【日本市況】40年金利が最高、米利下げ期待後退と日銀警戒-株大幅安
14日の日本市場では債券が大幅安(金利は上昇)となり、新発40年債利回りは過去最高を記録した。米国で予想を上回る雇用統計を受けて長期金利が一段と上昇したことが背景。日本銀行の金融政策決定会合を来週に控えて利上げ観測もくすぶり、氷見野良三副総裁の発言に神経質な展開が続いた。
新発40年債利回りが2.76%と過去最高、新発10年債と新発20年債の利回りは2011年以来の高水準を更新した。米利下げ期待の後退に加え、米政府による人工知能(AI)向け先進半導体輸出の新規制を受けて、日本株は大幅安。円相場はリスク回避の流れから上昇圧力がかかる一方、氷見野副総裁の講演で一時1ドル=158円台に下落する場面もあった。
SMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジストは、堅調な米経済指標について「政策金利がすでに中立金利に達しているのではとの疑問を抱かせる」と指摘。一方、日銀の1月利上げ期待が残る中で「国債は金利水準に投資妙味を感じつつも、買いが手控えられる」との見方を示した。
金利スワップ市場では、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)までの利下げ織り込みが2割程度に低下し、完全に織り込む時期は年後半に後ずれしている。一方、1月の日銀金融政策決定会合の利上げ織り込みは6割程度まで上昇し、国債利回りの上昇圧力となった。
日銀の氷見野副総裁は14日午前の講演で、来週の決定会合で「利上げを行うかどうか議論し、判断したい」と発言。午後の会見では、トランプ米次期大統領の20日の就任演説や消費者物価などをみて判断する考えを示した。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美チーフ債券ストラテジストは、市場動向を見て「動けそうなら来週の金融政策決定会合で利上げに踏み切る可能性もある」と述べた。
関連記事:氷見野日銀副総裁、「来週の会合で議論」-追加利上げ観測を後押し
国内債券・為替・株式相場の動き- 長期国債先物3月物の終値は前営業日比40銭安の140円66銭
- 新発10年債利回りは4.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い1.24%
- 円相場は対ドルでニューヨーク終値比0.1%高の157円36銭-午後4時04分現在
- 東証株価指数(TOPIX)の終値は前営業日比1.2%安の2682.58
- 日経平均株価は1.8%安の3万8474円30銭
債券
債券相場は下落。米長期金利が上昇を続けている流れを引き継いだ。同日行われた5年債入札は利回りの上昇により需要が喚起され、順調に消化された。
岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは入札について、「表面利率が0.9%に上昇し、需要を喚起した」と指摘した。
5年債入札は最低落札価格が予想を上回り、小さければ需要の強さを表すテール(落札価格の最低と平均の差)も1銭と順調だった。
関連記事:5年利付国債の過去の入札結果(表)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債 0.680% 0.850% 1.240% 2.005% 2.340% 2.755% 前営業日比 +3.5bp +3.0bp +4.5bp +4.0bp +4.0bp +3.0bp為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=157円台前半に強含み。日銀の氷見野副総裁が午前の講演で具体的な利上げ時期などに言及せず、円売りがやや強まる場面があったが、午後にじり高となった。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは、賃上げは明るい材料が多いなどと話す一方、1月利上げを強く示唆しておらず、「金融政策の自由度を確保しておきたいことの表れではないか」と指摘。「20日の米大統領就任演説で何が出るのか、市場がどう反応するのか読みづらい」とし、市場は消化できていないと述べた。
関西みらい銀行の石田武ストラテジストは、副総裁の講演は1月会合での利上げの可能性を残しタカ派的な内容だが、米金利が大きく上昇してドルがかなり買われていたこともあり、ドル・円の反応は限定的との見方を示した。
株式
東京株式相場は4日続落。TOPIXは昨年11月29日以来の安値に沈んだ。米政府による半導体輸出の新たな制限がハイテク株の重しとなった。来週の日銀決定会合を控えて銀行株も安く、東証33業種中25業種が下落した。
バイデン米政権がエヌビディアなどが開発したAI向け先進半導体の販売について包括的な新規制を発表したことを受け、半導体関連株が大幅安。アドバンテストは9.2%安とTOPIX下落寄与度トップとなった。
みずほ証券エクイティ調査部の三浦豊シニアテクニカルアナリストは、米国が中国を対象に先端分野で規制を強化していることが、日本にも影響を与えていると指摘。トランプ政権が発足することでこうした規制が強化される可能性もあり、投資家は警戒を続けていると述べた。
この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。