北朝鮮の洪水被害1年、30棟超える高層建築物で一変した景観…対岸の中国側への対抗意識も
北朝鮮北西部で昨年7月下旬に発生した洪水被害から、1年あまりが過ぎた。中朝国境を流れる鴨緑江沿いの北朝鮮・ 新義州(シンウィジュ) では、堤防の建設が進むだけでなく高層の建築物も立ち並んでおり、被災前とは景観が一変している。(中国遼寧省丹東 出水翔太朗)
北西部・新義州 対中貿易 活発化
7月25日、遼寧省丹東から鴨緑江の対岸にある新義州を眺めると、少なくとも30棟を超える高層の建物が確認できた。ベランダから中国側の様子を眺める男性もいて、住民が暮らしている可能性がある。
北朝鮮・新義州にある洪水被害後に建てられた高層の建物のそばで、堤防の造成工事をする北朝鮮の人たち(7月25日、中国遼寧省丹東から)=大原一郎撮影朝鮮中央通信によると、昨年7月27日、鴨緑江が氾濫し、新義州などが洪水に見舞われた。北朝鮮は大量の作業員を動員し、新たな建物の建設を進めた。現在は堤防の造成工事が行われており、数百人を超える作業員の中には兵士とみられる男性のほか女性の姿もあった。
洪水発生を受け、 金正恩(キムジョンウン) 朝鮮労働党総書記は水害への備えを強化する方針を打ち出していた。同通信によると、正恩氏は今月1日、被災地を訪れ、首都・ 平壌(ピョンヤン) を流れる大同江のほとりにも劣らない遊歩道や公園が形成されているとして「大変革だ」と評価した。
北朝鮮・新義州にある洪水被害後に建てられた高層住宅のそばで、堤防の造成工事にあたる北朝鮮の人たち(7月25日、中国遼寧省丹東から)=大原一郎撮影同通信によると、北朝鮮の 朴泰成(パクテソン) 首相は2月、新義州に建設する温室農場の着工式で「鴨緑江の対岸に社会主義の真の姿を見せる」と述べた。新義州一帯はかねて開発の遅れが指摘されており、北朝鮮が復興に力を入れるのは、高層ビルが立ち並ぶ中国側への対抗意識もあるようだ。
ただ、中国の税関当局によると、今年1~6月の中朝貿易の総額は前年同期比30・4%増加した。壁紙やプラスチック製の家具などが好調といい、不足する物資を中国から調達している可能性がある。
丹東と新義州を結ぶ「中朝 友誼(ゆうぎ) 橋」は、中国から北朝鮮に向かうトラックが連なっており、両国間の貿易が活発な様子がうかがえた。
友誼橋から下流側で、丹東と北朝鮮側を結ぶ「鴨緑江大橋」の付近でも、新たな建物の建設が進んでいる。複数の外交筋は「税関施設ではないか」とみている。
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