数百円安い3000円台か?備蓄米が店頭に出回り始める…ブレンド米中心、値下げ効果なお不透明

 流通の円滑化のために放出された政府備蓄米の初回落札分が、スーパーなどの店頭に並び始めた。店頭で販売されるのは、複数の産地や品種を混ぜた「ブレンド米」が中心となる見通しだ。現在の店頭での販売価格は5キロあたり4000円を超えているが、放出された備蓄米は数百円安い3000円台となる可能性がある。高騰したコメ価格の本格的な押し下げにつながるかが今後の焦点だ。(貝塚麟太郎、佐藤寛之)

続く高値

 全国農業協同組合連合会(JA全農)系列のコメ卸「全農パールライス」は既に首都圏の一部のスーパーなどに出荷を始めた。別のコメ卸も関東地方を中心に今週末から出荷が本格化するとし、「ブレンド米の店頭価格は3000円台半ばになりそうだ」という。

倉庫に積み上げられた備蓄米(3月7日、神奈川県内で)

 農林水産省によると、今月10~16日にスーパーで販売されたコメの平均価格は4172円だった。値上がりは11週連続で、前年同期(2045円)の2倍以上の水準となっており、高値が続いている。

表記されず?

 大手スーパーでは、月内にも備蓄米を店頭に陳列する方針だ。大手スーパーの担当者は、「備蓄米を求める客で混乱が起きかねない。JA全農も表記をしないよう求めており、従いたい」と話しており、多くの店舗では「備蓄米」と分かる表記をした上での販売はしないとみられるが、備蓄米はほかの商品より1~2割安くなる可能性があり、「消費者は価格差で備蓄米か、それ以外かがわかるのではないか」(担当者)という。

 日本生活協同組合連合会は、今月末から関東や関西の生協の一部店舗で備蓄米の販売を開始する方針を示している。ブレンド米の場合、5キロあたり3000円台を見込んでいる。宅配事業での取り扱いも検討しており、準備ができ次第始めるという。

 一方、今回放出された備蓄米が全ての小売業者に行き渡るわけではない。東京都足立区でスーパーを経営する男性は「小規模スーパーには、全く備蓄米は回ってこない。コメ価格が高い中で、地域に根付いた店こそ、割安なコメが必要ではないか」と不満げだ。

外食業界も注目

 外食業界も不足するコメを安定的に調達するため、備蓄米に注目する。

 大手牛丼チェーンの吉野家ホールディングス(HD)は24日、コメ卸から備蓄米と外国産のブレンド米2キロ・グラムを調達し、試食会を行った。味や品質に問題はないことを確認し、今後、ブレンド比率を変えるなどして試食を重ね、実際に店舗で使うかを判断するという。焼き肉チェーン「牛角」などを展開するコロワイドも備蓄米の使用を検討している。

 外食企業も備蓄米が十分に行き渡るのか不安を感じている。大手外食チェーンの担当者は「調達先を増やすためにも備蓄米を使いたいが、大手小売りへの流通が優先され、手に入らない可能性がある」と話す。別の大手外食からも「外食までは回らないのではないか」と入手を諦める声も上がっている。

 東京大の鈴木宣弘特任教授は「価格を一定程度下げる効果はあるが、流通は大手中心で市場の不足感は高まっており、供給不足を解決できていない。端境期となる夏に向けて値下がりは見込めないのではないか」と指摘している。

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