トランプ関税の根拠、高裁判事の過半数が懐疑的-数週間内に判断も
トランプ米大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいて各国・地域に上乗せ関税などを発表したことについて、連邦高裁で31日、その権限を巡る口頭弁論が開かれた。関税発動期限をほぼ半日後に控え、大統領の権限に対する懐疑的な見方が相次いだ。
11人の判事が順番に米司法省高官に審問したのは、トランプ大統領が主張するように、恒常的な貿易赤字が法律が言及する国家の緊急事態に該当するかという点だ。トランプ大統領はこれを根拠に議会に承認を求めなくても、関税を課すことができるとしている。
米司法省の民事部門を率いるブレット・シューメイト氏は、トランプ関税は「爆発的に膨張する貿易赤字がもたらす結果」に対処するものであり、大統領には他国に「圧力をかける」権限があると供述した。トランプ大統領は赤字が急激に増大し「転換点」に達したと判断したと、シューメイト氏は続けた。
判事の過半数は政府の見解に鋭く切り込んだ。ジョージ・W・ブッシュ元大統領が任命したアラン・デービッド・ルーリー判事は、国際緊急経済権限法の文言には関税に「味方する表現」はないようだと述べた。
民主党主導の複数州や中小企業のグループは、この法律が50年ほど前に成立した当時、このような使用は意図されていなかったとして、トランプ大統領が同法を根拠に関税を発動するのは違法だと主張している。
31日の口頭弁論は2時間ほど続いたが、判断には至らなかった。数週間内に判断が下される可能性はある。他のトランプ政権の政策と同様、最終的に最高裁に持ち込まれる可能性は高い。
国際貿易裁判所は5月、各国・地域に一律に発動された上乗せ関税などを「違法で無効」と判断し、差し止めを命じた。トランプ政権は決定を不服として上訴し、連邦高裁は貿易裁判所の判決の効力を一時停止した。数兆ドル規模の世界貿易が、この法的係争に巻き込まれている。
オバマ元大統領が任命したジミー・レイナ判事は、IEEPAがそのように幅広く適用されることが許されるのなら、議会はなぜ一部の関税権限を大統領に委任する法律を多数制定してきたのかと問いかけた。
「IEEPAが無制限の権限を大統領に認めているのなら、これらの貿易法に依存する必要はないではないか」と同判事は述べた。
中小企業側の弁護士ニール・カチャール氏は、IEEPAの文言に一部の関税宣言をトランプ大統領に認めていると高裁が判断したとしても、基本的な法理上、議会は大統領に重大な権限を与えることを明示しなくてはならないと論じた。
原告はバイデン前政権が最高裁で敗訴した2件の判決を挙げて、コロナ禍での立ち退き制限と連邦学資ローン債務免除が認められなかったように、トランプ大統領がIEEPAに明記されていない権限を解釈することはできないと主張した。
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原題:Trump Tariff Power at Risk After Skepticism by Appeals Court (1)(抜粋)