トレーダー待望の「トランプ・プット」か、米商務長官が関税軽減言及
米株式相場は4日、トランプ米大統領の貿易戦争による米経済への影響に懸念が強まり、2営業日の下落率としては昨年12月以来最大を記録した。株式市場を自らの成功のバロメーターと長年位置付けてきたトランプ氏はこの2日間、株式相場に関しては静観していたが、それは市場の取引終了時までだった。
ラトニック商務長官はFOXビジネスに対し、トランプ氏が5日にメキシコとカナダに対する関税の軽減に向けた道筋を発表する可能性があると述べた。
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その直後、ハイテク株の動きに連動する最大の上場投資信託(ETF)は時間外取引で約1%上昇し、指数先物は安値から急反発した。
これは政策の転換が差し迫っているというわけではない。トランプ政権は過去にも相反するシグナルを発してきた。また、カナダが報復措置に出れば同国への関税引き上げも辞さないとしていたトランプ氏の以前の発言とも大きく異なる。
それでもラトニック氏の発言は、市場が再び急落した直後に出てきたものであることから、トランプ氏が米国の金融市場のムードに敏感で必要に応じ政策調整する可能性があるというウォール街のストラテジストの期待感を浮き彫りにした。
B・ライリー・ウェルスのチーフ市場ストラテジスト、アート・ホーガン氏は「トランプ氏は長期的利益を得るには短期的に痛みを伴うことはあると、かなりオープンに語っているが、短期的な痛みが大きくなり過ぎるポイントがある」と指摘。「確かに、彼は物事を撤回しそうに感じられる。それが今日のことかどうかは分からないが、短期的にはその可能性がある」と付け加えた。
トランプ氏は株式市場を成績表のように使う傾向があり、何らかの政策で投資家を動揺させた場合、すぐにその計画を放棄するだろうという見方が背景にある。ウォール街のさまざまな金融機関は、トランプ氏がS&P500種株価指数でどの程度の下落の痛みに耐えられるかを推測しており、その水準はプットオプションになぞらえて「トランプ・プット」と呼ばれている。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストは、昨年11月5日の大統領選当日のS&P500種の終値水準をトランプ・プットの最初の行使価格と考えており、「これを割り込むと、現時点でリスクロングの投資家は政策当局者による口先の市場支援を強く期待し、必要とするだろう」と予想している。
4日の終値はほぼその水準だった。こうした中で懸念材料の一つは、2期目のトランプ氏が1期目ほどは市場に注目していないため、株式相場急落がトランプ氏にどの程度影響を与えているか測り難いことだ。
投稿減少
バークレイズの株式戦術戦略グローバル責任者のアレクサンダー・アルトマン氏によれば、政権1期目にトランプ氏はSNSで株式市場について156回も明確に投稿し、1年目だけで60回に上った。今回、トゥルース・ソーシャル上の126件の投稿を分析したところ、トランプ氏は昨年11月以来、株式市場について一回しか言及していない。
ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルのクロスアセットストラテジスト、チャーリー・マケリゴット氏は4日の調査リポートで、「株式市場におけるいかなる種類の『トランプ・プット』も依然として大幅に(アウト・オブ・ザ・マネーで)より低い水準にあると、個人的には考えている」と記した。
これまでのところ、トランプ氏は投資家の不安には動じない様子だ。ベッセント財務長官は、株式市場の動きをものともせず、大統領の関税政策に対する自信を示した。
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ウォール街の専門家の中には、トランプ氏を動揺させるはS&P500種でより劇的な動きが必要だとする見方もある。ジョーンズトレーディングのデーブ・ルッツ氏は、トランプ・プットは1月20日の大統領就任式当日の6045より低い5500割れの水準である可能性があると指摘する。
「そうなればメディアは、株式市場がピークから10%下落して調整局面に入ったと報道し始める」とルッツ氏は述べ、「そうした見出しは大統領の注意を引くだろう」と語った。
原題:Traders Wonder If Trump Put Is In as Lutnick Talks Tariff Relief (抜粋)