最高に可愛い“トロン顔”がたまらない!! フィアット 600ハイブリッドにイタリアの底力を見た件
自動車界で屈指の良デザインを誇ったフィアット 500が在庫限りとなり、寂しい思いをしていた我々の前に登場したフィアット 600ハイブリッド。試乗に向かったテリーさんを一瞬で虜にしたのは、フィアット 600の「眠そうな目」だった!?※本稿は2025年8月のものです文:テリー伊藤/写真:西尾タクト、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2025年9月26日号
【画像ギャラリー】いいえ寝てません!! プールのあとの数学の授業中のような寝ぼけマナコがキュートなフィアット 600ハイブリッド(20枚)今回の試乗はフィアット 600ハイブリッド。前から見た時の「半目」がかわいらしい
いつもの撮影場所に向かうと、フィアット 600ハイブリッドが奥のほうに置かれていた。角度的にサイドビューしか見えなかったのでいまいちピンとこなかったのだが、近づいて“顔”を見た瞬間に、あまりのキュートさに一目惚れしてしまった!
寝起きでパジャマを着ているかのようなトロンとした眼がかわいい。最近のクルマは凛々しいというか怖いというか、シャープな顔つきが多いが、フィアット600は、その正反対の「寝ぼけマナコ」。この眼にやられた。
日本も軽自動車なら楽しいクルマを企画して作るのに、登録車になると、真面目で保守的なクルマかコワモテ系ばかりになってしまう。それがイタリアと日本の違いなのだろう。
イタリアの自動車メーカーは会議で「どうすれば楽しくなるか」を話し合っているのではないかとも思えてくる。そんな会議なら私も参加したい。
フィアット 600ハイブリッドはプジョー、シトロエン、フィアット、アルファロメオ、マセラティ、クライスラー、ジープなど、なんと14のブランドを束ねる「ステランティス」のクルマで、3気筒1.2Lのマイルドハイブリッドを搭載する。
多くのブランドが集まるメーカーのクルマらしく、プジョー 308、3008、シトロエン C4、ジープ アベンジャーなどと中身はほぼ同じ兄弟車だそうだ。
そういう話を聞くと「クルマはデザインだな」とつくづく思わされる。今挙げたすべてのクルマが兄弟車とは到底思えない。各ブランドが自社のイメージに沿ったクルマを見事に作り分けているのだ。
同じ食材を使っても同じ料理ができるわけではない。そう考えるとクルマ作りは料理と似ているのかもしれない。思えば日本、アメリカ、ドイツ、イタリア、フランスなど各国のクルマが、それぞれまったく違うのは当然のことかもしれない。
時速30kmまではEV走行もできるマイルドハイブリッド。走りに不満はいっさいない
サイズが手頃で運転しやすいのも、フィアット 600ハイブリッドのいいところだ。走りにこだわる人には物足りない面もあるかもしれないが、普通に走る分には充分な性能と乗り心地のよさで私にはまったく不満なし。着座位置の高さがちょうどよく、乗り降りがラクだったことも報告しておこう。
結局、フィアット 600は「大衆車」なのがいいところなのだ。価格が高いクルマはユーザーの要求も高くなるし、メーカーもその要求に応えるべく余計なものをたくさん付けてしまう。フィアット 600はそういう悪循環の外側にいるからシンプルなクルマ作りができるのだ。
余談になるが、最近の高級車は本当に余計な装備が山ほど付いている。最高の素材を使ってシンプルに作る高級車があってもいいと思うのだが、そんなクルマは見たことがない。高級車はもう、どれだけ要らない装備を付けてお金を取るかの勝負になっているのではないだろうか。
話をフィアット 600ハイブリッドに戻そう。
寝ぼけマナコがキュートなクルマだが、かといって女性ユーザーをターゲットにしているわけでもない。男が乗っても女の子が乗っても似合うサジ加減が絶妙で、これもまたイタリア車の実力の高さを感じるところだ。
最近は日本車が韓国車や中国車に猛追されて心配することが多かったが、イタリア車のセンスのよさは相変わらずで、そこでも日本車はずっと負けている気がする。世界から見た日本車のアドバンテージは何があるのか、ちょっと考えてしまった。
フィアット 500が在庫車販売だけとなってしまって残念に思っていたが、600の登場で救われた気がする。ボディカラーが4色と意外と少ないが、500がそうであったように、ユニークな特別仕様車が次々に出てきてそれも充実していくだろう。
日本車メーカーはキュートなクルマをもっと真剣に考えたほうがいい。そんなことを考えた今回の試乗だった。
●フィアット 600ハイブリッド La Prima(419万円・6DCT)
フィアット 600ハイブリッド
先にEVの600eが登場していたが、2025年5月に待望のガソリン車が登場。システム出力145psの直3、1.2Lターボ+マイルドハイブリッドを搭載するFF車で、WLTCモードは23.0km/L。
全長4200×全幅1780×全高1595mm、ホイールベース2560mm、車重1330kg。受注生産の365万円の標準車もあるが、La Primaの先着600台は399万円。