「父は砂マフィアに殺された」 警察もさじを投げる希少資源の闇

テラ・クライシス

毎日新聞 2026/7/14 06:00(最終更新 7/14 06:00) 有料記事 1916文字
砂の違法採掘問題に取り組んできた弁護士のアーカーシュさん。父を砂マフィアに殺害された=インド北部ウッタルプラデシュ州ノイダで2026年6月4日、松本紫帆撮影

 インドの首都ニューデリー郊外。建設中の高層ビル群を通り抜けると、ヒンズー教の聖なる川、ヤムナ川の河川敷にたどり着く。

 川岸には大きな穴が無秩序に掘られている。つい最近まで、ある「希少資源」の採掘が大規模に行われていた。砂である。

 砂の乱掘を巡る闇や影響を追いました 川が逆流 その後も……=15日朝公開予定

 日本では ガラス原料の砂が枯渇=16日朝公開予定

 車を降りて近づくと、建設関係者とみられる男性が、警戒するようにこちらの様子をうかがっていた。

 「本来許可が出ていないエリアでも、採掘が行われる。沿岸では土地の浸食被害が出ている」。弁護士のアーカーシュさん(39)が説明した。

 砂はどこにでもあるありふれた鉱物だ。だが、コンクリートやガラスなどの原料となる良質な砂は、実は貴重だ。例えば、中東の砂漠の砂は粒子の形状などから、建設資材の原料としては適していない。砂漠の国であるアラブ首長国連邦(UAE)も、需要の大半を輸入に頼っているほどだ。資源の中では水の次に多い年間500億トンが、世界で採取されているという。

 東南アジアでは、乱掘された砂の輸出が問題視されてきた。国連環境計画(UNEP)などによると、インドネシアでは20以上の島が「消えた」と言われるほど大量の砂が採掘され、シンガポールの大規模な埋め立てなどに使われた。近年は、禁輸措置を取る国も出てきた。

 一方、インドでは国内向けに使われている。地元紙によると、商都ムンバイでは2019年から23年にかけて、40階建て以上の高層ビルが154棟建設されたという。急速な経済成長を維持するために積極的なインフラ投資が続く。市場調査会社モルドールインテリジェンスは、26年の建設市場の規模が約7900億ドル(約120兆円)に上り、31年までにさらに4割増えると予測する。

 国内での合法的な採取や輸入で得られる砂だけでは、とても膨大な需要をまかなえない。そんな中、暗躍が指摘されるのが「砂マフィア」だ。

 ヤムナ川の河川敷を案内してくれたアーカーシュさん。弁護士として刑事事件を扱うかたわら、砂の違法採掘問題にも取り組んできた。きっかけは13年前の事件。父パル・ラムさん(当時52歳)が、砂マフィアに殺害された。

無計画な掘削 畑覆う砂

 パル・ラムさんは、ヤムナ川沿岸の農地で小麦などを栽培する農家を営んでいた。しかし2000年ごろから、採掘業者が村の共有農地を占拠し、砂の違法採掘を始めた。無計画な掘削によっ…

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