急回復の株価、雇用統計や税制・歳出法案の行方が左右=今週の米株式市場

[ニューヨーク 30日 ロイター] - 今週の米株式市場は、5月の雇用統計などの米主要経済指標や、トランプ米大統領肝いりの税制・歳出法案の動向、紆余曲折をたどる輸入品関税強化の動きなどが相場を左右しそうだ。

S&P500種株価指数(.SPX), opens new tabは先週上昇し、ナスダック総合株価指数(.IXIC), opens new tab は前週比で9.6%伸びた。5月ではS&Pが約6.2%、ナスダックが9.6%それぞれ上がり、月間の伸び率としては2023年11月以来、1年半ぶりの大きさとなった。

トランプ氏が関税引き上げによって仕掛けた貿易戦争は経済に打撃を与えることが懸念され、数週間にわたって世界市場を揺さぶってきた。

今週は6月6日発表の5月の雇用統計を筆頭に、多くの経済・労働市場の指標公表が控えている。

ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのシニアグローバル市場ストラテジスト、スコット・レン氏は「過去最高値からそれほど遠くない水準まで戻した現時点から本格的に上昇するためには、(実際の経済活動を集計した)ハードデータが市場予想よりも持ちこたえる必要があると思う」と指摘した。

S&P 500 performance in 2025

ロイターがエコノミストらに実施した市場予想によると、5月の雇用統計は前月より13万人増となり、4月の17万7000人から鈍化する見通し。

トランプ氏が「解放の日」と称して4月2日に発表した輸入品への関税の大幅な引き上げを受け、投資家は経済にどのように波及するのかを知りたがっている。

アメリプライズ・ファイナンシャルのチーフ市場ストラテジスト、アンソニー・サグリンビーン氏は「5月の(雇用統計の)データは、関税の不確実性と市場の圧力に企業がどのように対処してきたのかを示すものだ」と指摘した。

ノーススター・インベストメント・マネジメントのチーフ投資オフィサーのエリック・クービー氏は、増加幅が20万人を超えるなど過度に強い内容となる場合には、米連邦準備理事会(FRB)が利下げを遅らせる可能性があるため市場で警戒されるとの見方を示した。

LSEGのデータによると、投資家らはこの数週間に年内の利下げ幅予想を従来より圧縮した。現在は年内に2回程度の利下げが織り込まれている。

FRBが先週発表した5月の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨によると、出席者らは失業率の悪化に伴ってインフレ率が上昇し、今後数カ月間は「困難なトレードオフ」に直面する可能性があるとの認識を示した。

一方で議会上院は、下院が5月に可決した税制・歳出法案の審議に乗り出す。トランプ氏を支援してきた実業家のイーロン・マスク氏は、この法案は米国の財政赤字削減努力を阻害すると批判している。

この法案が成立すれば、約36兆2000億ドルの政府債務は10年間に3兆8000億ドル膨らむと推計されており、赤字拡大が国債市場に与える影響に注目が集まっている。ここ数週間は国債利回りの上昇が株価を圧迫している。

二転三転している輸入品への関税も影響を及ぼしそうだ。トランプ氏が一部の関税強化を見直したことで株価はこの数週間に反発したが、貿易相手国との交渉が続いている中で状況は依然流動的だ。

米国際貿易裁判所は5月28日、輸入品に全面的に課税することは大統領の権限を逸脱しているとして、トランプ氏が発動した一連の関税の大部分を差し止めた。これに対して米連邦巡回控訴裁判所(高裁)は翌29日、この差し止め判断を一時停止し、関税措置を復活させる判断を下した。

クービー氏は「最初は興奮したが、これはプロセスの新たな段階に過ぎず、実際にはあまり明確になっていないという現実が見えてきた」と振り返った。

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