マクロン仏大統領、10日夕までに新首相を指名-議会調整が進展
フランスのマクロン大統領は8日、10日夕までに新首相を指名すると明らかにした。政治的混乱が一段と深まる恐れがある議会の解散・総選挙を当面回避した形だ。
退任するフランスのルコルニュ首相は8日、国民議会(下院)の各勢力との協議で進展があり、新たな組閣に着手可能になったと説明。仏テレビフランス2の番組で「議会で歩み寄りの可能性がある」と語った。仏大統領府も48時間以内にマクロン氏が新首相を指名することを確認した。
新首相が指名されれば、昨年12月以降、3人の首相が相次ぎ退任した政治混乱が一定の安定を取り戻す可能性がある。
ただ、新政権が誕生しても先行きは険しい。議会は対立する三つの政治勢力に分裂しており、各党が2027年の大統領選を見据えて立場を固めているため妥協が難しい状況だ。
新首相が組閣に失敗すれば、マクロン氏は議会を解散して総選挙を行うか、別の首相を任命するか、自身が辞任するかの選択を迫られることになる。
ルコルニュ氏は、次期首相について「27年の大統領選出馬の野心を持たない人物でなければならない」と述べ、「誰もが意識しながら口にしない問題は大統領選だ」と指摘した。
極右・国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン氏は、司法判断で立候補が認められれば27年大統領選の有力候補と目されているが、どのような新政権であっても倒閣を図り、総選挙を迫る考えを示している。
新たな道筋が見えたとのルコルニュ氏の先のコメントを受け、フランス国債・株は上昇。10年債の利回りは5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り低下し3.51%となり、ドイツ債との利回り格差(スプレッド)は83bpに縮小した。フランスの主要株価指数のCAC40指数は1.1%上昇した。
しかし政治混乱はマクロン氏の支持率に打撃を与えている。世論調査会社エラブが経済紙レゼコーの委託で10月7、8両日に実施した調査によると、支持率は3ポイント低下して14%と、17年の就任以来最低となった。
マクロン氏側近のボルヌ元首相は7日、退職年齢を62歳から64歳に引き上げるとした2023年年金改革法について、施行の一時停止の可能性を排除しないと述べ、合意の可能性が高まっていると示唆した。
ルコルニュ氏は、年金制度への対処について、新政権が議会と協力して道筋を見いだす必要があるとした上で、「年金改革について議論の道筋を探る必要があると大統領に伝えた」と語った。
ただ、退職年齢引き上げを凍結すれば、27年までに少なくとも30億ユーロ(約5330億円)の財政負担が生じるとも指摘した。
新首相の人選は難航が予想される。社会党は自党勢力から選ぶよう求めているが、中道右派はそれに反対。極右と極左は、マクロン氏が指名するどんな首相にも不信任決議を出す構えだ。
ルペン氏は8日、「私は全てに反対票を投じる。もう茶番は終わりにすべきだ」と述べ、新政権発足を阻止すると表明した。
原題:French Premier Signals Optimism on Solving Political Crisis (2)、Macron to Pick French Premier by Friday in New Bid for Stability(抜粋)
— 取材協力 Julien Ponthus and David Goodman