アングル:トリプル安の東京市場、政局が端緒 リスク回避の本格化を懸念
[東京 3日 ロイター] - 3日の東京市場では、債券安、円安、株安のトリプル安の商状となった。現時点では本格的なリスクオフとまではみられていないが、国内政局や金融政策への思惑も意識されており、リスク回避ムードが強まらないか警戒感はくすぶっている。
この日の市場では、新発30年債利回りが3.285%と過去最高水準に大幅上昇(価格は下落)した。為替は148円後半へと円安に振れ、日経平均は一時400円超安となった。
端緒の一つは、自民党の森山裕幹事長ら党四役が辞意を表明したことだ。石破茂首相は続投の意向を改めて示したが、債券市場では政権基盤の揺らぎが警戒された。
仮に退陣となる場合、誰が次の総裁に選ばれるかは現時点で不透明なため、財政拡張的な候補者への思惑もくすぶらざるを得ない。「そうした不透明感自体が、投資家の買い手控えにもつながっている」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジストは指摘する。
為替市場では、円売りが進んでいる。超長期金利の上昇を受け「悪い金利上昇の思惑もあるだろう」と、あおぞら銀行の諸我晃チーフ・マーケット・ストラテジストは話す。
前日夕には、ドル/円の上昇が加速する場面があった。欧州がトリプル安となる中でドル買いが同時並行的に進んでいた局面でもあったが、森山氏の辞意表明が「上昇に弾みをつけた」と諸我氏は指摘する。
円安となれば輸出株を中心に株価には支援材料となるのがセオリーだが、3日の東京市場では、円安の中でも自動車株や機械株は軟調だった。「政局になる可能性が高まり、政治の不透明感から積極的には株を買いにくくなってきた」と三井住友トラスト・アセットマネジメントの上野裕之チーフストラテジストは話す。
<株式と債券「異なる関心事」>
現時点で債券安から円安、株安といった連鎖が強まっているとまではみられていない。ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは「市場の動きだけをみるとトリプル安だが、その言葉が与える印象ほど相場はネガティブでもない」とみている。
株式と債券とでは、相場の関心事が異なるとの見方が背景にある。足元で日本株は米株の動向に左右されやすい環境下にあり「米ハイテク株が大崩れしなければ、本格的な株安は生じそうにない」(井出氏)という。日本株は、自社株買いなど需給面からの下支えも意識されている。
仮に財政拡張なら景気が刺激されるとの思惑から「むしろ株高材料になり得る」(しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンド・マネージャー)との見方もある。
もっとも、金利上昇は株価にネガティブと受け止められやすい。欧米でも金利上昇が進む中、政局不安で国内の金利上昇が加速すれば株価にも影響を与えかねない。「株式市場も金利動向に目配りが必要な局面になってきた」と、しんきんAMの藤原氏は話している。
利回りが過去最高の水準にある30年債は入札をあすに控えており、市場の関心が寄せられている。
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