最も奇妙な米ハリケーンシーズン終了、記録的に高い海水温が原因か

大西洋地域のハリケーンシーズンが11月30日に公式に終了した。科学者らはこの半年間にハリケーンが極めて活発だった理由について考察している。

  コロラド州立大学の研究者フィル・ クロッツバック氏は「記録上、最も奇妙で活発なシーズン」だったと振り返る。

  大西洋では今シーズン、ハリケーンの発生数が年間平均の7個を上回る11個となった。大型ハリケーンの発生数も平均を上回った。大型ハリケーンは、5段階のサファ・シンプソン・スケールでカテゴリー3以上と定義される。平均的な年に予想される大型ハリケーンの数は3個だが、今年は5個だった。

  またアキュウェザーによれば、経済損失額が約5000億ドル(約75兆円)に上る被害をもたらした暴風も複数発生した。

  だがクロッツバック氏ら科学者によると、今シーズンの異常はそれだけではない。ハリケーンシーズンの真っただ中、大西洋は過去50年余りで初めて静寂に包まれたのだ。

  平均的な年なら8月13日から9月8日までの間、名前の付いた嵐が4個発生し、そのうち少なくとも2個はハリケーンに成長していた。「アンドリュー」「カトリーナ」「ローラ」「アイダ」といった強いハリケーンも、全てこの期間中に発生したものだ。ところが、今年は名前の付く嵐が一つも発生しなかった。

  「実際に確認するまで信じられなかった」とクロッツバック氏。「われわれは何が起こったのか正確に把握し今後、こうした事態をどの程度予測できるか判断しようとしている」と話す。

  「奇妙な静寂」は最終的に一連の激しいハリケーンにより打ち破られ、そのうち「フランシーヌ」「ヘリーン」「ミルトン」が米国の南東部を襲った。

異常に暖かい海水

  これらハリケーンが非常に強力になった原因について、いくつかの説がある。 元凶として強く疑われているのは気候変動だ。ハリケーンが発生する基準のカ氏79度(セ氏26度)と比較し、「ミルトン」が発生した時点で大西洋の海水温はカ氏90度(セ氏32度)近くと、記録的レベルに達していた。

  非営利団体「クライメート・セントラル」の研究者の新たな研究によると、こうした異常に暖かい海水がハリケーンのエネルギーを強め、予想をはるかに上回る強風をもたらした。

  研究リポートを執筆したダニエル・ギルフォード氏は、「大型ハリケーンは、北大西洋ではますます一般的になりつつある」と指摘。「強度が増し大型ハリケーンが一層強力になるといった一貫した変化が見られ、われわれは非常に懸念している」と語る。

  一方、ハリケーンの強度の変化についてクロッツバック氏は、人為的な要因による温暖化以外にも海洋温度の自然変動などが要因の可能性が高いと指摘する。

  疑いの余地がないのは、大西洋の水温が少なくともカ氏1ー3度上昇しており、この状態が過去18カ月間続いていることだ。大西洋の水温が冬の間も高い状態が続けば「来年のハリケーンシーズンが再び活発になる可能性がある」とクロッツバック氏は指摘している。

原題:Record-Hot Oceans Contributed to an Unusual US Hurricane Season(抜粋)

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