なぜ「高市首相」は喜べないか 上野千鶴子氏が見た女性参政権80年
日本の女性が戦後初めて参政権を得て、およそ80年がたつ。
自民党総裁選で高市早苗新総裁が選出され、初の女性首相の誕生が現実味を帯びてきた。
これは、女性参政権の成果なのか。
女性学の第一人者、上野千鶴子・東大名誉教授に尋ねると、はっきりと「ノー」という答えが返ってきた。
「女性なら誰でもよい、という時代は終わりました。女性の利益になる政治を期待できませんから」
<主な内容> ・戦後80年「政治にしてやられた」 ・「女で闘う」政治家たち ・女性の貧困は明らかな「人災」 ・セクハラ、不払い労働…経験を再定義 ・日本を変えたのは「無位無冠の女」
1947年施行の日本国憲法で初めて規定された男女平等や女性の人権。女性は真の自由や平等を手にしたのでしょうか。戦後80年を女性の視点から捉え直す企画を随時掲載します。
女性参政権は政治を変えたか
上野さんは5日、自身のX(ツイッター)に「初の女性首相が誕生するかもしれない、と聞いてもうれしくない」と投稿し、反響を呼んだ。
なぜ「高市首相」に期待できないのか、その真意は――。
「『日本はいつ男女平等になりますか』と聞かれたら、あなたが生きている間は無理でしょう、と返します。全世界が変化する中で取り残されているのが日本です」
世界経済フォーラムが各国の男女平等度をランキングで示す2025年の「ジェンダーギャップ指数」で、日本は前年と同じ118位に沈んだ。
その要因の一つが女性議員の割合が低いことだ。
列国議会同盟の25年1月の発表によると、下院の女性議員比率は183カ国中142位(衆院の女性比率15・7%)。先進国最低レベルだ。
女性参政権は、政治を変えられなかったのか。
「女性票は家族票の一部として動き、戦後長く続いた自民一党支配を支えました。1989年のマドンナ旋風まで、女性参政権は政治を変えなかったというのが政治学の結論です」
潮目が変わったのは80年代だ。86年、社…