米ニューヨーク州のジェイムズ司法長官、銀行詐欺などで起訴 トランプ大統領と対立する一人

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画像説明, 記者会見に臨むニューヨーク州のレティシア・ジェイムズ州司法長官(9日)

アメリカの連邦大陪審は9日、ニューヨーク州のレティシア・ジェイムズ州司法長官を起訴した。

検察当局は、ジェイムズ長官がヴァージニア州ノーフォークにある住宅のローンに関して、銀行詐欺および金融機関への虚偽申告の疑いがあると主張している。

ジェイムズ長官は声明で、最近になって自分に対する刑事訴追を公然と促したトランプ大統領が、「私たちの司法制度を必死になって武器化している」と批判した。

「彼は、私がニューヨーク州司法長官として職務を果たしたというだけの理由で、連邦の法執行機関を、自分の言いなりにさせようとしている」、「罪状には根拠がなく、大統領自身の公の発言からも、彼の唯一の目的が、どんな代償を払ってでも政治的な仕返しをすることなのは明らかだ」と、長官は述べた。

一方、本件を担当するヴァージニア州のリンジー・ハリガン連邦検事は、「この事件は、誰も法の上に立っていないという事実を証明している」と語った。

「本件の罪状は故意の犯罪行為で、国民の信頼を著しく損なうものだ」と、ハリガン検事は述べた。

「本件における事実と法は明確で、我々は引き続きそれに従って行動し、正義が貫かれるよう努めていく」とも検事は強調した。

トランプ大統領は、ヴァージニア州のエリック・サイバート連邦検事が辞任した後、かつて自分の個人弁護士だったハリガン氏を後任に任命した。サイバート氏は、ジェイムズ長官を起訴するに足る証拠が見つからなかったと司法省に報告した後、解任されたと報じられている。

ジェイムズ長官の初公判は、24日にノーフォークで予定されている。

米司法省は、ジェイムズ長官がノーフォークにある住宅を購入する際、この物件を「セカンダリー・レジデンス(第2の住居)」として使用することを条件とした住宅ローンを利用したと主張している。このローン契約には、共有所有や「タイムシェア」利用を禁じる条項が含まれていた。

起訴状によると、ジェイムズ氏はこの物件をセカンダリー・レジデンスとして「居住または使用」しておらず、代わりに「賃貸投資物件」として使用し、3人家族に貸し出していたとされている。

検察は、こうした「虚偽の申告」によって、ジェイムズ氏が投資物件では得られない有利なローン条件を得たと主張している。

ハリガン検事は、ジェイムズ長官が有罪判決を受けた場合、各罪状につき最大30年の禁錮刑と、最大100万ドルの罰金が科される可能性があると述べている。

ジェイムズ氏の弁護士アビー・ローウェル氏は、「この事件がトランプ大統領の報復願望によって動かされていることを、我々は深く懸念している」と述べた。

「これ以上遅らせることはできない。我々の評判と信頼性が損なわれている」と、トランプ氏は投稿した。

司法省はまた、第1期トランプ政権での国家安全保障補佐官を務めたジョン・ボルトン氏や、民主党のアダム・シフ上院議員(カリフォルニア州選出)に対する捜査も開始したと報じられている。

訴訟の過程で、トランプ氏は法廷外でジェイムズ氏を繰り返し非難し、「政治的魔女狩り」を仕掛けていると主張していた。一方のジェイムズ氏は、「裁判所は、トランプ氏が法の上に立つ存在ではないと判断した」と述べた。

ジェイムズ氏は9日、トランプ氏とその組織に対する、ニューヨーク州司法省の訴訟を堅持する方針に変わりはないと表明した。

ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事(民主党)はジェイムズ長官の起訴について、「権力者の責任を問う者を罰するために、(連邦政府の)司法省を政治利用する行為にほかならない」と述べた。

ニューヨーク自由人権協会(NYCLU)とアメリカ自由人権協会(ACLU)も、今回の起訴を「トランプ大統領による露骨な権力乱用の長い歴史における、最新の事例だ」と非難した。

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