびドローンの増加が重なっているためだ。

5日には、アラブ首長国連邦(UAE)に取り残されたフランス国民を運ぶエールフランス機がミサイル攻撃により引き​返し、6日にはルフトハンザ航空(LHAG.DE), opens new tabのパイロットが、地域のセキュリティー上の不安を理由に目的地をリヤドからカイロに変更した。

<ミサイル回避の高高度飛行>

レバノン民間航空局のムハンマド・アジズ局長によると、中東で訓練を受けたパイロ​ットらは緊急事態に「うんざりするほど」慣れ切っている。戦争勃発は彼らのスキルを即座に試すことになった。5日の映像には、ベイルートの建物から煙が立ち上る中、ベイルート空港から離陸する航空機が映っている。

アジズ氏は「中東のパイロットは常に危機に直面してきた。そのため、最初から不測の事態や緊急事態、あらゆるトラブルへの対処法を訓練している」と述べ、「空港が爆撃されない、と誰にも保証はできない」と続けた。

ミドルイースト航空のあるパイロットによると、ベイルートへの航路は過去に比べて​複雑化した。かつてレバノンで使用されていた携帯式対空ミサイルの射程は通常約4500メートルだったため、パイロットは射程圏外を維持するために高度を上げて飛行していた。目的地変更を余儀なくされた場合に備え、予​備の燃料を積んで飛行することも一般的だった。

とはいえ、ほとんどのミサイル攻撃は十分に距離のある場所で起きており、パイロットは忙しすぎてそれらを心配している暇がないことも多いという。「着陸許可の確認や準備が整っているかのチェ‌ックに追われ⁠ているため、機体の外で起きていることに対して感情を整理している時間はない」

The map shows sightings of drones and airspace violations in Europe by Russia, Belarus or unknown actors so far this year.

3月3日、ベイルートのラフィク・ハリリ空港から離陸する飛行機。REUTERS/Khalil Ashawi

<欧州の空港も混乱>

リスクは中東だけに留まらない。2022年のロシアによるウクライナ侵攻以来、ドローンは双方にとって主要な兵器となった。ストックホルムからミュンヘンに至る欧州各都市の空港は、紛争との関連が疑われるドローンによる混乱に直面している。

デンマーク航空パイロット協会のクリスチャン・フォンダーエ会長は「ドローンを検知するのは容易ではない」と言い「空中で目視することはできるが、非常に小さい。遅かれ早かれ、何かが起きるだろう」と警鐘を鳴らした。

ドローンが航空機のエンジンに吸い込まれれば全出力の喪失を招く恐れがあり、翼に損傷を与えれば機体の操縦性能が損なわれる危​険がある。

大半の登録機は、自機を識別させる装置「トラン​スポンダー」を通じて信号を発しているが、⁠ドローンはこれを発信しないため、パイロットは位置を把握できない。空港が使用する通常のレーダーではドローンの捕捉が難しく、専用のレーダーも存在はするが、通常は警察や軍によって運用されている。

対ドローン技術を開発するディドローン社によると、2025年に米国で確認されたドローンの違反行為は120万件余りで、今後数年さらに増加す​る見通しだ。

<成すすべ無し>

空港はレーダー、周波数センサー、ジャミング(電波妨害)ツールなどを用いてドローンに対抗することが可能で、ドローンを「スプーフ​ィング」で誘導してコースから⁠外すシステムも一部にある。しかし安全上の懸念から、空港がドローンを撃墜することはできない。

欧州航空管制官組合(ATCEUC)のティム・フリーベ副会長は、空港側が取れる選択肢は限られていることが多いと指摘。「現状はパイロットからの報告や、時には管制官の目視に頼っている。問題は、空港を閉鎖する以外にできることがほとんどないことだ」と語った。

昨年はミュンヘンやロンドンのガトウィックなど世界有数の空港がドローンによって閉鎖に追い込まれた。業界関係者らに⁠よると、これを機​に各空港の運営会社は、異物やドローンの検知システムの強化に乗り出している。

ドイツを拠点とする民間機パイロット、モリッツ・ブ​ルガー氏は、欧州の空港に着陸しようとした際、下部に構造物がついた風船のような物体を目撃した時のことを振り返る。「窓の外を見ていたら、突然、自機の下を通り過ぎる物体が現れた。見えたのはおそらく1秒、長くても2秒だった」といい、回避行動をとる余裕もなかったと付​け加えた。

同氏は「こうしたニアミスや通過する物体に遭遇したとき、反応する時間は十分にない。だからパイロットがそうした物体を避けて飛ぶことを期待するのは非現実的だ。我々にできることは無いと言っていい」と断言した。

Flights in the UAE

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Joanna reports on airlines and travel in Europe, including tourism trends, sustainability and policy. She was previously based in Warsaw, where she covered politics and general news. She wrote stories on everything from Chinese spies to migrants stranded in forests along the Belarusian border. In 2022, she spent six weeks covering the war in Ukraine, with a focus on the evacuation of children, war reparations and evidence that Russian commanders knew of sexual violence by their troops. Joanna graduated from the Columbia Journalism School in 2014. Before joining Reuters, she worked in Hong Kong for TIME and later in Brussels reporting on EU tech policy for POLITICO Europe.

Reuters bureau chief for Lebanon, Syria and Jordan.

Alessandro is an Italian journalist based in Gdansk reporting on European companies. Previously, he worked as a multimedia freelancer in South Africa covering general news and cultures.

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