米陸軍、アイアンフィスト搭載のブラッドレーを第1騎兵師団に配備
米陸軍は2024年5月にエルビット・システムズ製のAPS=アイアン・フィストを搭載したM2A4E1を公開し、BAEシステムズも2024年9月「A4派生型を含むブラッドレー追加生産の契約を締結した」と発表していたが、米陸軍の第1騎兵師団は5日「第9騎兵連隊にアイアン・フィスト搭載のM2A4E1が配備されている」と明かした。
参考:1st Cavalry Division Check out the newest Bradleys in the Army!
米陸軍は10年近くエイブラムス、ブラッドレー、ストライカーへのアクティブ保護システム(APS)統合を研究し、ブラッドレー向けのAPSにエルビット・システムズ製のIron Fist=アイアン・フィストを選択したが、ブラッドレーに統合されたオリジナルのアイアン・フィストは向かってくる脅威の50%にしか対応できなかったため、エルビット・システムズとGDは統合方法を大幅に変更、レーダーや光学センサーといった各要素の統合方向や調整もブラッドレー向けに最適化され、制御ソフトウェアにも手を加えたIron Fist Light Decoupled(IF-LD)を開発した。
出典:PEO Ground Combat Systems
この技術を何年もかけて成熟させた結果、米陸軍は「限りなく実戦に近い環境下で脅威の70%に対応できた」と、エルビット・システムズも「ロケット弾や対戦車ミサイルに対する保護能力を維持したままドローンにも対応できると実証した」と明かし、2024年5月にIF-LD、改良された前方赤外線照準装置、降車する際の熱を抑制する環境制御ユニットを統合したM2A4E1を公開して注目を集め、BAEシステムズも2024年9月「ブラッドレーを追加生産するため4.4億ドル以上の契約変更が確定した」「この契約には200輌以上のA4派生型が含まれる」と発表。
米陸軍は資金不足のため2025年会計年度のIF-LD調達を見送っていたが、M2A4E1公開時「我々はウクライナに提供したブラッドレーと同数のM2A4E1調達資金(装備を埋め戻すための資金)を受け取った」と明かしていたため、本契約はM2A4E1を調達するためのものと予想されていたが、米陸軍の第1騎兵師団は5日「第9騎兵連隊の第6大隊には乗員の生存性と能力を向上させるアイアン・フィスト搭載のM2A4E1が配備されている」「第82野戦砲兵連隊の第2大隊にも火力支援用のM7A4E1(M2A4E1のTOW対戦車ミサイルランチャーを観測・目標指示用のセンサーに変更したバージョン)が配備されている」と明かした。
出典:1st Cavalry Division
第1騎兵師団が公開した写真には複数のM2A4E1が写っているが、どれもM2A4E1公開時にあったアイアン・フィストのレーダーアレイや迎撃ミサイルのランチャーは搭載されておらず、これを搭載するであろうマウントしか確認できないため、アイアン・フィストは後日搭載なのかもしれない。
ちなみにイスラエルのメルカバMk.4、米国のエイブラムスM1A2 SEPv3、英国のチャレンジャー3、ドイツのレオパルト2A8、韓国のK2PLはトロフィーを採用し、それよりも軽量なアイアン・フィストはイスラエルの装甲兵員輸送車エータン8×8、米国の歩兵戦闘車ブラッドレーM2A4E1、オランダ、スウェーデン、フィンランド、デンマークなどが導入する歩兵戦闘車CV90シリーズに採用され、主力戦車は多重爆発成形侵徹体(MEFP)で脅威を直接無力化するトロフィーを、それ以外の戦闘車両はブラスト・インターセプター方式(爆風の衝撃波で脅威を無力化)を採用するアイアン・フィストを選択している。
トロフィーはアイアン・フィストよりも迎撃成功率や複数方向に対する同時対処能力が優れているが、システム重量が約800kgと重く、MEFP弾の破片・爆風に周辺の歩兵が巻き込まれるリスクがあり、アイアン・フィストはシステム重量が約400kgと軽く、ブラスト・インターセプター方式は破片の少ない設計なので周辺の歩兵に対するリスクも低く、日本の10式戦車もアイアン・フィストを選択した可能性が高い。
APSがFPVドローンなど戦場の新たな脅威に対応できるのかどうかは何とも言えないが、ウクライナの戦場ではロシア軍のT-72B3A(車両番号133)がアリーナMによるFPVドローンの迎撃に成功したと視覚的に確認され、ウクライナ軍の無人システム部隊に所属するKriegsforscherD(ハンドルネーム)という人物も「T-72B3Aと対峙したウクライナ兵士から聞いた話ではアリーナMは本当に機能している」「あるT-72B3AのアリーナMは7機のFPVドローンを破壊した」「T-72B3Aを1両破壊するのに概ね15機~20機のFPVドローンが必要になった」と証言。
@RALee85 and I had a conversation with one of the units that took part in that operation and saw whether that system effectively working or not. And, unfortunately, it works.
At one tank that system destroyed 7 FPV drones. In general it took from 15 to 20 FPV drones to destroy a tank (there were 7 of them).
— kriegsforscher (@kriegsforscherD) August 8, 2026
ジェーンズも映像を確認して「T-72B3AのアリーナMがFPVドローンの迎撃に成功した」と結論づけているが、アリーナMが作動せずFPVドローンが直撃する映像なども登場しており、ロシア人専門家のヴィクトル・ムラホフスキー氏も2025年に「アリーナMをドローンに対応させようとしているがレーダー性能で根本的な問題に直面している。我々のレーダー技術ではプラスチックのような電波透過性素材で作られたドローンの検出と識別が困難で、特に近距離の脅威とクラッターを区別することが出来ず、脅威の検出、追跡、優先順位付けに使用しているアルゴリズムも低速で移動するドローンに対応できるほど開発が進んでいない」と述べたことがある。
どちらにしてもロシア軍はアリーナMを戦場に投入し始めており、FPVドローンの迎撃に成功したことも確認されたが、アリーナMの有効性は交戦時の状況や攻撃アプローチによって変化するため、どこまで安定した効果が得られるのかは数字が出てくるまで何とも言えない。
一つだけ確かなのはロシア軍がコープケージではなくアリーナMを試しているという事実で、コープケージよりもアクティブ防御システムに「何らかのメリット」を感じていると示唆しており、そもそも100%の保護能力がなければ無意味というなら実用化されているほぼ全ての防空システムが無意味になるため、FPVドローンの脅威を100%防げるかどうかを基準にしてAPSの有効性を判断するのは間違いだ。
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※アイキャッチ画像の出典:1st Cavalry Division